2014年10月8日水曜日

ようこそちょっとコアな音響の世界へ

 さて、お急ぎの方も、そうでもない方も管理人ikataroの仕事でもある舞台音響とその周辺の技術や人間模様に関する話題にお付き合いください。
 意外なことにこうした話題のブログは少ないのよね・・
 まぁ舞台音響と一言で言ってもプロダクションと組んで大型コンサート(アリーナなど)で巨大システムを振り回す仕事もあれば、演歌歌手にくっついて地方の小屋を丹念に回る仕事もあり、かと思えば商店街の売り出しでの民謡ショーや歌謡ショーの仕事もある。
 神社のお祭りでの郷土芸能なんてのもありますね。
 こうした俗に言うPA系、に対して小屋付きの音響さんと呼ばれる人もいます。
 これも公共ホールでの役所の人だったり、委託業者さんだったり、また商業劇場でのプランも含めた音響さんだったりします。
 近年増えているのがMA系の仕事ですね。ビデオとの絡みの仕事です。
 伝統的に音響のイメージはレコーディングスタジオのミキサーというものですが、DTMの普及により大型スタジオは滅多に使われなくなってきて、微妙な位置づけにいるようです。
 また、演劇に録音素材を使って、あるいは生素材を使って効果音をつける仕事を正しくは音響効果家といいますが、演劇系の人が単に音響さんと言ったときはこの人たちを指すようです。

 とまぁ、職業分類を紹介しようと思っているわけではないですが、こうした仕事の話題、特に技術的な話題、気がついたアイデアやアプローチ法など折々に取り上げたいと思います。

 おっと、簡単に自己紹介を・・
 地方の小屋付きで立場は地方公務員です。
 日本舞台音響家協会常任理事、秋田県音響技術者協会副会長、FBSR会運営委員をさせていただいています。
 一級舞台機構調整技能士

ミキサーの悩ましさ

はてさて、音響技術者の花形というか、コンサート会場などででんと中央に座っているのは俗にミキサー、詳しく言うとミキシングオペレータ、あるいはミキシングエンジニアとよばれる人たちですね・・
やっている作業は各楽器の前のマイクロホン(直結の場合も)からの音声信号を「ミックス」(ミキシング)をしているわけですが・・
んで、彼らの前に置いてあるでかいつまみだらけの機材・・これもミキサー(あるいはミキサー卓、ミキシングコンソールなどとも)とよばれます。(まぁ最近つまみの少ないデジタル卓も増えてますけど・・)
まぁ音声信号をミックスするための機材と言うことなんですが・・

確かにミキサーというのは電気回路的にはサミングアンプ(加算回路)の化け物で、各入力回路の信号を加算しているのですけれど、実際に音楽的に、あるいは音場制御的に何に腐心しているのかというと、「如何に混ぜないか!」・・なんですよね・・
定位、中心周波数帯、マイクアレンジなど、如何に音が混ざらないかに細心の注意を払っている・・
なのに「ミキサー」・・

非常に皮肉というか、初心のうち、大変に混乱させられるところでもありますね・・
かといって別の候補はといっても定着したものはなかなか・・いまさら音声調整卓つっても・・定義としてはもっとも正しそうですが・・^^;;

我が音響事始め

まぁあまりに個人的なことは誰も面白くないだろうと思いつつ、考えてみると中学になる頃からオーディオ的な事に興味が多くなってたみたいですね。
我が家で一番最初に入手したテレビ、これは三菱製のステレオでもないのに左右にスピーカーが付いた家具調の白黒テレビ。
忘れもしない昭和39年、小学校の2年生の時だったはず。
当時、午後3時頃から5時ちょっと前までテレビは映らなくて、5時近くにテストパターンが映り、ほとんど5時からまたテレビがスタートした物でした。
まぁ、鉄腕アトムのモノクロ放送が合って、お茶の水博士がマイスターだったのよね・・
で、昭和42年には日立のキドカラーのポンパなるカラーテレビが発売されて我が家でも購入したわけだ・・
これに伴って古いモノクロテレビは用済みとなり、ステレオスピーカーのような構成故、譲り受けて自分の部屋に据え付けたのだ。
これはP-610という三菱の名スピーカーにちょっと似た六半のウーハーユニットにTW23というツイータが付いていて、なかなかの音がしてたのさ。
これに当時の8トラックカーステレオをバッテリーで駆動し、スピーカーだけ流用して聞き始めた・・と言うのがそもそもかなぁ・・
んで、カーステレオ用のスピーカーを壁に直接ぶら下げて鳴らしたりし始めたのが一等最初のオーディオ遊びだと思う。
ちょうどこの年(中坊の2年)の時、放送委員会なる学校の委員会に入って、この時の顧問が恩師の佐藤先生だったのだ。この方は吹奏楽の指導者で、かつオーディオを趣味にされていた。必然的にオーディオ趣味は加速されていったのだ。
で、放送委員会でもメカ好きの私は学校の式典のPA等を担当するようになったのよね。
翌年、PinkFloydの最初の来日があったのよ・・
ようやく買ってもらったモノラルラジカセのFMで聞いたエコーズにすっかりはまってしまい、受験のプレッシャーでへろへろになっていた私はどっぷりね・・
翌年には高専に入学して一気にオーディオ熱はヒートアップして・・って、そもそもオーディオをやりたくて高専に行ったような物だったし・・
寮祭でサラウンド(この頃4ch再生の第1次ブーム)で狂気を掛けたりしたのよね・・

ちょうどこのころバンド活動をするようになって、必然的にPA担当になったのだけれど、当時は機材が入手できなくて、ずいぶん苦労した覚えが・・
野外ライブでティンパニーにバスガイド用マイクを使ったのも今考えると良い思い出・・ヤマハのトーンゾイレスタイルのブルーの奴(知ってる人はみんな知ってる・・けど年寄り化してるかも・・)を3対抗で野外をこなしていた・・っていうのも今考えるとよくやった物だと思いますけどね・・

結局、音楽にはまりすぎて日本工学院専門学校の芸術学部、放送制作芸術科に進んだあたりで、まぁ今の生き方は決まってたんでしょうけど・・

父の病気などでまともな就職をしそこねて、各種の仕事をてんてんとしたあげく、下請け経由でNECの衛星事業部に。
そして田舎にホールが出来たと言うことでの帰省。
いつの間にか各団体で金太郎飴のような位置にいた・・と言う雰囲気です。

そうそう、この三菱製テレビでの再生には笑い話が・・
バッテリーでカーステレオを駆動して鳴らしていたので、感電はあり得ないと思っていたのね・・中坊の電気知識では・・
が、テレビ本体が電源につながっていたこと・・当然シャーシーグランドなど取っておるはずもない・・もう分かる人は分かると思うんだけど・・たぶん70Vくらいはかかってたのね・・
それでも当時はしびれる腕をこらえながら、おかしい?なんで12Vで感電するんだ?・・と悩んでたのだ・・

そのミキサー何チャンですか?

表題の言葉は、客席内でオペレートしているとき、休憩時間などでよく聞かれるんですが・・ご同輩なら結構経験されていると思うんですが・・

プロとして仕事するときに、必要十分であるが、最小限の機材で・・と言うことは、採算上からも作業量からも当然真っ先に考慮する問題ですね。
したがってシステムの規模を決める因子を検討してみます。

※ 一つにはどういった種類の仕事なのか(音楽?芝居?講演会?)

これはミキサーや周辺機器の規模を決定します。マイクを20本使いたいと言われればその規模はクリアしなければなりませんし、講演会だから3本で十分と言われればそれに対応して。
ミュージカルみたいに何十本とか言われると、それも可能な限りクリアしないことには仕事にならないわけですよね・・

逆に言うと、講演会に何十チャンものミキサーを持って行っても、でかいし重いし無駄なだけ・・
もちろん足りなくしたらアウトですが・・

※ もう一つにはどこでやるのか・・

これがシステム全体の規模を決めるときに大きなファクターです。
例え一本しかマイクを使わなくとも、横浜アリーナでやるんならそれだけのスピーカーシステムが必要だし、例え何十本マイクを使おうと教室のようなところなら大概小型スピーカーですよね・・

費用的にはこちらのファクターが非常に大きいわけで・・アリーナだとステージ組み、スピーカーをフライング(正しくはリギング)するための膨大な設置費用が必要です。
必要とされるスピーカーの数も膨大だし、それを駆動するアンプ類、そのアンプが消費する膨大な電力源のチャーター。

ですから、プロはそのミキサー何チャンですか?とは決して聞かない・・というのはそう言う部分をよく分かっているからなんですね・・

よく、主催者さんで、タレントのギャラが5万なのになんで音響に10万かかるんだ!などと仰る方がおられます。
あ~・・例えタレントが0円でも(つまり素人だけでも)会場が体育館ならそれに適した規模、野外ならやはりそれに適した規模の機材が必要なのですよ・・と、答えていますけどね・・
逆にタレントさんに一千万払っても、お座敷でやるならPAは一切必要ないし・・だから音響はそのイベントの性質と会場の規模で費用が決まるんですよ・・(もちろん質にも因りますが・・)

基本中の基本:レベル合わせ

さて、細かいテクニックはともかく、ミキサーのダイナミックレンジが有限である限り、レベル合わせが基本中の基本であることは間違いないですね。
アマチュアや、初心者の卓は見れば一発で分かる・・などと言われる所以でもあります。

良い卓ほどきっちりレベルがあったときには実によい音を出してくれるものです。

楽器にも依るのですが、まずはボイスでかなり大きい声の時にピークが付くか付かないか・・ボイスというのは存外レベルが高いので、これで合わせておくとまず各マイクの基準が取れます。特に出演者や楽器が判明していないアバウトなイベントでは基本です。
ゲイン調整の最初の段階ではフェーダーは上げず、ソロ検聴しながら合わせることをお勧めします。他の機器に影響も出しませんし。
今はかなり安い卓でもソロ検聴ができますよね。

この段階で通常のボイスでは気持ち振り切ってないかな・・ぐらいが使いやすいのではないでしょうかね・・本番では皆かなりレベルが上昇しますから。

各モジュールでの適正レベルと、サミングアンプの適正レベルは悩ましい問題で、各モジュールがフルテンで動いていると、各入力をミックスしたときにサミングアンプでサチる・・と言う事態を招きます。特に単純に全部をLRマスターに送ったときは顕著ですね。

ここの案配は経験を重ねていただく必要があるのですが、こういう問題が起こるよ・・という点を意識しながらオペレートする癖が大事かなと。

さて、サミングアンプまでうまく合わせ込めた・・として、最後のマスターフェーダーを基準点に持って行ってオペレートするべきか・・これは終段のアンプの問題も含めよく考えなければいけません。

終段のアンプのゲインつまみはもちろん振り切りがもっとも音がよいです。でも不用意な操作でスピーカーやアンプを飛ばす原因にもなりますね。
ここでフルテンにして卓のマスターを下げておく。10-20程度。
これはミキサーの出力を低めにしておくことで、操作上の余裕を持たせられる・・特にイベント終盤の盛り上がりで突っ込める余地があることですね。
が、概してSNは悪化しがち・・終段がフルテンで、しかも本線系のレベルは下がっているわけですから・・

逆にミキサーはほとんど基準レベルにして、終段のアンプを若干絞っておく。
これは本線系のレベルが高いのでSNは良くなります。
が、突っ込まなければいけないときにフェーダーがドン突きになってしまう・・イコールミキサー卓自体に余裕がないと卓でひずむ・・と言う状況になります。

まぁ、イベントの性質、音楽の種類などから適宜この中間点のいずれかを選択しているわけですけどね・・

そう言う意味ではアンプ前段にゲインのリモート調整機能があると調整余地はグンと豊かになります。

いずれ、アンプは振り切り直前がもっとも良い音がするというのは経験的にも言われていることで、これをどう料理するか・・腕の見せ所でもありますね。
微妙に歪み始めたあたりがもっともいい音だという意見もありますし・・

転落事故

秋田は由利本荘の市民文化会館で、郷土芸能の大会の照明係の女子高校生が天井板を踏み抜いて約10メートル下の客席に転落したと言うニュースが流れました。
なんでも携帯を天井裏に落としてそれを拾おうとしてキャットウォークから踏み出したらしい。
う~ん・・まず第一には天井裏作業の危険性をきっちりと教えていたのか?
監督する管理者がいたのか?
携帯などを持ち込まないようにと指導していたのか?

うちの小屋ではうるさいくらいに危険について教えてから上がらせているけれど、あらためて防止対策を考えないとね・・

想像以上に大事なスピーカーセッティング

はてさて、プロの方でもついつい何となくでセットしてしまうだろうスピーカーシステム。
私が師匠から学んだ中でも非常に大きいものの一つがこれです。

「スピーカーを置いた時点で9割音は決まってしまうんだよ」

そして、経験を積むに従って確かだと思うようになりました。

ミキサーやEQでいくらいじろうが、そこに置かれたスピーカーとその環境はいじりようがないのです。

そもそもそこに置くのが適切かどうか?
高さは?角度は?
煽り(その逆)は?
軸線はどこに向いているか?
指向角内に反射壁はないか?
客のいないところにサービスしていないか?
フラッターを構成しやすい面に向いていないか?
マイクに対して適切に前か?スピーカー同士の位相干渉は起きないか?
指向角に対して実音がきれいにつながる距離と角度でアレイ出来ているか?
モニターとの干渉はないか?
などなど・・

これらが理想的であれば、EQを最小に押さえたオペレートが可能になります。
しっかりとしたスピーカーセッティングの指針とノウハウがあれば、トラブルのある会場でイレギュラーであっても扱いやすいセッティングを生み出すことも出来ますが、いずれ心を配らないとね・・

SX-200などでは筐体なりにぴったりと合わせると複数スピーカー間の干渉で、境目にきつめの音がする場所が出来ます。
弦楽四重奏などでチェックするとよく分かる。
そこで、後を3センチくらい、前を4センチくらい空けたセッティングにするときれいにつながる。(これはその場所なりで再確認ね)
これによって音圧を上げてもきつくなく、かつハイクオリティな再生がやりやすくなるのよね。

まぁそんなに追い込めない現場も多々あるとは思うんだけど、いずれスピーカーのカバー域を十分に意識したプランとセッティングをお忘れ無く。

チューニングの一助のCD

チューニングと言えば、ボイスによるチューニングが一般に行われています。
そのほか、会場のフラッターの確認なんかはハンドクラップが多いんだけど・・
広い帯域における全体的なチューニングはエンジニアそれぞれに使うCDが違うような気が・・
でも、初心のうちはどうやってチューニングするといいのかなかなか分からないのよ・・先輩のマネで「へぇ~!へぇ~!」とかやっているんだけどね・・

特定の周波数帯が出過ぎてないかとかを確認するためには、その周波数帯のチェックしやすい声なり、音を使う・・と言うのが原則。
すべての周波数帯を一編に把握できる天性の才能を持っている人もいるけど、凡人にはそんなことは無理。
だから、テーマを決め、そのテーマを解決しやすいツールを自分で用意するのさ。

くだんの「へぇ~!」も「え~!」のところでウムラルトをつけたように癖をつけて発音すると400~800くらいの癖が強調されるようになるのよ・・
そんなふうに、各周波数帯ごとにチェックしやすい発声法を工夫することで、かなりスピーディにチューニングをすませることが出来ます。

同じように、CD素材もテーマを決めて選ぶとやたらに長く鳴らして他の部門に迷惑を掛けなくてすむ。
スピーカーセッティングで述べた弦楽四重奏を使うと言うのもその一環。
もちろんSIMだのSMAARTを使ってチューニングするのもいいんだけれど、これだけだとイギリス系のCDを掛けたときにつまらない音になるのよね・・不思議と・・
だから自分なりの勘所、決め所を持っていた方がいいと思う。

ちなみにハウリング対策でチューニングを進めすぎると1K~2Kが抜けすぎて、ボーカルに力がなくなったりするね。
素直なボーカルものは何枚か用意した方がいいと思う。

あと、日本語は特殊な構造をしているので、日本語の歌も忘れずに用意しましょう。母音のニュアンスが伝わらないと日本語にならないという問題が・・

PAの原則

そもそもPAの仕事って本来的には拡声。
何を?声か音楽を・・
だから音楽は音楽家の仕事。プレーヤーの領分なのよね・・
もちろん、俺は音楽家だ!と公言する音響屋さんもいるけど・・
否定はしないけど原則はっというとやっぱり音楽は音楽家が完成すべき事項なんだよね・・
なぜって?停電しても音楽は止めるべきじゃないから・・

なんていっても電気楽器の多い昨今では難しいけど・・ドラマーがいればつなげるよね?
ステージ上で音楽家は音楽を完成する。それを色も付けず聴衆に届ける・・これがPAの基本型。

だから理想的にはリスナーからは透明になるべきなんだよね・・
もっとも透明になりすぎるとPA要らないじゃないか!っとお金を払ってもらえないと大変なんだけど・・

まぁこれらをしっかり理解しての上で音楽家と協力してよりクリエイティブってのを否定するわけではないけど・・
基本が出来てないのを、俺はクリエイターだってのはちょっと・・

ポン出し素材のまとめ方

さて、業界で仕事をしているとまれにマイクを一本も使わない仕事もある。
そう、舞踊関係でのポン出し・・まぁ芝居でもあるんだけど・・
このとき、素材を渡されあるいは作り込みして一本のテープなり、MDなりあるいはCDなりにまとめて再生すると思うのだけど、よその人が作ったもので仕事をしてて気になることがある。
どういうシチュエーションで再生されるか分かっているのだったらなぜそれに合わせた処理をあらかじめやっておかないのか?ということ・・
基本の1は
  レベルを合わせること・・
  これはメーター読みではなく聴感上のと言う意味ね。
  再生したときに何となく同じくらいの音量感・・音圧ではなく・・
  になるようにまとめておくと突発自体を避けられる。
  これをコンプで間に合わせようなどとはしないこと・・
基本の2
  音色のイメージを揃えておくこと。
  意図的なものがあれば別だけど・・
基本の3
  コンプも掛けるならあらかじめ掛けて印象の確認をしておくこと

まぁ現場での作業を鳴るだけ減らしておきましょうと言うことだね・・
なんでって?
現場では又別の突発事態が必ず発生するものだから・・そっちに神経を使えるよう余力を作っておこうと言うこと。

音を出した瞬間、ギョ!っとするようなレベルは勘弁だよね・・
でもカセットなどで本番中に渡されたりする状況ではままある・・素人の演芸大会などでは・・
あと、CDやMDで渡されたときは-20位にフェーダーを置いておいた方が安全なことも・・フルテンで録音されていたりするとカセットものとは落差が大きすぎるからね・・

 

ひどい素材が来たとき

さて、出演者から来たポン出し用のテープがひどい音質だった場合どうするか・・
通常、雑音の多いところを探してEQでカットしてなどとすることが多いかと思う。
が、それでもどうにも音が悪い場合、思い切って上も下もカットしてしまおう。
人間がその音を聞いて違和感を感じないための400K理論なるものがある。
元々は電話機の音質を研究する過程で出てきたものだが、最低周波数を最高周波数を掛け合わせたものが400Kであれば伝達が成立するというもの。
下が20なら上は20Kこれは通常のCDの音質。
下を200にすると上が2K・・これが電話の音質と言われる。

これを応用することで、音がいいといえないにしても違和感を感じない音質に仕上げることができる。
具体的にはハイパスとローパスがあればどちらも深く掛けてしまう・・
通常のEQならハイローともに下げる。
これでなぜか普通っぽい音に・・試してみてください。
決してハイファイではないけれどね・・

ポン出しついでにもう一つお題

ポン出し系の話題が続いているんで、もう一つ。
ポン出し系の仕事は音を出すタイミングが問題になることが多くて、無事音を出せた段階でどうも気が抜けるのか、そのままボーッとしていたり、次の素材のチェックに余念が無くなる人が多い・・
で、DTM系の人が作った素材に多いのだが、ダビングを重ねられた演歌でもよくあることで、妙に歌が小さい、細い、ギターソロなど、ソロ楽器が妙に小さい(押し出し感がない)などと言うことがある。
これを「録音がひどいよねぇ・・」などとそのままにしている人が結構多い。

でもそのことはそこに来ているお客さんには何にも関係ないのよね・・結局楽しめなかったらまぁミキサーとしての評価はともかく、イベント自体が楽しくない・・と言う状態になるじゃない?
だから「普通」に聞こえるよう調整することが大事だと思う。
特に主要楽器(歌も含め)の張り出し感などは中域のEQ操作とフェーダーのちょっとの操作で全然印象は変わるはず。
ここら辺を手抜きせず、きっちりと仕事をするべきだと思う。
歌の印象、ソロ楽器の印象、ビート系の曲なら低域の調整など、いくらでもすることはあるし、それによってイベント全体の印象が大幅に変わると思う。
「録音が悪いんだよね・・声量がないんだよね・・」などとよそに原因を押しつけることは極力止めよう。

どんなにひどい素材でもなんとか普通っぽくする技は前スレでお伝えしたとおり・・
たしかに極端に歪んでいたり途中でぶっつり切れていたりするものはぼやきたくもなるけどね・・^^;;

おっと、もう一つ

こんなブログ・・見ている人がいるのかどうか・・コメントもつけにくいかも知れないしね・・^^;;
ということで、ちょっと宿題というわけでもないけど、こちらから疑問を投げかけてみたい・・暇なときにでも考えてね・・

通常システムの設計をするときにもカタログを見るときも音圧と言うことを気にすると思う・・
でも音の大きさ・・豊かさ・・って音圧の問題なのだろうか?
管理者の子供時分、ようやく買ってもらった家具調ステレオで「おお~!すげ~!」と感動したような豊かな音が今得られているか・・というとちょっと疑問・・
4560などの時代に感じた音量感が今のシステムで出ているんだろうか・・ちょっと疑問・・
間違いなく音圧は出ているんですがね・・

さて、生音と言うことを良く評論家諸氏は仰るが、楽器から何メートルの位置とか、壁から何メートルの位置に置いた場合とか、生音の基準はあるのだろうか?
演奏者として確かに自分の楽器の音はある程度以上把握しているんだけど、それはリスナーの聞いている音だろうか?

そもそもマルチ録音に生音っていう概念は持ち込めるのだろうか?あのマイクセッティングの位置で聞いたことのある人は何人いるのだろうか?そもそもキックのマイク位置で人間は音を聞けるのだろうか?
それを言うならワンポイントでも生音って言っていいのだろうか?
収音位置での音・・って主張するならちょっと分かる気も・・

生楽器は総じて点音源的な振る舞いをするのだが、演奏者によって到達距離が違うと言う事実はどう解釈するのだろうか?で、仮想的にでも点音源は成立するのだろうか?

生音が一番優れた音だとして・・今の1000倍(音圧換算30dbアップ)の音量がある生楽器があればアリーナでオケや弦のソロは成立するのだろうか?

ラインアレイは確かに優れたシステムだけれど、絵的に違和感を感じないか?つまり楽器との距離など)
それといつ聞いてもちょっとフェイジングっぽい音がする・・まぁきつくなくていいのだけれど、皆さん気になりません?

音の大きさ=音圧×速度(微妙に違うか?)

はてさて、昨日ちょっと書き込んだことの一つをもう少しつっこんで考えましょうか・・実務に関係ねぇ・・などと言わずに・・実はちょっと関係したりするのよ・・

さて、音響学や物理学の本を読むと、音の大きさとは空気の圧力変化量と速度変化量の掛け合わせたもの・・と出ています。
ん?音圧(空気の圧力変化量)じゃねぇの?と思った方!鋭い!
音の大きさは、音圧だけではなく、速度成分でも決まるのよ・・どう違うのかが難しいんだけど・・

このことはダイナミックマイクやコンデンサーマイクと、リボンマイクの特性の違いにも端的に表れるのですが、実はスピーカーの到達距離にも関係します。

もっとも、厳密に分離測定することが難しいし多分に私の個人的感想も含まれる話なので、話3割くらいに間引いて聞いて欲しいのですが・・

非常に皆さんになじみの多いスピーカーでまた普及もしているSX200と言うスピーカー。コンパクトなボディによく設計されたエンクロージャも相まってコンパクトな会場での主力スピーカーとして、またモニタースピーカーとしても大活躍しています。
もちろん大会場でのハウスとしても結構使えないわけじゃない・・アレイ組みしてね・・
けれどサイドフィルなんかに使用したとき、微妙に10mくらいのあたりでエネルギー感が無くなる・・聞こえてはいるんだけど・・と言う経験はありますよね?
どうして?

1mあたり音圧は100dbほどと十分な感度はあるし、パワーも瞬間なら1200w位は突っ込める・・よってピークで128dbは稼げるはず・・これはハウス用の大型スピーカーに遜色のない数値のはず・・指向角も65×65で広すぎるわけでもない・・

まさにこの10mくらいのところが音圧型の音場構成から速度型音場構成に変わったポイントなのだと私は感じています。(SXにおいてと言う条件付きね)
一般にPA系の仕事をする人が好む音ってこの音圧主導型の音場であって、この音場がより遠くまで使えるスピーカーがHOUSE用、あるいは野外用に用いられる条件になっているんですね。
より遠い距離でも音圧型として到達する。
やはり大会場用の大型スピーカーは意味があるのですよ。

これは実はPAでのコントロール下にある音場ともいえます。
速度型になると途端にEQの効きも甘くなるし、フェーダーに対する反応も鈍くなるのよ・・まぁよく言うがつんと来る!という範囲。聞こえ感がしっかりある。
この範囲を超えるとすべてが甘くなります。まぁここまで離れるとライブ感が薄くなるので聴衆のおしゃべりとかも増え出すんですがね・・ロックフェスなんかでは寝転がったりして楽できると言えばいえるか・・な?

で、仕事として考えた場合には、如何にこの音圧型音場を金をもらっているすべての場所にサービスするか・・がテーマになるわけです。

この音圧と速度の関係・・まだまだたくさんの課題というか、検討すべきテーマが寝ています。時々話題に振ってみましょう。

おっと!ここで使った音圧型音場、速度型音場は私の造語です。現場で問題点を考えるときに整理しやすいので便宜的に使っているので、公の場で使ったりしないよう・・恥をかきますよ・・^^;;
ましてや音響学者さんなどに向かって使わないように・・

見通しのきかない現場の時

いきなりべたな話です。

田舎の(だけでもないかも知れないっすけど)イベントではしばしば誰が何をやるのかも分からないまま本番突入!なんてこともあります。
主催者に詰め寄ってもそもそも主催者も誰が何をやるのかが分かってなかったり・・
どうプランニングすればいいのよ・・?ってなもんですが・・
少なくとも田舎の婦人会のイベントにバリバリのロックバンドは出ない・・多分・・
せいぜいが郷土芸能とか民謡とか演歌とか・・
さて、こういう見通しの悪いイベントの時にどうプランニングすべきか・・

私はと言うと、ともかく57を下手から順番にナンバリングして必要十分な本数を確保し、ステージでのお手伝いの人間に「歌かどうかだけ出演者に聞いて、歌だったらウレタンのウィンドスクリーンを付けて、楽器だったら外してセットしてくれ!その結果と何に使うかだけを教えろ!」といって本番に突入します。

この時に大事なのは、卓上の表記も楽器名ではなく下手からの番号だけにすること。取りあえずボイスで大まかなゲインを決めておくこと・・位ですね・・

あとはステージからの連絡と自分なりの観察で何番のマイクがどの楽器、と判断してゲインとEQを予想から割り出したセットに瞬間芸で合わせ込むことです。

57ですから経験豊かな皆さんは概ねその傾向と対策は出来てますよね?
だからここではそれを最大限に使います。

なまじこの楽器はこのマイク・・等とはこの場合プランしてはいけません。予定と違った場合青くなります。

幸いなことに57はかなりの柔軟性をもっていますので、これでいろんなシチュエーションを乗り切ろう!と言うのが今回の趣旨です。

この場合、デジタル卓のリコール機能のような物は一切期待できません・・だってリハもなければ、誰がどの楽器でどこに出てくるのかも分からない状況で仕事しなくてはいけないのですから・・
ここに人間のすごさが出てくると思いませんか?
あ!三味だ!・・あ!尺八だ!・・あ!声掛けだ!っといろいろなシチュエーションで57はタフに対応してくれます。
また最善ではないにしろよりベターに・・と言うアプローチのしやすいマイクです。ここらを最大限に活用しているわけです。
あと、出だしだけは-10位にフェーダーをセットしておくのもある種の裏技です。
立ち位置と出演者の基本声量なり楽音の音量が判明しない状況では、いきなりでかい音が出る可能性もあります。
これはリスナーを驚かせますし、音響のミスと見なされやすいですが、出だしは小さめでも取りあえず聞こえる状況から適正レベルに持ち上がる分にはほとんど誰もクレームを付けません・・むしろ生音が小さかったのか?程度に感じてくれる・・と言う利点も・・^^;;
特に生楽器だと生音自体が出てますし・・
ただし、スムーズに断固たるオペレートが要求されますけどね・・

っと、こんなとんでもない現場は出来れば少なくしたい物ですけどねぇ・・

バウンダリーマイクのこと

さて、演劇やら民俗芸能系ではPCC-160に代表されるバウンダリーマイクはプラン上欠かせない。
ガンマイクほど位相にうるさくなく、かつ結構広範囲に拡声のチャンスが広がるためだ。

が、幼稚園児の発表会・・などと言うときは踏まれやしないかと気が気でない・・というより、まず十中八九踏まれる・・
それに、あの華奢なミニキャノンでファンタムが掛かっているかと思うとこれまた不安の種ではある。

そこで管理人は考えた・・いくらガキんちょでもこれなら踏まないだろうというセッティングをすればいい・・と・・

つまり、舞台の外(端より前)に譜面台をセットし、それにバウンダリーを置けばいいのだ・・
バウンダリーマイクはその構造上、自己反射面を持っているので、必ずしも床にベタ置きする必要はない・・つまり、浮かしてセットしても良いのよね・・

で、譜面代を舞台から外してセットすると、さすがにいくら無茶な人でもこれは踏もうとはしない・・

ついでに言うと、煽りをつけられるので、舞台の端ぎりぎりまで出演者が寄らなければいけないイベントでもやっつけられる!

見た目もそんなに悪くないのでお試しあれ。

バウンダリーマイクのお題 その2

バウンダリーマイクの話題を続けます。

よく演劇などの舞台で5本くらいのPCCを端に一斉に並べている光景を見ます。

これは確かに舞台の上下に散ったときの収音には結構便利ですが、収音、拡声系が複雑な系を作るので、位相がばらついたりして結構やっかいなハウリングの元になったりします。
まぁ、拾うことは拾うんだけどハウリやすい・・って言う状況・・結局EQを駆使して何とかこなしていることが多いと思う・・でも、これまた問題は複雑化するのよね・・

で、思い切って1間ぐらいの間隔で2本だけにする。
んで、下手はL振り切り、上手はR振り切りにPANをセットする。

すると、単純なスピーカーvsマイクの系が2つ独立している状況ができあがる。
なんと言ってもミキサーの中では全然混ざってないモンね!

結果、非常に位相問題の少ない良好な特性の再生系ができあがるので、存外NoEQでもいけるのよね・・結構ゲインも稼げて使いやすかったりする。
また、EQの必要なポイントも1-2カ所と減らすことが出来て生音との混ざりも良好なので概して評判がよい。

どのみちステージ上で元音も混ざって入ってくるので、ミキサーの中であえて混ぜる必要など無い。
で、空気中で混ざった音は消えないけれど、ミキサーの中で混ざると電気の話なので完全に消える場合がある。これは取り戻せない・・
だから、ミキサーの中ではなるだけ混ぜるんじゃない!と師匠から教わったその応用。

お試しあれ!

バウンダリーマイクのお題 その3

さて、バウンダリーマイクの話が続いたので、もっと続けよう・・^^;;

このバウンダリーマイク、市販されているものは結構なお値段がする。
用途が特殊と言うこともあって、所有していないPAカンパニーもあるかと思う。

また、コンデンサーマイクでもあり、ファンタムが必要だし、コネクターは華奢だし・・ということで、取り扱いも結構大変。わやくちゃな現場では使えそうもない・・(踏まれたりケーブルを引っかけられたり・・養生をしていてもね・・)

が、バウンダリーを使いたいこともしばしばあることはある・・

そんなとき、57で良いから、これを床に直接置いてしまおう!
床が反射面。カプセルは単一指向性。
まぁ57より大きいカプセルでは考えてしまうけれどね・・小径マイクなら何とかなる。

そんな!!って思うでしょ?
いけるんだな・・これが・・太鼓の収音とか民族音楽系の動きの激しい演奏形態などで結構いけたりする。
まぁ踏まれても持ちこたえそうだしね・・ぽろっとスクリーンが取れたりはするけど・・安くなったし・・

結局バウンダリーマイクの基本定義を考えると、単一指向性のカプセルを、PZM領域に横置きにして単一指向性マイクの半分に切り取った特性のマイクを作り、反射板をマイクに持たせたもの・・と言えるわけなので、それを物理的に作り上げた・・だけなんだけど・・

まぁ、PCCみたいにワイドレンジというわけじゃないし、ダイナミック特有の打楽器系が大きくなって、弦系が拾いにくい・・なんてのは多少あるけど・・それは後使いよう。

生楽器とPAの悩ましき関係

本来的に生楽器にはPAは要らなかった・・という歴史的問題が大きく横たわっているということを前提に、それでも最近ではアリーナでクラシックなどと言うとんでもないイベントも経済的要求から行われるようになった昨今・・やはり生楽器とPAの複雑な関係を考察しておくことはプランナーにとっていつでも大事なことだと思う。

さて、ここで個人的な失敗談を挟みつつ、皆さんにも考えていただきたいのだけれど・・

昔、北欧からお出でになった女性ジャズピアニストのオペを担当した。
小さな150人程度の会場。
ピアノソロなので大げさなことは要らないがクオリティはきちんと出さなければいけない仕事。
ハウスにSX-200を2対抗。モニターは無用とのことで無し。

プロモーター兼調律師の方に軽く弾いてもらって演奏者に出音の確認をしていただいたところ、大変に気に入っていただいた。
ほぼ満席の状態でスタート・・

が、くだんのピアニスト・・妙に力んでいる・・必死に鍵盤を叩き、いかにも弾きにくそう・・リハでは決してそんなことはなかったのだけれど・・

休憩時間に様子を聞きに行くと「私のピアノが鳴らない!」と悲痛なご意見・・
いろいろ考えてハタと気がついた!
そっか・・ハウスの回り込みが生楽器と逆相なんだ!

リハでは客席反射が大きく逆相成分が消えていたのに本番で満席だったので客席反射は減少し、相対的にスピーカーからの直接の回り込みがピアノの生音自体を逆相で消してしまったのだ・・
まぁハウスにはきっちり出ているのでまるっきり消えているわけではないが、演奏者の聞いている自分の楽器の音が貧弱になった・・と言う状態だな・・

すかさず位相を反転して後半は問題がなかったのだけれど・・
出音としてはほとんど変わりがない・・と言うところが怖いところだね・・

まぁ、この事件をきっかけに、生音と反射音との相乗関係、ディレイを駆使した整合集音、そして今も使っている仮想反射板システムへと考察するきっかけになったのだけれど・・

生楽器と空間とのやっぱり悩ましき関係

さて、今回は電気には全く関係のない話。
ギターでもヴァイオリンでもドラムでも、演奏会場によって全く音が変わる・・と言う経験をされていると思う。

さて、ここでこの音が変わったという現象・・誰の立場からなのか今少し考えていただきたい。

一番直ぐに気がつくのはリスナーとしてのもの。
あそこのホールは響きが良いとかよく話題になる。評論家諸氏もよくこの立場でものを仰る。
リバーブマシンの設計などもしばしこの立場で行われ、俗に言うアーリーリフレクションなどももちろんこの立場からのものだろう・・

さて、じゃあほかの立場って言うと、演奏者。
演奏者の場合、強大な自分の楽器の発する音環境の中での他の楽器とのバランス・・を考えざるを得ない。よって自分の楽器音と他の楽器とのバランスを考えるときに、舞台上でのアーリーリフレクションが極めて重要。
フロントサイドの張り出しによる反射音なども演奏を助ける情報となる。
このアーリーリフレクションによって、自分の楽器の音色が完成する。その会場でのセルフイメージでもあるわけね・・これで「あたしの音色・・」と言うものが完成し、演奏に専念できる。また、この音色によって演奏イメージがふくらんだりショボくなったりする。
だから極めて大事。砂漠なんかでヴァイオリンを弾いたらえらいことになるよね・・そんなことする奴はいないと思うんだけど・・
で・・残響はたぶんフレーズのエンドなどで意識されるけれど、普段はあまり考えていない・・
もちろん、スタッカートで弾いたり、あるいは楽音自体がパルス性の強い楽器の場合は1音1音に残響がつきまとうのだけれどね・・原則は一生懸命にフレーズをこなしているときは取り敢えず直接の楽器音、フレーズのエンド部分で残響が強く意識されることが原則だろう・・まして、早いパッセージを弾いているときなんかはね・・
よって、少々の残響の変化より、アーリーリフレクションがいかに自分の楽器を気持ちよく響かせてくれるか・・の方により関心が強かろうと思う。
通常のホールからサントリーホールなどの舞台天井の高いホールに移ると演奏にとまどいが生じる・・と言うあたりもまさにこの舞台上のアーリーリフレクションの変化による。

が、この立場からのアプローチを取れるホール設計者、機材設計者が非常に少ない・・生楽器の音表現にとって極めて重要であるにも拘わらず・・だ。

さらにもう一つの立場を提唱したい。

そう・・楽器そのものからみた音環境・・

生楽器である限り、形状と重量からくる固有の共鳴モードをもつ。
それに加え、演奏自体で共鳴周波数はどんどん変化する。
ここで問題にするのは自分の出した音が自分に返ってきて自分自身をさらに共鳴させる・・というループ的モードのこと。
つまり、会場によって楽器から出る音自体が変化するんですよ・・ということね。
これは無響室でのヴァイオリンの音を聞いたことのある人なら素直に納得されるのではないか?
もちろん、このときの楽器音の変化にもっとも影響が大きいと思われるのが、やはり舞台上でのアーリーリフレクションであることは言うまでもないですよね・・
もちろん、PAがある場合はその返しや回り込み(これは別スレッドで解説済み)も影響する。
また、ホールによってスタジオによっても音は変化する。
この影響は演奏者自身が想像する以上のものがありそうだ。

従って、音の良いホールって、残響だけを問題にしても、また、客席でのアーリーリフレクションだけを問題にしても駄目なのよね・・
ここらへん、まだまだ考察が足りていないように感じる。

つまり、楽器と演奏者のための一次反射設計思想を持たないと、良い演奏、良い音・・は出来ないのよ・・これを客席側だけからの設計アプローチを取っていてはいつまでたっても安楽器を良いホールに持ち込んだ・・みたいな現象が発生しかねない・・

良い楽器環境、良い演奏環境、そして良い聴取環境がそろって初めて演奏者にとってもリスナーにとっても幸せな音楽環境になるのではないだろうか・・

かぶりとEQとDelay

オペレートしていてなかなかに大変なのがこのかぶりの問題。
各エンジニアはそれぞれに工夫を凝らしてすっきりとした音を作り上げようと努力している。

そこで、基本的におさらい。
かぶりとは、楽器音が主たる収音マイク以外のマイクにも入ってしまうことで、ミキサー上でミックスしたときに音に濁りを生じさせてしまう現象。

う~ん・・ワンポイントマイクでもかぶりと言うのだろうか・・^^;;
昔ビッグバンドなどではペット2本にマイク一本とか使ってたよなぁ・・あれはかぶりと言うのだろうか?・・^^;;

など、非常に微妙な世界です。
レコーディングでは極めて嫌いますね。わざわざブースを使うのはそのためです。
マルチマイクレコーディングでは、各楽器を独立した材料として扱いたいので、歌にベースが入ってたり・・と言うことを嫌うんですね・・また、それを可能にする時間と空間を用意できているわけです。

が、ライブ空間ではそう言うわけにはいかないっすよね・・どうしても同一空間同一時間に多種の楽器が混在する。

で、かぶりを減少させたい・・と言う場合、通常定位とEQを操作して対処する。よね?

まず単純化して生ギターで考えようかな・・

生ギターのソロ・・これはハウらないかぎり、どういうEQでもまぁお好みで・・
フルサウンド(まぁウィンダムヒルみたいな・・低域から高域までね)も十分可能。
弾き語り・・こうなると歌とぶつかる・・で、ギター側の中低域(男性ボーカルのとき) あるいは中域(女性ボーカルの場合)を若干カットして調整する。
フルバンドの中・・これは低域をもカット・・これでギターの「シャラン・・」という部分をむしろ強調してバンドの中でギターが浮き上がり易くすることが必要・・どうせ低域を出しても他の楽器にマスクされるという点を考慮。

こんな風に通常は音づくりをしていく。で、各楽器の定位もぶつからないようにしてかぶり感を減らして行くのだけれど。ギターマイクのEQを他の楽器との干渉を考慮し、かぶりを減らしつつ、ミックス時に有効な帯域を残していく・・ということで、かぶり対策兼音づくりにもなっている。
低域をカットすると他の低音楽器のかぶりは減るし、バンドの中でどうせ聞こえない部分はエネルギーの無駄とも言えるよね・・
ここはハイファイなどを意識しすぎると盛大に濁る原因になる。
ギターソロとは違うと言うことね・・ソロのときの音イメージに引きずられると本番で音をまとめきれなくて泣くことになる。

これに、師匠から教わったかぶり撃退法を紹介。

プリフェーダーリッスン(オーディションなどとも)がポストEQであることが前提ですが、このプリフェーダーリッスンで各モジュールごとにどの楽器がかぶってきているかをチェック。で、その当該楽器の帯域を被害に遭っているモジュールで調整する。可能であればマイクアレンジや、楽器配置などを再調整する。これならハウスから音を出せない状態でも調整可能・・時間の節約にもなるよね・・
で、このときにかぶりの音に強い癖がないか・・これによってそのマイクの指向外の周波数特性もチェックできる。
まぁ、ヘッドフォンの中でかぶり対策をしてしまおうという作戦だ。

さて、ここまではかぶりを敵対視するアプローチ。

かぶりを味方にしてしまうアプローチもある。
かぶりが相対的に気にならなくなれば、あるいは問題にならなければ無理に撃退する必要はない・・これの究極がワンポイント集音・・と発想する。

まずドラムセットで考える。
この場合、よくやるセットアップ法の一つに、オーバーヘッドを生かしたまま、スネア、タムなどのマイクを一つずつ加えていき、当該楽器の音量の増減をチェックする。
このことでオーバーヘッドに対し各楽器マイクが正相で入るか、逆相になっているかが判断できる。
キックを上げたらなぜか一旦音量が落ちてきた・・なんてのは典型的な逆相状態。まぁもっとフェーダーを上げると結局キックは上がってくるんだが、逆相状態は解消されない。典型的な音が濁る(あるいはへたる)パターンの一つ。
こういう場合、通常は卓の位相反転スイッチを使って対処するのだが・・最近の廉価な卓ではフェイズスイッチが装備されていないことが多いのよね・・この場合は位相反転アダプタを挿入しなくてはならない・・

さて、一番楽器群から遠いマイクがオーバーヘッド。シンバルを拾いたいのにタムのマイクの方がシンバルに近かったり・・^^;;
これも又悩ましい話なんだけどね・・

で、このオーバーヘッドを基準とする。
で、スネア、タムなどの各マイクをオーバーヘッドマイクとの距離分ディレイを掛ける。
するとどうなるか?
オーバーヘッドに飛び込んできたほかの楽器の音が、各収音マイクの音と全く同時間、同位相になる。
これによって、オーバーヘッドの位置で各信号が整合したことになり、非常にすっきりとした音を作ることが出来る。

これをさらにジャズトリオなどで応用する。
一番かぶりに悩まされるのがピアノの収音。特にドラムのかぶり、端的に言うとスネアのかぶりがもっともひどい・・そこで、今度はピアノマイクの位置を基準にドラムキット全体の信号をディレイで合わせ込む。このとき、スネアを基準値にしてそれ以外の関係を平行移動することがこつ。

これによってEQ量を減少させ、非常にすっきりとしたまとまりを作れる。もちろんPA臭さも少ないので特にアコースティック系のミュージシャンには好評。

ポイントは、ディレイで合わせ込んでいるので、メインの収音マイクの音に対し、かぶりはリバーブが軽く掛かった程度の印象になること。
たとえばオーバーヘッドから見た各マイクはオーバーヘッドの位置のままで各楽器にクローズアップレンズをつけた印象。

まぁ、ディレイを大量に使うのでデジ卓が便利か?

レコーディングでは気軽に試せるし、実際プロのレコーディング現場では各楽器の時間軸をきっちり合わせ込む・・はず・・少なくとも私の知っているエンジニアはそこまでやっていた・・
まぁ、いまはDTMソフトの中で簡単に調整できるのでお試しあれ・・
変なプラグインてんこ盛りでごちゃごちゃさせるよりよっぽど効果があるっすよ・・変な・・つったら語弊があるか・・^^;;

テンプレートデザイン変更しました。

え~ブログデザインのテンプレートを変更しました。以前のはFC2の公式テンプレートから選んだのですが・・まぁ心象風景としてはともかくちょっと文字が見にくいのと、2カラムスタイルなので、縦にやたらに長くなって使い勝手がちょっち・・
で、3カラムの取り敢えず黒ベースのものの中から嫌みでないものという選択です。白ベースの方が字だけは見やすいのですが、あまりに素っ気ないというかビジネスというか・・
かといってまさかこの年でキャラクターベースははずいし・・^^;;

いかがなモンですかね?

ありがとうです。

さて、ドラムマイクのもっとも大事なマイクの一つオーバーヘッド。
これをシンバルの収音だけと考えている人も時々いるけれど、実はこれだけでドラムは結構とれてしまうものだ・・
昔、師匠の一人が穐吉敏子さんのバンドのPAをやったとき、バスドラのマイクを立てただけで、「あなたは私のバンドのドラマーが下手だと仰るのですか?」と叱られたそうな・・
とまれ、オーバーヘッドだけで綺麗にとれるものだし、またこれだけでもバランスが良くとれるくらいのドラマーはまずうまい。

とはいってもロックバンドやら歌謡曲、J-popなどまさかオーバーヘッドだけでは今時誰も相手にしやしない・・当然のごとくマルチマイク。
Jazzコンボでも最低4本くらいのマイクは立てるだろう・・まぁO.H(L,R)とSn,KDとね・・
これにH.HとかT.T,B.Tとどんどんマイクは増えていく。色物のパーカッションが入ったりしたらもう大変・・

で、O.H(オーバーヘッド)だ。
露骨にシンバルを拾うぞ的にシンバルに向ける人もいる。
私なら、シンバルを拾いつつスネア方向にカプセルは向けるが・・
で、まぁ一般的なO.Hのセットになる。
この音、ワンポイントステレオ集音で言うとA-B収音に相当する。
A-Bの間が離れているので、臨場感にあふれるが定位は甘くなる。
で、決定的なことは位相差を伴った収音になると言うこと。
当然フェイジングの掛かったショワ~~ンというシンバルになる。
これが、ロック系などではいかにもシンバル!という感じで好まれる。

が、ターキッシュジルジャンのレトロものなどを好むバップ系のジャズドラマーの場合は、「ちょっと待ってくれ・・この音は俺の音じゃない!」が始まる確率が高い・・
つまり、位相差によって低域成分がキャンセレーションを起し、生々しい音ではなくなるのね・・
ジャズドラマーは結構ナベの蓋みたいな原始的な音を好むのでおしゃれで小ぎれいな音は駄目と言われる。
ではどうするか・・EQを操作してなどというのは最後にしよう。

そう、X-Y収音の技法を使うと良い。
つまり、マイク2本を近接かつクロスしてセンターにセットし、カプセル間の位相差がでないようにするのだ・・
こうするとシンバルの低域まで生々しくとれる。(ポップス系ではこれが又嫌われたりするんだけど・・)

このセッティングの良いところは、オーバーヘッドだけで結構キックまでとれてしまうこと。スネアはもちろんね・・
EQを減らせること。

まぁあとは自分で試して納得して欲しいんだけど・・
このX-Yの時のちょっとした裏技。
PANをL-Rに振り切ってみよう・・

そう、バウンダリーでも話したあの技法。
結構違和感なく、かつ自然にゲインを稼げる。
これもミキサーの中で電気的に混ぜてない恩恵。
バランスの補正はマイクセッティングの調整を第一にね・・

歌と台詞

 さて、本日ミュージカルを鑑賞してきた。紺屋の白袴ではないけれど、イベント日は重なることが多く、なかなか他の小屋で観客となることが出来ないことが多い。

 で、今日の舞台。

 全体に帯域が中域に寄っている。
 アレンジが歌とぶつかる事が多い。
 3声の対旋律的に、しかも歌詞も違うという面白い着眼点があるにも関わらず、定位が密集している・・
 場面転換時などのリバーブの思い切りが悪い・・

 あたりが気になった。

 特にアレンジ上邦楽器が多いので、もろに歌とぶつかる。

 これは邦楽器と日本語の制約からどうしようもない部分であるが、だからこそバランスには細心の注意を払いたいね。

 まぁ、アレンジにまで口を出せることは少ないかも知れないので、こういうときは演奏側の中域をカットして、歌や台詞が浮き立つようにしないと、観客は言葉を聞き取れなくなってしまう。

 ストーリー性のあるものは、特別な演出意図がない限り台詞だけはどこでも聞こえるようにしなければいけないと思うが・・

 また、うるさくなく、且つ迫力が感じられるように、帯域調整はしておきたい。
 低音域は特に注意。下手すると飛ばすしね。

 それと、3人で全く違う歌詞で、旋律も違い、しかし一つの曲という面白いアプローチがあった。

 男性3名なので難しいとは思うのだが、各自の声の特性からブースト帯域をちょっとずらし、かつ定位を左右振り切りとセンターとに分けると、観客が各々の台詞と歌を楽しめる率がぐんと上がったと思う。

 われわれ舞台音響のプロとしては、オーディオ的バランスがいいとか悪いとかではなく、舞台そのものから注意がそれないようなオペレートを心がけるべきでないかな・・
 観客が音響を意識したりする・・と言うこと自体、失敗なんだよね・・

 っと、ポン出しタイミング自体はほとんど完璧と言って良かった。ここら辺は素晴らしくトレーニングされているし文句はありません。お疲れ様。^^

日本語と邦楽器

さて、前回日本語は難しい旨ちょっと書き込んだのだが、なぜ難しいのか、考えてみようかな・・
かの有名な角田忠信氏の「日本人の脳」によると、日本人の脳の使い方は非常に特殊で、楽音が右、言語が左で処理するのは共通としても、動物の鳴き声、邦楽器などがことごとく左に入ってくるという話です。
これによって右脳と左脳で別途に処理されるべき邦楽器等がかなり言語脳に浸食してきて、歌や台詞の言語理解を妨げてしまうのです。
ですから、相対的に歌や台詞を大きめにしないと聞き取れない・・と言う現象が発生します。
一般に英語圏のCDに比べ、日本のCDの方が歌が大きめに録音されているのもそのためです。
また、日本語は母音全部に意味があり、かつ音素にすべて母音が含まれます。
よってこの母音成分の聞き取りが明瞭でないと日本語にならない・・と言う問題があって、これがベルカント唱法がどうしても根付かない原因です。
ベルカント唱法は母音部分を完全に楽器化することで非常に声量を稼いでいるわけですが、これは母音を壊しています。
ヨーロッパ言語は子音だけが聞き取れると言語として成立しますので、これでも十分に楽しめるのですが、日本語では大変なことになってしまうのです。

これはまた日本人がスピーカーにプラスアルファとしてツィーターを足す・・という行動の裏付けのなっているのではないでしょうか?
日本語の母音は大変に少ないのですが、それ故聞こえないと全く日本語として成立しない・・と言うことですね。
拡声の際にも十分に意識しないといけない部分です。

よって、西洋音楽に邦楽器が入ってきた場合、その会場が日本国内なのか、海外で日本語ネィティブ以外の方を相手にするのかでたぶんアプローチを変えないといけないんだと思います。

日本語の歌詞+邦楽器+日本人の聴衆=もっとも歌を上げる。
英語の歌詞+邦楽器+日本人の聴衆=これも歌を大きめ(左右の脳の問題)
日本語の歌詞+邦楽器+ヨーロッパ言語の聴衆=ちょっと歌大きめ(母音識別)
英語の歌詞+邦楽器+ヨーロッパ言語の聴衆=歌はほとんど他の楽器と同レベル

まぁあとどう具体的に対処するかは各人のセンスでどうぞ・・と言う部分なんですがね・・

あ~・・ヨーロッパ言語のと言いましたが、正確には日本語以外の言語・・とするべきだそうです。
朝鮮語、モンゴル語など、言語学的には同系統と言いますが、脳機能的には全く違うみたいですねぇ・・

音程って

え~・・ドラムのと言っても直接の拡声技術ではなく、ドラム自体のチューニングをちょっと脱線ながらしてみたい。

本質的にはPAは拡声技術であり、マイクで拾う前の音楽が完成していないといけない・・とは以前のちょっと書いた。
と言うことは、各楽器音に関しても楽器自体から良い音で入ってこないと話にならない・・
だから良い楽器、良い演奏がまずありき・・と基本的には思う。

で、ドラム・・なかなかにドラムというのは日常的にキットで練習できる恵まれた立場の人は少なくて・・演奏技術は上達してもチューニング技術まではなかなか・・と言う人が多い。(プロも含め・・)
そこで音響としてチューニングをしてやることがままある。

もっとも絶対にチューニングを触らせないと言うプレーヤーも多いので喧嘩してまでやれなどとは言わない。
が、プレーヤー自体が悩んでいるようなら手伝ってやることが多い。(私の場合だ・・)

時間が取れるなら表も裏も外してやり直すのが一番。
外したらフープ(リム)を平面において歪みを確認しておこう。
敷居滑り用の鑞ワックスを持っているとなおいい。
汚れやゴミをまず落とす。特にヘッドとシェルの合わせ部分はゴミも詰まりやすい。
で、シェルの縁にワックスを塗るんだよね・・

で、ヘッドを装着し、たるみが無くなる程度に張り込む。
この時点でヘッドのセンターに手のひらの付け根部分を当てて体重を利用して何度か押し込んで、ヘッドとシェルをなじませる。(表も裏もやろう!)

次に表のヘッドを望む音程(打楽器なので明示的ではないが・・)まで張っていく。
当然対角線を意識して均等にね・・
リムに歪みがある場合、高い部分から先に張るようにすると直りやすい。

で、チューニングの際は目的の面の裏側にバスタオルなどを当てて鳴らないようにしておこう。
また、小さなタオル(無ければ手のひらでも)を目的面のセンターに当てて余分な鳴きを止めてしまおう。
これによってチューニングスタッドを正確に合わせ込める・・結果均一な張りが実現できるので、暴れ感の少ない深い音色の元ができあがる。
これが合ってないと整合性のない倍音が増えて軽くてうるさい音になる。

で、表と裏の張り調整の基本。
裏を張るとバ~~ンと長い余韻のクラシカルな音になる。ジャスなどではこれが基本。
ロックポップス系ではこの余韻を嫌うのでたるみが出るぎりぎりまでゆるめる方が音が抜けやすい。

本当は腕の確かな(手数でなく、トーンコントロールのしっかりしたと言う意味)ドラマーならこれだけでミュート感のある収まりの良い音から、伸びやかな響きのある音までコントロールできるのだけれど、そんなことは言ってられないことも多い。
で、手軽には表皮にティシューペーパーとガムテープなどでミュートを施していくんだけど・・あまりミュートし過ぎるのはどうかと・・小さめのから行こうね・・

さて、スネアに関しては裏の皮を深い抜けを出すため極力ゆるめにしている。とは言っても親指の腹で押したときに重力場の絵のようにきれいにしなやかにヘッドが沈み込むのがよろしい。

で、スナッピは軽く当たるように調整。
スナッピを上げたときに各響き線がたるみが無くなる程度の張力で裏皮に当たるように。
��た、これを強くしすぎるとテンションでスナッピの真ん中が浮いてしまう。(シェルの縁で金具が持ち上げられるため・・)こうなるとスネアらしい音を出すためにかなり強く叩かないといけないし、反応の悪いドラムに感じられる。

全体のチューニング思想はいかにもスネアらしく、タムらしく、バスタムらしく、キックらしければ好みで。違和感があるのは駄目ね・・ドラマーが叩いていて迷ってしまう。

それと、タムなどを叩いたときにスネアのスナッピ鳴きが起こりにくいチューニングも大事。
他の楽器を弾いたときにスナッピ鳴きを起こさないためには、特定のキーに合わせすぎることは厳禁。
ドラムで特定のキーに合わせすぎると他の曲で落ち着かないってありゃしない・・絶妙にどの曲でも気持ちよく叩けるよう、聞こえるようにと言うのが基本。

ヘッドは親指の腹で押したときに、重力場の図のように沈まないで全体が平面で沈むようになったらしなやかさが失われた証拠。もう鳴らないヘッドなので交換。

スティックは1ライブで3セットくらいは最低用意。
数曲でシンバルの音は鈍る・・

と言うあたりをドラマーと会話しながら進めると納得してくれるね・・
もちろん好みはちゃんと聞こう。

そうそう・・その楽器の素性を知る上でも直径方向に端から端まで1㎝刻みくらいで一通り叩いてみよう。
どこらを叩くと音がいいのか、詰まるのか・・これでそのドラムの素性が分かるとマイクセッティングも自ずと分かるようになる。

もちろんドラマーの癖などもあるので自分がねらったとおりに音を出してくれるかはまた別なんだけどね・・

と言うようにしょっちゅうドラムをいじっているので、チューニングキーと、敷居滑りワックス。チューニングスタッド用のテフロングリス、防錆スプレー、手入れ用のウェスを常備・・

シビれる想い

その昔、小屋にろくな機材がなくて、やむなく某社の民生ミキサーを補助ミキサーとして使っていた頃・・
当時の機材の電源プラグはグランド端子のないものだった。

時間に余裕のなかったあるイベント、手っ取り早くセッティングを終えリハでオペレートしていると、時々掌にぴりぴりする感触・・
「ん?アルミの切り子でも刺さったかな?」と最初は思ったさ・・

ところが、トップパネル上はともかく、ねじ部分に触ると来るのよね・・
あれ?っと思ってテスターを持ち出して対地電位を測ったら・・ありましたねぇ・・70V強・・
あっちゃ~!・・と、リハをポーズして大至急電源の反転作業・・

ミキサー室側と客席内に接地したミキサーの電位とが反転して、しかもグランドと遠い側がシャーシーに来てしまったのだな・・

ここらへん、日本の電力政策との絡みもあるしなかなか難しいのだけれど、そもそも100Vだから電源が反転しても大したことはないだろうとシャーシーグランドを別設計でつけさせず、極性もわかりにくくした日本の電力規格が良くないんだけど・・

通称平行コンセントと言っている日本の一般的な電源コンセント。
少なくとも壁付けのものは細くて長い奴と、太くて短い奴の組み合わせだって知ってます?(プロで知らなきゃ大変!)

これの細くて長い方が接地側、太くて短い方が高圧側なのさ・・

んで、これに正しい方向でコンセントが挿せていると機材のシャーシー(ケース)にはほとんど電気が来ない。
が、逆に挿すと数十ボルトくらい来る場合がある。
これはグランドの位相と、シャーシーグランドの位相とが反転することで起こるのだけれど、これをきっちり合わせておかないと、先ほどのような感電、そうでなくてもノイズ、一見分からなくてもエネルギーを無駄に消費してパワー感が抜けたりする。

特に弾き語りの場合、ギターアンプとPA系のボーカルマイクとで相のずれによる感電事故も発生している。(ユーライア・ヒープのベーシスト、ゲイリー・セインがこれで吹っ飛んだ事件(のち死亡)は有名。

また、困ったことにコンセント自体が逆だったりすることもあるのよね・・田舎の公民館あたりのホールだと真っ先にこれのチェックを行ったりするのよね・・

まぁ・・グランドがあってないと感電しないまでも、卓が燃えた・・なんて事件もあったし、十分に注意しなければならないね・・

具体的チェック法は次回・・

ストロボだった・・

閑話休題

師走でもあることだし・・てわけでもないが、突如思い立って部屋を片付け、配置変更したらアナログプレーヤーが使いやすくなった。
で、アナログレコードのコレクションも整理してたら、出ること出ること懐かしい奴が・・
んで、変態性癖がよく分かるというかCDでの再販されそうもないのが多かったりして・・^^;;

で、まぁ昔買ったホルストの惑星があったので、掛けてみたのね・・

お~・・アナログだ~などと言いながら聞いていたんだけど・・
妙に音程が落ち着かない・・
ときどき明示的に音程が下がるのだ・・
そうでなくてもワウっぽい感じが・・

おかしいなぁ・・天下のDENONのダイレクトドライブのACプレーヤー・・こんな位でワウなんか聞こえるはずがない・・と思ってネオン管でのシンクロリング(正式にはなんて言ったっけか?)を見てみたら・・時々明示的に遅れているのが分かる・・

ありゃ~あまりに使わない期間が長くなってモーターがへたったかな?
磁力も使わないでいると落ちてくるし・・

で、あえなくNGが判明。

大きい音のところではカートリッジに負荷トルクが大きく掛かるので回転が落ちる可能性は当時からあって、それでもDENONのは比較的評価が高かったのよね・・なんせ放送局で高針圧で使用することを前提に作られていたからね。

で、今でこそ一世を風靡しているテクニクスのターンテーブルはDCモータなので、コッキングと呼ばれるトルク変動を伴うからSN上不利と言われていたのだ。

で、そのDCモーターの欠点を巨大な慣性質量で消してしまい、かつ大振幅時のトルク変動をも押し切ってしまえ!と言う発想で作られたのがマイクロの砲金ターンテーブルシリーズね。特に糸ドライブの奴は今でも結構なお値段でオークションされているらしい。

でだ・・アナログレコードのS/N比を決定するのはターンテーブル性能。
よってトルクが大きくて変動のないもの、かつ重量を稼げているもの・・となると流通量が減ったことと相まって「かなり」お高い・・

え~ん・・金欠の間は何ともならないなぁ・・
仕方がない・・職場に置いてある友人から頂戴したダブルアームのプレーヤを持ってくるか・・でも場所とるしなぁ・・などと悩ましいことに相成ったのだ・・

まぁ職場でデジタル化してしまう・・ってのも良いんだけど、アナログ盤特有の20分程度で終わってしまう・・だから聞き逃さないようちゃんと向き合って音楽を聴く・・ってのも良いもんなんだけどね・・
どうしてもCDだとBGM化の度合いが激しい・・と思いません?
ましてやMP3系のプレーヤなんか・・

でも、今しっかりしたプレーヤを買うとすると、アームも良いのが欲しいし、カートリッジもGTとか・・って言うと高くなるし・・ターンテーブルも推して知るべし・・う~ん・・

カセットへの宣伝録音

年に数回、カセットテープにアナウンスなどをエンドレスで録音してくれと言うニーズがある。
まぁ・・選挙の時の投票広報とか、まぁパチンコ屋の開店セールの宣伝などもそうだよね・・車で「ガー!」つって・・

さて、この用途にエンドレステープのカセットを持ってくるクライアントがいる。
が、高い上にバックにグラファイト系の潤滑剤が塗られているのでピンチローラやキャプスタンに良くないことこの上ない。
おまけに回転精度も悪くなるし大体がうまく切れが良く録音など出来るのもではない。
で、10分テープなどを用意してもらうことになる。
これを実際に録音する機材で回して、実録音可能時間を計る。前後のリーダー部分の長さも計算に入れてね・・

BGMありかどうかも含め、アナウンス1クールを録音する。

仮に実録音時間が片面5分25秒とする。
1クールの録音が55秒だった。
5分25秒÷55秒=5.909090.....

う~ん・・6回は録音したいな・・と思うよね?ね?

でだ・・5秒の余裕を持って5分20秒で6回と計算。
320秒を6回で割ると53.33秒・・まぁ割り切って53秒だね。

55秒を53秒にDAWのタイムストレッチ(あ~コンプレスか・・)機能を使って合わせ込む。

で、片面分320秒に55×6=330秒で合わせても良いんだけれど・・

いずれここでDAWで片面分を時間を合わせて作り込んでしまうと、あとはカセットの両面に録音するだけ・・
倍速録音のカセット持っているなら、一気に倍にしておくと言う手もあるけれど・・

これで複数の宣伝テープをリバースしたときに間抜けにならない綺麗な録音が可能になる。

まぁ・・あまりやりたい仕事というわけではないけれど・・浮き世の義理もあらぁな・・

痺れてられない想い

さて、前回グランドの極性によって感電するぞ・・と言う話をした。
さて、グランドとはなんぞや?

およそすべてのものは相対的な関係にある・・という前提を一つ置いておこう。
で有れば基準・・て何?ゼロって何?みたいな疑問が吹き出てくるのだが、とりあえず、電気的には地面(地球)はたぶんゼロだろう・・と言う風に決めたところからスタートする。

で、このアース論を始めるときりがないので、まず普段使っている電源を考えるところからスタート。

発電所のことまで面倒を見ていられないから、とりあえず雀のとまっている電線から・・

通常電信柱の上の電線は3本。
これは各々の相間電圧(各線同士のこと)6.6KVの配線です。
で、おそらく地面との電圧差も6.6KVほど・・(これはちょっと微妙に断言しづらい・・)
これが家庭に引き込まれるときは通常、柱上変圧器(トランス:電信柱の上のでかい箱・・重い)を介して200Vにダウンさせる。
そして3本の電線で入ってくるのだが、この真ん中のが中点と呼ばれ、通常地面にアースされている。
トランスの前では明示的な基準を持っていなかったのに、トランスを介して初めて明示的にきっちりと地面がゼロ!
そしてその中性線を挟んで両側の線・・これは中性線に対して100V。ただし、お互いに逆相なので片方を100Vとして考えるともう一方は中性線に対し-100Vとなる。

もっとも交流回路なので、通常は100Vとして使って問題はないわけだ・・

で、両端の線同士をはかると当然200Vになる。
だって・・100Vと-100Vなんだから・・大丈夫だよね?ここまで・・
この3本の線で真ん中が中点。両端をはかると200V。中点と両端との間は100Vという配線方式を単相3線式といって極めてありふれた配線方法なのよ。

でだ・・この中性線(中点とも)と両端の線のどちらかの組み合わせで家庭内(だけじゃねぁなぁ・・会社などでも)のコンセントに電力を100Vですよ~!と配線されているのだ・・

で・・問題・・
地面はきっちりゼロだ・・と言った舌の根も乾かないうちからなんだけど・・ゼロ~?
これは高圧側つまり両端の線から見たときは、単純に100Vに見えるのよ・・地面が・・
この点はきっちり覚えておいて欲しい・・いや・・お願い・・覚えておいて・・

さて、今時のほとんどプラスチックで覆われた家電品を単独で使っているならなんの問題も生じない・・掃除機だとか・・

でも、金属部分がむき出しの機材の場合で、かつ回路的にアースを落として成立する機材(アンプなどを内包する機材)の場合、整流回路を通してもアースとして基準にした側が電源のアース側と同期している必要が本当はある。
まぁ、見方を変えると地面も100Vで揺れている。これにケースのアースが同期しているからこそ電位差が生じない。よって感電しない・・と言う理屈なのだけど、これが電源コンセントでひっくり返ったらどうなるか・・

この場合、回路が基準としているアースは地面に対して100Vの電位差を常に持つ側・・になるのさ・・
これが電源グランドがフロートした状態・・と呼ぶ。

これ自体、まれに感電事故を生じさせるも、単独機材の場合なら比較的笑ってすませられる。
皆さんも家庭のラジオだのテレビでこんなに悩まないで使えていますよね?それはほとんど単独機材として使うから。また同一コンセント回路から取った機材同士で間に合っているから・・と言うことなんです。まぁグランドループによるノイズの増加、ループ電流でのエネルギー損失でパワーが無くなったり・・と言うことも起こるんですがね・・

ところが、ちょっと大きい建物になると最初に述べたトランスの後ろの3本線の中性線に対して高圧側が反転するコンセント同士の組み合わせで機材を使うという自体が想定される。
まぁミキサー席のコンセントとアンプのコンセント(たぶんホールのあっちとこっち・・)が逆だったとか・・
こういう機材同士がケーブルで繋がったときに問題は極めてやっかいになる。

ふぅ・・後は続く・・だな・・

お~長げぇ

前回、「中性線に対して高圧側が反転するコンセント同士の組み合わせで機材を使うという事態が想定される」と、書いたあたりで気力切れだった・・
まぁ、長すぎると見づらいしね・・なんて言い訳・・

さて、現場では電ドラで足りない電源を補ったりで、元々の電源素性の分からないコンセントを使わざるを得ないことが多い。
もちろん、アース側の確認などはするんだけど・・

っとここで、具体的な確認法を・・これはちゃんとした技術者への話ね。自己責任で安全を確保・担保できる人への確認を含めた記述です。テスターの使い方自体の分からない人は手を出さないでください。筆者はそこまでのチャレンジをお勧めしませんし、責任を担保できません。

で、ここから測定手順

まっとうなテスターを用意します。家庭用の電圧だけ確認できます・・なんてのじゃなくね・・これだと測れないことがままある。

で、交流電圧の100Vが測れる状態にして、まずコンセントの各々の穴にテスターの先をつっこんでみる。(くれぐれも金属部分に触らないこと。テスタープルーブケーブルの金属同士を接触させないこと)
これで、100Vが来ていることを確認。これ自体は電源事情の不安な現場ではしょっちゅう行っていると想う。

次に、コンセントのどちらか片方だけ(まずは太くて短い方)にテスタープルーブを差し込んで、残り片方をコンセントプレートのネジに当ててみる。
古い建物だと金属のコンセントケースなので、配管と導通していてこれで100Vが来て入れば、その配線は正しい。当然細くて長い側はゼロとなる。これで、グランド側が確認できる。
最近の建物ではコンセントボックスがプラスチック製なので、これでは測れないことも・・そう言うときは、次に床(手近に地面に行ってそうな金属があれば直良い:ガス管・燃料管は絶対駄目)との間で測ってみる。これは数十V位を計測できることが多い。これでも出なかったとき、裏技でテスタープルーブの端子を手で持ってみる。
怖いけどね・・原理的には電圧計測は電流を流さないで行うように設計されているので、100Vくらいでは全く感電はしないはず。
ただし、テスターコンディション、取り扱いのミス等で危険性がないわけではないので、お勧めはしない。
これでも、電源の極性は調べられるよ・・と言う話だ。

生電源測定終わり。

これでグランド側が明示的になったコンセントからドラム等を使用する場合は、電源ドラムのコンセント側は正しく細い太いがあるはず。3極電源ドラムならなおさら。
が、問題はプラグ側で、よく分からないのよ・・アース端子が付いていれば幸い。アース線が出ている側がグランド側。これはちゃんと合わせよう。通常豚鼻と呼ばれる3極と2極の変換を使った場合もグランドを合わせて差し込むのが正解。グランド端子を下にして差し込もうとしたときの左側がグランド端子のはず。

問題はそう言う気の利いてない奴。
一応規則では電気用品安全法だかのマークが付いている方とか、いろいろ言われているのだけど、古くなって削れていたりとかで全然当てにならない。まぁプロなら確認のとれているものを自分で準備しろ!というのもあり・・何だが、世の中いろんな事情はある。
で、ドラムを引き延ばす前に、元々のコンセント部分でグランド側にテスタープルーブを差し込んで、結線した電源ドラムのコンセントとの間で測って、正しい向きにプラグが挿さるようにきちんと調整してしまう。
さぁこれで地ならし終了。

次に任意の機材を機材間結線をしないうちに一度結線して電源を入れてみる。
��極電ドラで、輸入機材の3極プラグを使えればその機材は問題はない。(そのコンセントまでの確認がとれていれば・・の話ね。くどいけど・・

��極のプラグを持つ機材の場合が問題になる。(国産メーカー品はほとんどだね)

で、電源が入った状態で、余ったコンセントのグランド側にテスターのプローブ棒を差し込む。あらためてグランドの確認をするとなお良い。
次に機材の金属部分(アース端子があればベスト、なければフレームに通じているネジがいいか)との間で電圧を測る。
これで、電源コンセントの向きを変えながら電圧が少ない方をチョイスする。当然しているとは思うけど、入出力レベルは絞りきっておいてね・・
普通、アナログ電源回路を持っている機材の場合、数十ボルトと数ボルトと違いが出ると思う。このときは迷わず数ボルトの方を選ぶ。

難儀なのがデジタル系の電源を持っている機材。(スイッチング電源)
これはどちらに挿しても20ボルト程度測定されてしまうことがある。この機材は最終的にはノイズ源にもなるのだけれど、メーカーがこれでいいというのだからまぁしょうがない。悩むだけ無駄なので現場では取り敢えず無視。

で、すべての機材を測定し、正しい電源グランドを確保した上で結線を始める。
このとき、最初の機材にコネクトし、次の機材に繋ぐ前に、信号ケーブルのシールド端子と、機材のシールド極とで測定する。

このとき数ボルト程度以下であることを確認。
デジタル電源の問題のあったものはしょうがないが、単独で測ったときより増えていないかを確認。倍にもなったら迷わずそのデジタル機器のコンセントを反転。
こうしてミキサーからアンプまですべての機材が正しく結線されて初めてまっとうな状態で機材が稼働する・・と言うことなのだ。

グランド(シールド間でと言ってもいい)間で電位差があると言うことは、無駄な信号エネルギーを消耗しているので、ノイズにならないまでもパワー抜けの原因となったりする。混変調歪みも増加、いわゆるすっきりしない音の一大原因なのよね。

さて、これで繋いでも、まだすっきりしない・・もっとノイズ対策をしなくては・・と言うときには、デジタル機材など、問題のありそうなところにアイソレーショントランス(絶縁トランス)と呼ばれる器具を挿入する。
NHKさんあたりと仕事をすると放送系との信号の受け渡しには必ずこれを入れされられるほど。
これは600:600などのトランスを介在して電気的に直結させないことで、グランドループを切ってしまうと言うやり方。
トランス特有の問題が気にならなければ電気的にはもっとも安全。

さて、トランスの問題を回避しつつとなると、ファンタムの介在するマイク回線ではまずいが、ライン回線では入力端子のところでグランドをリフトする・・つまりグランド端子をシールドから切り離してしまう・・と言うやり方がある。
これは信号線の正反のみを繋ぎ、シールドは出力端だけを繋ぐことでグランドループを切ってしまおう・・と言うやり方。
ダイレクトボックスなどにグランドリフトスイッチが付いているのはこのため。
また、昔のYAMAHAのアンプなどにはそのためのグランドリフトスイッチが付いていたものだ・・
まぁリフトした方がいいのか、しない方がいいのかは現場の状況にも依っていて、必ずしも必ず切れ!とは言いがたいのだけれど・・

さて、それでもノイズをもっと取りたい・・となると、そもそもの電源から着手しなくてはいけない。

各電源の相を合わせるべく、巨大な複巻きの電源トランスを持ち込んで、もともとの電源の相を一旦切り離し、新たなグランドとすべて同一の相の電源ですべての機材に電源供給する・・と言うやり方もある・・とんでもなく金はかかるけどね・・

さてさて、現場の責任者としては自分のところの機材の電源を合わせたからと安心してはいけない。
まず最初にするべきことは出演者の持ち込んだアンプや楽器など・・

ギターの弾き語りでマイクに唇が触れた途端感電したと言う事例は数知れず。
PA系と、楽器系のグランドは音響が責任を持って行おう。
そもそも楽器とマイクの間で電位差があること自体大問題。演奏者は簡単に電源極性を変えたりする(アンプの裏の電源スイッチで簡単にできる)のでよくコミュニケーションを取っておきましょう。

また、大規模イベントになると録音チーム、録画チーム、放送チームが入り込んでくる。
各々の間の信号の受け渡しでまた電源の問題が絡む。特に電源車を持ち込まれるとどうやって整合を取るか、トラブルを回避するかに頭を悩ませることになるね。こういうときにトランスは重宝するね。どっからも文句の出なさそうな評判の良いトランスを数セット持っているといいかも。

まぁ、最新のノイズ対策理論から言うと今述べたグランドループの問題は低周波領域の話・・と言うことになる。
この問題の真の解決のためには機材側では電源グランド、電子回路のコモン、ケースシールドと各々を別に取り扱え、かつ、結合できる機構が必要。アメックのプリアンプなどはそれに近い設計になっている。
また、電源のグランドの独立のためには最終的に複巻トランスが必要。
さて、高周波領域のノイズ対策はまた別の機会に・・
インバータノイズはまた別の問題だし・・

うわぁ・・長かった・・もしまっとうに読んでくれたのならお疲れ様。耳からスモーク出てません?^^;;

アース問題

閑話休題

アースだのグランドだのとがちゃがちゃ書いたけれど、学問的に精密な定義で書いているわけではないんだな・・
体験的問題回避策としてのもので、学問的に定義するとなると用語ももっと厳密に使わなくてはならない・・でも、そんな定義から調べていたら酔っぱらった勢いでなんか書けないモンね。

でだ、ちょっと出てきた用語を思い出すと、アース・・これはたぶんもともと地球という意味のアースから来ているよな・・
グランド・・これはグラウンド(地面)からカタカナ用語として短縮したものだろう。
この2者とも地球(大地)はゼロ電位である。もしくはそう見なす、という概念だよな・・

接地と言う言葉は大地に接続する・・と言う言葉の短縮形と思うので上記のアースなりグランドに何らかの方法で接続するための端子、もしくは接続する行為を指すものだろう。
電気工事法などで言う第何種接地という場合は地面との抵抗値なども定義されている。

さて、単相三線式と行ったときの中性線(真ん中のみどりの奴・・だったよな?)は両端のホット100ボルトとコールド100ボルトとの真ん中だよ・・という話だ。これ自体はグランドと全く関係なく作ることも出来る。
が、一応日本では柱状トランスなり電気室からのものなりで接地がされているはず。両方ともショートさせると真ん中の線には両端の2倍の電流が流れる・・というのは簡単に想像できると思う。だから同じ太さの線で配線されているというのはちょっと変だね・・
まぁ、両方の相できっちり同じ電気を使っていると理屈上は真ん中に電気は流れない・・と言う風になっているんだけど・・

この中性線、電圧に注目して喋ると中点などとも言う。
まぁ身も蓋もない言い方だ・・

さて、ここまでは電源ケーブル周りの話。

電子回路(電気回路でも)が成立するためには、行った来たで電源のループが通っていれば後は信号線の話なので、整流後に5Vを直流電源として使う・・と言う目的ならコモンを10000V、電源(V+)を10005Vとしてもその差が5Vなので問題なく使える(ことになっている)。

けれど、普通はここでコモンを0Vとして、それを確実にするために接地されることも多い。
でも、もしかして地球って帯電してる可能性が高いのよね・・
それでも0と見なす。

ここで使ったコモン。
回路図を書くときは接地マークを使ってあっさり書かれることが多い。
つまり、回路を構成させるときの共通電位基準ですよ・・この共通という部分でコモンという言葉が使われる。
だから(V+)側をコモンにしてしまって、普通アースにしてしまう回路を(V-)としてしまう回路技法もある。
車なんかでも普通はマイナスアース車なんだけど、プラスアースという車もあったよね・・電気をもらうときは気をつけよう・・大ショートを起すぞ!

まぁこのコモンを接地するとコモンアース・・
また、アースは共通だよ・・と言う意味でも使ったりする。

でも、本当に大地がゼロかなんてのは誰も分からないよね・・
雷は地球が相対的に電位差を持っているからこそ落ちてくるし、
まして都市部で電車ががんがん地面に電気を流している・・と言う問題もある。
アールが汚れているとノイズ対策も難しくなるよね・・

まぁ、現場的にはアースがどうであろうと感電しなくてノイズのないシステムが組めればいい話なんだけど・・

日本人の音嗜好(指向?)

ちょっとお休みしてました。

さて、アルティックの名機A7でオペレートした経験のあるエンジニアはたくさんいると思う。かくいう管理人も学生時代の実習ではこれがハウスシステムだった(FBはボーカルマスターだったな)。
このスピーカー、元々はシネマ用途に開発されている。よってスクリーン越しに聞いてちょうど良くなるように設計されている。
これを日本人はいい音や~つって直接聞いているんだな・・
で、おまけにこのスピーカー説明書には万が一ツイーターが飛んだときは、ウーハーをフルレンジで聞けば間に合うみたいなことが書いているらしい・・(未確認)
いくら何でもウーハーをフルレンジで・・とは思うのだが、結構真剣らしい・・
というのも、英語という言語は子音の占める割合が特に高く、シビランスの強調されやすい言語なのだと。また、そこを聞くことで英語の聞き取り能力も上がるのだとか・・で、こういった成分ならそこそこ確かに聞こえては来る・・

が、この状態(ウーハーだけのフルレンジ)で日本語で喋ると何が何と喋っているのか、ほとほと聞き取りにくいったらありゃしない・・

これがまず前振りの一つ。

日本という国の基本的な音環境。
まぁコンクリートジャングルである都市部はここ一世紀内の話なので、もっと古い時代からの遺伝子レベルでの話。
日本という国は地質学的にはずいぶん新しい国で、海溝沿いの国土なので基本的には火山国。
広葉樹林帯の面積が広く、腐葉土による柔らかい地質のところが多い。これは低音成分がよく吸収されることを意味するよね。雪なんか降ったらなおさら・・
建築材も檜や杉が好まれるため家屋構造も吸音性の高い材を伝統的に使っていたし、なにより障子、襖といったほとんど遮音性を有しないものがしきりとして使われている。低音に関しては特にね・・
よって、日本での伝統的家屋での生活では低音の少ないすっきりした印象の音環境になることが容易に想像できると思う。
これは比較対象としてヨーロッパに多い石を使った場合と比べてみて欲しい。

そう言う低音の少ない日本でたっぷりの低音を聞く機会・・というと、地震・・津波、洪水、なだれ・・雷・・と、ろくなものがないのよ・・

だから日本人の遺伝子には低音を忌避し、高音を好むものが組み込まれてしまったのではないかな・・

その証拠に伝統的邦楽器に低音楽器はない・・太鼓くらい?
その太鼓もドロドロと気持ち悪いシーンに使われているし・・^^;;
歌ものも、みんなテカテカしたハイトーンの歌手が売れている。しっとりと渋い低音で・・なんてのはほとんどヒットチャートの上には出てこない。
また、チョッパーベースの隆盛など、日本人はゆったりたっぷりしたベースが嫌いなんじゃないか?と思うくらいだよね・・

ここまでが前振りの二つめ。

でだ、先のA7。もう一つユニットを付け加えるなら何?って言う質問をしたんだと。
ヨーロッパ系はほとんどがサブウーハーを欲しがったらしいのだ。でも日本人は?
そう、もう想像が付くよね?スーパーツィーターだったのだ・・

管理人はピンクフロイド育ちなのでたっぷりした低音が好きなんだ。
で、キックは当然「ドッ!」となるものだと思っていた。自分でチューニングし演奏する場合も、そう言う音が切れよく出てくることを期待する。出来れば26インチが欲しいと思ってしまうほどなんだけど・・
今の流行は絶対違うよね?
キックの音評価で最初にアタックなる言葉を聞いたときは「え?」と思ったものさ・・

それでもスピーカーにプロセッサタイプが出てくる前、4560なんかの時代はまだ「ドッ!」が結構多かったように思う。
でも、ターボ以降プロセッサタイプのスピーカーが主流になってキックの音は「ガッ!」に明確に変わったようだ・・

この音が主流になってからキックのビーターもハードタイプが主流になったし、キックへのアタック収り用のマイクを追加するってもの一般的になってきた・・

まぁプロとして仕事をする限り、クライアントの好む音を作ることに異議はないから、いくらでもそう言う音に仕上げてやるんだけど、自分のドラムの音としてならあり得ないなぁ・・

で、とうとうキックのサイズが下がりだした・・今は16インチなんてのも・・こりゃフロアータムを寝かせてもいっしょだな・・と思うんだけどね・・
26インチが欲しいなんて思ってた時代はどこに行ったんだろうか・・

さて、斯様に高音指向の日本人。結局新しい最先端の音・・音楽・・って思っているものでも、かなり古い時代からの音センスがまとわりついて抜けないものなんだね。若いモンも意外と律儀に伝統守ってんじゃん!・・と、おぢさんは思ってしまうのだ・・

こうしたことから敷衍して考えるに、超低音騒音問題は日本人にとってかなりのストレスなのだろうね・・

超低音騒音?

さて、前回超低音騒音は日本人にとってストレスになる・・かも?・・と書いたが、現実にストレスになっている事例を一つ。まぁ必ずしも音響の話題とも言えないんだけど・・

近隣都市のあるデパートの3階に本屋がある。
そこに勤めると体調を崩すと言うことでそこの従業員の間でちょっとした都市伝説的話題になっている。
まぁ知り合いが勤めていたこともあって野次馬しに行ったさ・・本屋自体は大好きだしね。
さて、現場にたどり着いたら確かに妙に体がだるい・・というか、重く感じる。
しばらく歩き回ってかつ本などを眺めているうちに気がついた。
非常に低い帯域の振動とも音ともとれないものがある。(聞こえるとは言いにくいくらい・・)
で、はたと気がついた。
空調機の分周振動で床が共鳴しているんでないか?っと。
東北なので50Hz。その半分か1/4か。3相モーターならその1/3の倍数か?
で、床が上下動しているみたいなんだ。
上下振動するものの上にいると、下に下がるのは重力加速度か加算されるので簡単に落ちる。
が上がるときには重力加速度に逆らうので重くなる・・この繰り返しでトータルで体が下に押しつけられているような印象になるのではないか?と。
再現実験をしたわけではないのだけれど、ありそうな気がするなぁ・・

実際その場を離れると又体が軽くなった。
ありゃ体調崩すわ・・というのが取り敢えずの率直な感想。
でも、発見は難しいだろうね。
一般にショッピングセンターなどはコスト削減のためコンクリート打設もぎりぎりまで薄く作っているから、振動発生源の対策をしっかりやらないとこういう事例は結構生じるのではないかと思われる。

まぁPAだのではこんな聞こえない音は無駄なので出さないんだけど・・ピュアオーディオでDCアンプの性能はコーン紙が揺れるのが見えるくらいが良いなどと簡単に無責任に書いている評論家もいるけど・・ちょっと考え物かな?

っと、直接には音響に関係のない話題を振ってみました。

自然なPAをねらうときのアプローチ

アカペラものとか純邦楽、クラシック系、ジャズなど生音の印象を壊さず拡声しなければいけないと言う仕事はかなりある。(まぁツアーで回っているJ-POPやロックや歌謡曲演歌系は気にする必要はないだろうけど)
特にクラシック系ではマイクが見えただけで拒否反応を示されることもあるほど・・
さて、俗に言うPA臭い・・って何故か・・そこから考える必要があるよね。

一番大きな理由。PAをしているから・・って・・洒落にもなりまへんがな・・
でも、もう少し考えてみましょ。
ふつうPAをするとき、演奏者より客席に近いところにハウスのスピーカーが来る。
誰も何も考えずみんなこうやっているから、先輩がこうしろと言ったから、演出上仕方なく、小屋の作り付けがそこだ、などと置いていることが多いのだけれど、そもそもこれがPA臭い音の第1の理由なのよ・・
試しにハウススピーカーを演奏者の後ろに持って行ってみる。
まぁ音量にもよるが大分緩和される。つまり普通っぽくなる。
また特にパンで定位をいじらないまでも、なんとなく定位感が出てくる。
これはハース効果によるもの。そう、ディレイで定位がつけられますよ・・と言う奴ね。
これをディレイマシンなどという大げさなことをしないで実現する一番簡単な方法がこのスピーカーを演奏者の後ろに置く・・と言う手法。

もっともハウリング対策や、どうしても音圧を稼ぎたいと言う場合には使えないけれど、生音っぽくと言う場合はそんなに音圧を稼ぐ必要はない仕事のはずで、と言うことは結構有効な手段となる。
特にハウりやすいポイント数カ所の調整だけで結構いけるはず。生音が先にリスナーに届いているので、リスナーの印象はもう生音の音色で決定されている。よって特にEQなしでもいけるのよ・・これは心理学の問題。というより、大脳生理学か?
まぁ先行イメージで決定されてしまうと言う奴ね。

で、そうはいってもステージ内にスピーカーなんか置けない、と言う現場も多い。
どうしようか・・

そう、このときこそハウスの出力にディレイをかます。
これも距離ぴったりではなく、あくまで生音先行、PAはそれの後押し・・と言うイメージにすること。レベル決定(オペレート)もそういう意識を持つことだね。
すると非常にナチュラルな印象のPAに出来る。
この技法は録画撮り、録音などが同時に行われるときもPAに対する苦情が出にくい手法でもある。

さて、これでかなりいい雰囲気の音に仕上がるはずなんだが、リバーブは欲しいよな・・と言う局面は多々。

でも、如何にもリバーブ!とやるとこれまたブーイングの元。

どうするか・・そうホールサイズが入力できるものはホールサイズを実際の会場に合わせる。そうでなければ各パラメータを実際の会場の響きと合わせ込む。
すると、リバーブマシンの音が実際の会場のリバーブと非常に良く混ざるようになる。
これによってリバーブをかなり掛けても会場のホールトーンのように聞いてもらえる。

これらを駆使して、後は現場で如何にも普通・・という雰囲気を作り上げると、透明なPAが実現できる。

まぁ・・PAしていないみたいな印象になって金が取りにくい・・なんて弊害もあるかも知れないけど・・^^;;

スピーチについてのもう一考

なんでかな?前回の投稿がダブってしまい、かつ削除できない・・管理画面上では削除しているんだけど・・

でだ・・スピーチについてもう少し考えてみたい。

スピーチって・・英語で言うと音響屋的には基本中の基本すぎて、別に音楽バランスなんてこともないし、定位や帯域の振り分けを気にする必要もない・・ということで結構軽く考えてしまうことが多いというのは否定しにくいと思う。
で、正しくPA(パブリックアドレス:構内拡声システム)なんかはエリア内で音圧を規定以上出るようにすればいいだろう・・みたいな安易なシステムが多いのは否めない。

昨日のニュースで地震予報システムの予備実験を行ったところ、病院内のロビーで多くの人が何をしゃべっているかわからなかった・・と回答していたあたりに如実に現れているような気がする。

実は人間が人間として発達した一番の基本は言葉の獲得である。
これによって、正確に意思と知恵を伝えることができるようになり、コミュニケーションの質が非常に高度になったことが一番なんだ・・
つまり、言葉が正しく、かつ力強く伝わること!これが人間としてのコミュニケーションの基本なんだ・・と言う点を、為政者にも設計者にも、システムを管理する側にも強く持っていただきたい・・というのが今回最も言いたいことだ。

したがってビジュアル系システムより何よりまず考慮されてしかるべきで、基本の建物設計、内装選定などの段階ですでに音響的考察とコンサルティングがされていれば、先のような失敗例は出なかっただろう。
スピーカーだけ良いものがあればいいということではないのだな。
壁面の使い方、基本レイアウト、容積計算、暗騒音の予想(特にパニック時)、内装材による反射減衰率の予想、そしてスピーカーの設置による反射や残響の発生予測、こう言ったことが十分に検討されていればもっと明瞭率も上がり、それでいてうるさくなく、伝わるべきことがきっちり伝わるシステムができるのだと思う。そして、じつはそれは人間としての基本生活の中ですごく大事なことだという共通認識が必要なのだと思う。

四六時中垂れ流しのBGM、がなり立てることに麻痺しそうな売り込みのトランペットスピーカー、そして選挙での非常識な歪みきった音声、ああいう音を平気で出す人たちでは、コミュニケーションの基本を知っているとは思えない。
ということはパニック時にも意思疎通がとれない状態で事故を大きくするだけのような気がする。

まぁ俗にいう音響・・の話しとはずれるのだけど、自分の仕事の足下、根源を時々は考えてみたいものだね・・

スピーチ技法でもう一つ

さて、一昨日上げたトピック、なぜか重複記載されたので削除したところ、反映されなかった・・
んで、仕方なく、トピック自体を削除したのだけれど、やはり反映されず、あきらめつつ次のトピックを書いたらその時点で反映されて、重複されたものもオリジナルも、どちらも消えてしまった・・
元データもなかったので、まぁ思い出しつつ、似たようなことを乗っけるべく挑戦。

さて、スピーチの拡声である。
スピーチの拡声というと拡声の基本の最たるもので、簡単なようでいてなかなか難しい。
一つ注意したいのは、音楽的に、あるいは音響的に「良い音」だから「よく分かる(明瞭度が高い)」とはならないことが多い・・ということね。
音楽のコンサートでいい声だ・・と言う風にチューニングしたそのままのセッティングでスピーチに入っても何を喋っているか聞き取れない・・と言う様なこともままある。
で、こういうときは明瞭度に関係の無い余分な帯域をばっさりカットした方がよい。
まぁコンサートなどでは、インプットモジュールの前でマイク信号を分岐し、片方を歌用のセット。もう片方をスピーチ用のセットとして、コンプやらEQのセッティングを変えておく・・で、フェーダーでMCとVoで使い分ける・・というのはよくある技法。

さて、式典や講演会、各種大会などスピーチがもっぱらのイベントも結構ある。
アリーナクラスの会場で宗教団体の教祖様の講話・・なんて言うシチュエーションの仕事も結構大きいPAカンパニーに回ってくるのではないかな?

さて、こういうもっぱらスピーチの時のPAアプローチでゲインを稼ぎたいとき、小型カプセルのグースネックマイクを二本集合セットして、各モジュールに立上げ、各々PANを振り切って使うやり方がある。
X-Yに似ているが、別にカプセルの方向を振り分けたいわけではない。

これは、以前にオーバーヘッドでも説明した手法の応用で、一本マイクと片チャンのハウススピーカーとで完全に独立した二つの音響拡声系として扱えるので、相互の干渉がなく、結果トータルのシステムゲインが上がる・・と言う技法である。
今思いついたんだけど、これをスプリット拡声技法と呼ぼう。
ミキサーないで各信号が混ざってないので全然別の拡声装置を持ってきて2系統使ったのと一緒だよね・・
で、空中で混ざって結局センター定位する。と言うわけだ。

あと、演台の上手、下手から各々マイクを出して、話者の顔の向きに合わせ、細かくフェーダー操作することで、無駄な音をカットし、かつ必要な音をカバーし合わせて自然な拡声をする・・と言う技法もある。
これは神経を使うし、技もいる。
でも例えスピーチであっても「ライブ」なわけで、スピーチだから楽だ・・などと言うこと自体が大いなる勘違いと言えるだろうね。

さて、こんな風にマイクをたくさん立てなくてはいけない・・と言うようなシチュエーションでは絵面(「エズラ」と読む:業界外の方:ビデオなどの見栄えのこと)も良くないので、テクニカさんのマルチカプセルマイクのようなものがあるといいねぇ・・

ふぅ・何とか前回書いたことはカバーできたかな?

ポップノイズ対策

我がふるさとに江戸時代中期に発祥したという「生保内(おぼない)節」なる民謡がある。
で、この全国大会成るものが有るのだな・・
一日で280回も同じ曲を聴くという試練を与えてもらっているのだが、この曲、歌い出しの歌詞が「吹けや、生保内東風(おぼねだし)」と始まり、途中で何回も「吹け」という言葉が出てくる。

もうお題からして分かったと思うのだが、この「ふ」のところで見事に吹かれてしまうのよね・・「ばふ!」つって・・

マイクを選び、ウィンドスクリーンに凝り、コンプの設定に凝り・・と、いろいろ試したが、結局ダイナミック系のマイクで後は手コンプが一番と言うことになった。

さて、手コンプ・・分からない人のために説明すると、なんのことはない、でかい音の時に瞬間的なフェーダー操作で対応すること、その能力、となる。

で、この大会を担当し続けて身についた技がある。

この吹かれと言う現象、「ハヒフヘホ、パピプペポ」で特に顕著に発現するのだ・・

ならば歌詞の分かっている曲の場合、予測が立つ。

さらに、歌い出しの直前「ヒィ~~」と肩で大きく息を吸うような人は歌の訓練が足りてない・・従って吹かれも大きい・・と予想できる(かなり高確率)。

よってそのハ行、パ行の歌詞の一文字だけ瞬間的に手コンプをすればよい。

スムーズ且つ正確に手コンプをするためには、中指、ないしは人差し指で唄のフェーダーを操作するものとすれば、親指を目標ゲインリダクションのところにおいてストッパーにすればよい。安定的且つスピーディ、しかもゲインリダクション量が変化自在な手コンプの完成。

この歌詞で予想、あるいは相手の力量で予想・・予備動作で予想・・と言うことは電気式コンプでは不可能で、もちろんコンピュータを駆使しても無理。

人間ならではの技として活用できる人はしていただきたい。
ゲインリダクション量?
普通に聞こえる量!

Thresholdの発音?

ちょっとスピーチ周りのお題が続くなぁ・・(なら変えろってか?)

スピーチでバックグランドノイズに対抗する、書類のカサコソを入れたくない・・などの理由でゲートを掛けたいことは結構ある。
ましてデジタル卓では簡単に使えるしね。

で、実際に試してみると分かるのだが、そのままでは使い物にならない。
これは子音の特徴によるもので、あるレベルに立上がる前の部分が聞こえないと子音が掛けてしまい、言葉として聞き取れないものになってしまうためだ。
よく、ダッカー(音声が入るとBGMをカットする機能)の掛かった店内放送などで、1度目の放送ではしゃべり初めが全く聞き取れないのと一緒。
まぁ、トランシーバなどでも経験するんだけど、こういう場合、「あ~」とか、「う~」とか、意味のない予備音声を出しておいてから次の言葉を続けるようにしないと、頭が欠けて聞き取れないと言う奴の、もっとシビアなものと理解してもらえばいいと思う。

ゲートというのはある一定レベルまで、音声を遮断しているため、子音に必要な擦過音などの大部分を削ってしまう。従ってゲートオフした後にしゃべりを再開したときがもっとも聞き取りにくくなる。

じゃあ使うなよ・・と言うようなモンだけど、議会などでも執行部内でのちょっとした打合せ(これも一言二言のもの)などでは追従しきれないことがあり、やはり使いたいことがあるのよ・・横を向いての咳き込む音とかもね・・

で、きつめにゲートを掛けつつ、子音の欠けを防ぐにはどうするか・・
サイドチューンとディレイを利用する。

サイドチューンに直接の音声を入力する。メインの入力には20-30msecくらい遅らせた(ここは実験で追い込めてないので追検証していただきたい)音声を入れる。
つまりレベル検知は早く、実音声を遅くしてゲートが開くときに子音の立ち上がり部分の通過が間に合うようにセットする。
これでかなり子音欠けは緩和できると思う。
また、これを利用することでスレッショルドレベルをかなり高い位置に持ってこれる・・よってゲートのノイズ低減効果がかなり有効になる。

というもくろみだが・・まぁ人が話しているその裏でごちゃごちゃ喋っている人もいるので、自ずと限度ってぇモンはあるんだけどね・・

機械頼りをお勧めするわけではないけれど、技法として知っていると助かる局面も多々あるかと思う。

お!そうそう、このゲートのレベル検知の速度・・これはアナログの非常に動作の速いものがお勧め。
デジタルでは演算に時間を取られるので、どうしてもアナログより不利。
つまり、非常にアタックの早いLive音源の場合はデジタルは一般に不利になる。
アタックの遅い設定は問題ない。また演算速度も確かに上がってきてはいる。
が、ストレートに早いのはアナログゲートの類。

金額が安いので小馬鹿にしがちだけれどBehringerのコンプをゲートとして使ったときはその動作の速さに驚いたものだ。(買えなどと言っているのではないよ・・)

うちの小屋で使っている卓はアナログ卓にも拘わらずリコール機能を有している。また、各インプットモジュールにダイナミックプロセッサがVCAを操作することで実現されているので、動作速度的には有利なものの一つ。

が、やはりコンピュータを介してパラメータのコントロールがされているし、このファーストアタックの問題ではやはりちょっと不利なのは否めないようだ。

まぁちょっと話がずれたけれど、如何に動作が速くともレベルが一定の所まで立上がらないとゲートが開かない、という原理そのものが子音欠けを招いている、というのは変えようのない公理のようなもの。
それに対する対処法という風に理解していただきたいね。

おまけの余談

不肖この管理人、88年からMACを使っている。
まぁ仕事柄、WinPCもPC-UNIXも使っているが、手になじんだツールとしてのMac使いとしてかなり年季の入っている方だと思う・・

だから、GUIに関しては結構うるさい。

が、Liveの現場でディスプレイを見るのはあまり好きではない・・

自動車のスピードメーターにデジタル表示のものは確かにいくらか出てきた・・が、タコメーターにデジタルが採用された・・と言う話はほとんど聞かない・・

なぜか?不評だからに決まっている。

非常に瞬間的に変動するものをデジタル表示すると、読めないのだ・・

アナログメーターだと目の端にでもとらえていれば概ね把握できるのにデジタルでは目を凝らして読みこまないと理解できない。
これはタコメーターのように瞬時に判断することが求められる用途には向かないと言うことになる。

これがなんでディスプレイ嫌いに結びつくのか・・と言われると思うのだけど、関係するのだな。

予定調和のようにきっちり台本通りに進むイベントならまだしも、アドリブ好きなギタリストや、すぐ客席に降りたがる歌い手などと組んで仕事をするときもそうだが、何より子供相手のイベントなど、舞台から目離しのならない仕事というのはかなり多い。
目離しがならない・・ということは、舞台以外をほとんど見ていられない・・ましてやディスプレイを覗き込んで設定を変えて・・などやってられないのよね・・その間にマイクを倒されたり・・

また、本番まで立ち位置が決まらない出演者もいたりするし、子供なんかそもそもどこに立ってくれるのか・・とんと不明なまま瞬間芸で対応せざるを得ないこともしばしば・・

するとディスプレイを覗き込むというのは極力したくないのだ・・

確かに予定通り進められるイベントではすごく便利だというのは分かるが、まさにLiveという現場ではちょっと考えてしまう・・

むしろ皮膚感覚で操作できる(つまり、触っただけで操作できて目線を下げる必要のないもの・・と言う意味)インターフェースがないものかといつも開発の連中には言っているのだけれど、市場性が確立できないのか誰も作らないねぇ・・手法的には既にアイデアはあるんだけどね・・

ゆっくり設定できるときは確かにGUIによる今のデジ卓のディスプレイでの設定は便利。がLiveでのオペの時は不便。
エンコーダーの所に数値が表示される卓もあるが、数値を読む行為自体、結構時間の掛かるものなのよね・・タコメーターに使われないと言うのと一緒。
そもそもそのエンコーダーが何のパラメーターを表示しているか、を一旦確認しないといけないんだからね・・

これはコンピュータ使いにしてみると痛し痒しの所なんだが・・

へたればなし

う~ん・・またダブっているなぁ・・

いいや・・

んと・・昔、あるイベントで踊りのポン出しをしていたときのこと。
本番が始まってもまだ素材テープを持ってこない出演者(おばちゃんたち・・いやちょっと語弊があるか・・元おばちゃんたち・・^^;;)がいて、出番の2人くらい前にようやくテープが届いた・・

これ・・一曲しか入ってませんよね?頭出てますよね?・・A面ですよね?・・と、くどいくらいに念を押して、さて本番。何せ頭出しの確認もレベルの確認もする時間がとれない・・

あっという間に出番。板付きでハイ!カセットスタート・・レベルが分からないので-10db位の所にフェーダーを待機して、出だしで音量を調整してしまおうという作戦。

・・・が・・・音が出ない・・普通は長くても5秒くらいでは音が出ると思うんだが・・と考え、もしや表裏が逆なのでは?などと不安になった・・

っと?「ダンダンダンダン」と人が近づくような足音が?・・何だ?

「あや~・・おど(音)っこ出ねぇ~・・」「バチャン!」「きゅうわ~~ん」と曲が途中からスタート・・

 出演者呆然・・私も呆然・・観客・・大笑い・・・

 最初は何が起こったか分からなかったさ・・でも途中で気がついてしまったね・・

 彼女たちは本番ぎりぎりまで練習してたのだ・・
 そして最後の最後に録音ボタンを押してしまったんだな・・ラジカセの・・

 いや・・確かに録音ボタンが再生ボタンとすぐ隣のラジカセはあるよ・・うん・・同情はしないでもない・・でも、本番用のテープと練習用のテープは別に用意してね・・ってあれほど注意しておいたじゃないか・・

検定や試験、落とせない本番でのメンタルセット

え~立場上、検定なんかの具体的な指導は出来ないんだけど、実技に関しては本当は、技術的なことはほとんど出来ている人が検定を受けているはずなんだよね。

ということで、失敗する人の典型から気がついたマインドセット、メンタルセット系の話をしておきたい。

もう既に検定の試験内容はほとんどの受検者に届いているよね。

これを試験問題・・と思っている人が多いんでないかな?

で、内容がそれほど難しいわけではないので何となくいけそうだ・・位の気持ちで検定に臨み、検定員に後から覗き込まれる状況で舞い上がってしまい、いつもなら出来ることの半分も出来ないで終わってしまう・・と言う人が多いみたい・・

で、メンタルセットの第1

これは失敗すると信用を失うほどの大仕事だと考える。

第2

試験問題ではなく、クライアントからのオーダーであると考える。

第3

クライアントからのオーダーであるので、やれと言われたことをやらないとギャランティが出ないかペナルティが待っていると考える。

第4

だからクライアントのオーダーを自分なりにリストアップしておいて、するべきことをきっちりするように、また余計なことはしないと決める。

第5

卓、出力計、ポン出し用CDは現地さんが調達と調整済み。

第6

前現場の関係で開場18分前にタレントとマイクが到着。(1級は30分前)

第7

時間がないので、自分でやるべき手順を決めておいてそれを淡々とこなす。

以上です。

後は各自自分で検定の試験内容を検討して以上の案件に置き換え、整理し、当日計画通りに「仕事」を進めてください。

おっと、追加!

交通事故や転倒事故なども自宅前(近所)が意外に多いのだそうです。これは自宅近くだと言うことで気が抜けてしまうことが多いとか・・

検定の場合は本番試験が終わったとき・・が一番気が抜けると思うので、ここでもう一度し忘れたことがないかをチェックしましょう。実は検定条件にしっかり書かれているのよ。読み返してね。

とにかく、クライアントの仕様書を何度でもチェックしてね。抜けはペナルティ。

もう一つ全体的なメンタルセットを。

��級でさえたったの4本。
��級に至っては2本しかマイクはない。

これを簡単に考える人は多いがしっかりこなすのは大変。試験時間はこれを考慮して微妙にセットしてあるのよね。

でもこの4本と2本。リバーブ返しとCDを入れてもたかが知れている。
ということはいつもの仕事に比べれば全然楽なはず。
そして、トラぶったときのチェックポイントも少ないはず。

「と・こ・ろ・が!」実際には「何にも繋いでいないチャンネルをチェック」し始めるのよ・・焦っているんだろうね・・

トラブルというアクシデントがあったときほど、如何にトラブル経験を積んでいるか(かつ如何に解決したか)などが出てくるのよね。

もう一度繰り返すね。

既にあなたは沢山の経験を積んでいるので技術的な問題はほとんど無いはず。(新卒者でもバイトやアマとしての経験は積んでいるでしょう)
だから失敗要因のほとんどはメンタルな部分だということね。
あと、軽く考えすぎるのも良くない。

クライアントの仕様書として努々軽く考えることなく、要らないことはせず望んでいただければと思う。

あ~検定内容に関することは一切ふれてないから大丈夫・・だよな・・

クリスキット

このところちょっと普通のオーディオのサイトを見て回ることが多かった。
中坊の頃から高校(わしは高専だったけど)の2年くらいまでがオーディオ好きだったので、その頃の記憶とつきあわせても隔世の感を感じる部分と相変わらずという部分があるなと・・

さて、なぜ高校くらいで止めたか・・バンドを始めたこと、PAに関わるようになったこと・・が大きいみたい。

圧倒的な実存する楽器の力に圧倒された・・と言う感じかな・・

このとき一番感じたのが、所詮ステレオという虚像の上での生音論議に過ぎなかった・・という実感。
もちろん、この上で趣味としてたしなむのに何の文句もないんだけど、自分の中では意義付けが抜けてしまったのだな・・

さて、そうは言ってもPAもステレオという虚像で仕事をしていることに間違いない・・けど、生楽器のある状況が多いし小規模会場ではこれは覿面に生楽器の利点を使うことが出来る。

それと決定的に違うアプローチ法があって、ピュアオーディオは狭い部屋のスピーカーの向こうにホールを感じたい・・と言うのが生音のテーゼである。

PAでは如何に遠くの人でも目の前にタレントがいるかのように拡声できるか・・が大きなテーゼである。

ここで実は大きな違いが出てしまっているよなぁ・・ってね・・

おっと、ここでは意図的にレコーディング業界や放送業界などの記録系業界のメンタルは抜いてます。

あと、生で楽器をいじっている身としてはどっちもどっち・・所詮虚像・・と、これに関してはちょっとニヒルになってしまっているかなぁ・・反省・・

個人的には皮膚感覚で演奏する方なんで、手触りの悪い演奏もいやだし、聞くのもいやかも・・

と言うようなメンタルの中で、さて今自分で自室のオーディオをセットするとなるとう~ん・・
やっぱり音は前に出てきてくんないと、蹴り入れたくなりそうだし、遅いアンプやスピーカーではいらつきそうだし・・かといって自己主張の強すぎる音だとBGMにならねぇしなぁ・・
などと意外に選択肢は少ないのである。

オーディオ評論家諸氏の評論は先に述べたように前提となっているメンタルが違うので全く参考にならないし・・レコーディングエンジニアの話すことは近いけどやっぱり違うかなぁ・・

と、久々にお悩みなのだ・・

まぁどうせSMAARTでの調整をしながらディレイでユニット間距離を調整して、などとやらざるを得ない・・となるんだろうけど・・ってこで既にオーディオ評論家さんとスタンスが違っているか・・・^^;;

そうそう、低音用スピーカーの1/4波長遅れの問題は結構大きくて、これをキャノンが振動モーターを超音波駆動することで解決したと言うニュースがあったね。これは興味津々。

本番前に何を飲む?

え~・・ちょっと・・かなり・・脱線かな?

まもなく本番、卓前につくときに皆さん何を飲まれますか?
全く飲まない(トイレに行きたくないから・・)と言う方もおられますね・・

う~ん・・本番での緊張度が高いほど心臓へのストレスが大きいので本当は水分補給は大事なんですが、これがトイレとの絡みでなかなか難しい。

本番途中でトイレがせっぱ詰まったらえらいこってすからねぇ・・

さて、管理人はと言うと、少量のコーラ・・と言うのが定番になってます。

理由1 利尿効果が少ない。
お茶、コーヒー系は例外なく利尿効果が高く、1時間と持ちません。長いイベントでは4時間にも上るインターバル(まぁこんな時は交代要員(短時間でも)を決めておきますが・・)の中でトイレがせっぱ詰まると大変だもんね。ましてや客席内オペでは・・

理由2
あの「ビリビリ感」がテンションを上げる。
「おっし!やったるぞ!」という気になるのよ・・
コーヒーやお茶は「あ~休憩だ~」というメンタリティに・・
モチベーションを自分で上げなければいけないときは例外なくコーラ・・かなぁ・・「こんちくしょう!」という言葉が似合うのよね・・^^;;

まぁコーラは昔のチクロ時代の方が口の中が粘つかなくてすっきりしていたと記憶している世代ではあるのですがね・・

もっとも年も年だし、普段は水に限る!なんてやってますが・・

デジタル卓とアナログ卓

え~・・今更デジタルがいいとかアナログでなければなどという議論をしたいわけではありません。

デジタル大いに結構と思いますし、また実際ディレイシステムやリバーブなど、デジタルなしにはなしえなかったこともたくさんありますしね。

ただ、デジタル卓に関しては、なんでポッドやスイッチ、つまみを減らすことによるコストダウンをねらったインターフェース設計がかくも多いのかという問題があるんですね。

デジタルだから悪いのではなく、安易なコストダウン設計のもたらすLive性の悪さ・・が一番気になるところです。

ツアーリング用途などで同じタレント、同じ演出でロングランを掛ける・・これならリコール機能を重視し、サーフェースを減らそう・・と言う考えも納得しないわけではない・・
けれど、地方の小屋などでは同じものは二度とやらないし、出演者すらやれない・・と言うことも多いのよね・・
まして本番ぎりぎりまで出演者が決まらない・・とか、本番中にようやく分かる・・なんてのもあるわけで・・そう言うタイトな仕事ではデジタル卓特有の階層構造は大問題になることがあるんですよ。

名古屋で中華航空機が墜落したとき、自動操縦にモード概念が入り込んでいたことが大惨事を引き起こした大きな要因であると言われました。
つまり、パニックに至ってパイロットは自分がどこにいるのか(どのモードにいるのか)が分からないまま操縦桿を操作していた・・と言うことですね。
この自分がどこにいるのかが非常にわかりにくいと言う点がまさに階層構造の一番の問題点なんですよ・・

まぁ・・人間どういうときもある・・あってはまずいのだが、二日酔いの時もあるかも知れないし、朝出がけにかみさんと大げんかして来ることも、あるいは大事な人が亡くなった・・と言うようなことだって・・
そう言うナーバスな状況、あるいはパニックになったときにもサーフェースは最良のアクセス方法を提供するべきだと考えるんですがねぇ・・

まぁアナログの畳以上に広がったサーフェースがいいかといわれるとそれもまたどうかな・・とは思うのですが・・

人に優しいと言うことを、完璧な状態の人間をベースに考慮するのではなく、落ち込んだとき、失敗の直後・・などの心理状態を想定してのインターフェースの研究を積み上げておくべきだと思うこの頃・・

仕事をイメージする力

さて、仕事を、本番をきっちりと成功させるための非常に大事な力のことを話しておこうかな・・

実際の仕事を引き受けたりプラン、あるいは準備する段階で、あなたはその仕事の全行程をイメージすることが出来るだろうか?

プラン図を書いている様子、機材のリスト表を作る様子、アシスタントの交渉の様子など、本番以外にもたくさんの仕事があるわけだけど、これを具体的にイメージできる人ほど仕事の成功率が高くなる。

機材を繋ぐイメージが出来ていればケーブルの必要数だって的確に分かるし、ステージの広さがイメージできるならケーブルの必要長さも自ずと分かってくる。
出演者の動きが予想できる(イメージできる)なら危険因子も対策することが出来る・・

また、イメージすることによってやるべき事が潜在意識の中に組み込まれていき、並列的に処理できるようになるんだね。
実際人間の普段の行動はほとんど潜在意識によってなされているよね?
ペットのお茶を飲むのだって、「お茶を飲もう」と思っただけで目の前にあるペットを取り上げて口を開け、飲み込む・・なんてのはいちいち意識しちゃ居ない・・その間ほかのことを考えたり話したりしているじゃん。
で、実に95パーセントもの情報処理は潜在意識化で行われているのよ・・
顕在意識(左脳が担当)ってなかなかやっかいで、一度に一つのことしか考えられないし、直列処理だよね・・お勉強なんかはその典型。

でも、現場は多種の仕事をこなさなければいけないし、卓前では特にそう・・

だからイメージを使って潜在意識下(右脳が得意)に手順やなんかを覚えさせておくのが大事。
写真や、手書きの絵を使って始まってから成功裏に終わるまでのイメージを右脳に焼き付かせておこうね。
うまく仕事が回る時って何となく途中とか終わるまでのイメージが浮かびやすい・・てのもあるなぁ・・うまくすると音もイメージ化できるときも・・
管理人の場合は手触り感が出てくればしめたもの。かなりコントロール下に納められる。

まぁ非常に広い範囲の5感がうまく動き出すようにし向けると言うことかな・・
機材トラブルの発見には嗅覚も大事だし、味覚は体調管理に極めて重要。
ハウル前にフェーダーが重くなるようだとかなり快調!

まぁ基礎力がないとイメージも使えないんだけどね・・^^;;

明けましておめでとうございます。

皆様、明けましておめでとうございます。
この業界のこととて、年越しのイベントに従事されている方も多いかと思います。
ご自愛の上、グッドジョブ、グッドサウンドですよね。

除夜の鐘の届く意味などを考えつつ、また音そのものの意味を考え新しい年のご挨拶に代えさせていただきます。

1ビットデータストリームデジタルのレコーダーがいよいよ手に届く範囲になってまいりました。
今年はまた大きく技術が発達することと思います。

それもでライブの現場では出演者も、技術者も、観客も人であることをいつも念頭に、愛といたわりに溢れる仕事をしていきたいものです。
皆様の上に今年も幸せが訪れますことを祈念いたします。

卓盤面の割り振り

さて、新年早々で、あれですが・・

皆さん卓の上のインプットの割り振りはどのようにしていますか?

緊急時にメインフェーダーを操作することで対処するという、非常事態を想定し、それでなくとも各ブロックをグループで調整することを考えると、一番頻繁に操作されるのはグループフェーダーと言っていいかと思います。
例えば、ドラムスをグループの1にVCAで(あるいはデジタルグループで)割り振った場合、ドラムス全体のレベルはグループで調整しますよね?本番中は・・

で、グループの枠に収まらない調整をしなければいけないのが、通常はまずボーカル。

これはコンプの掛かり具合、リバーブの調整、MCの時の切り替えと調整など頻繁に操作します。
それとMCが別にいればその調整。下手すると一曲ごとに出てきますし・・

その次はソロを受け持つ楽器、頻繁に調整の必要な楽器・・

これらがグループフェーダーに近い方が、視野角の中に必要なフェーダーが収まるので、本番進行上便利なわけです。

つまり、インプットソース中、もっとも操作されるものがもっともグループに近く、一旦セッティングが決まったらほとんどいじらないであろうもの・・がより遠い方・・1ch側に追い出されていく・・

こういうセットが一般的ではないでしょうかねぇ・・

次に師匠から教わったもう一つのアプローチ。
デジ卓は関係ないのですが、アナログ卓のばあい、バスラインが短い方が鮮度がよい音になる。抜けがよい・・という問題。
これは設計者は認めたがらないのですが、現実に若干ながら生じる。
従って、キックなどの抜けをよくしたいものをグループフェーダーに近くセットする・・というものです。
これは操作自体はちょっと大変ですが、音自体は良くなるチャンスが大きいと言うことですね。

さて、今まで述べたものはインプットモジュールの担当する楽器が固定されている・・と言う前提でした。

ところが、再三にわたって話しているように、本番まで何がどこに来るか判明しないイベントの場合、どうするか・・

大概のイベントで少なくとも唄と司会くらいはいるか居ないかは判明している。

そこで唄と、司会、挨拶用のセンターマイクなどだけグループに近いところにセットし、それ以外のマイクは必要十分な本数を確保し、そのマイクを下手から番号付けして待機しておく。ここでマイクは57のようなフレキシブルなマイクをウレタンのウィンドスクリーンと一緒に準備しておくことは既述。
スタンドが210が良いか、259が良いかはイベントの性質で本数を振り分ける。

たとえ素人であってもステージマンにお願いした人には、最低並べるときは下手から番号の若い順番に使うこと!唄はスクリーンをかぶせ、それ以外は外すこと!を徹底させる。
インカムでどの番号から使い出したかだけでも連絡させる。(欲を言えばどの楽器が何番かも)
おっと、ウレタンもカラーを何種類か用意し、離れた卓からも確認しやすくしておくのは言うまでもないです。まぁケーブルでもいいんですが・・

これでできあがったステージ上のマイクの番号別管理に卓面のマイクの割り振りを合わせてしまう。(下手から若い番号ね)

これによってステージ上の並びと、卓面の並びが一致する。前後になるときのルールもステージマンと徹底する事もあるな・・
このメリットはセット時間が取れないときにどの楽器がどのマイクかを把握しやすいこと。(卓面に書かなくても)
とっさの作業の時にステージイメージと卓面のイメージが一致しやすいこと。従って素早く対処しやすいこと。
状況把握が楽であること。
・・につきます。

どうしてもリスクを冒さなければいけないとき、いかなる状況に陥ってもその全体像を素早く把握し、トラブルの発生率を最小限にするアプローチを取ることがプロとしての基本ではないかな?
もちろん、このやり方以外にもアプローチ方はたくさんあるのだけれど、その一つとして頭の隅に覚えておいていただければ・・

このアプローチを取るようになった一番の理由は、二日酔いの頭でも把握しやすかったからです。お恥ずかしい話・・
とにかく下手から順番!見た目と卓面の見た目が合っている!って間違いにくいですよね?

まぁ、そんな低次元の仕事しかないのか!とか言われそうですが、そういう仕事でもやりたくない・・などとは言えないモンですからねぇ・・

常設スピーカーの難儀

近年、浜松のアクトが出来ー(1ではなく長音記号ね)の、愛知芸術が出来ーの、2国が出来ーのでオペラを意識した間口も広ければプロセタッパもやたらに高いホールがずいぶん増えた。
まぁアリーナよりはましという意見は置いといて、ホール特有の問題として、常設スピーカーは設置しなくてはいけない・・と言う奴がある。
一昔前の7-8メートルくらいのプロセタッパの時代はともかく、近年の14メートルとかそれ以上のタッパになると如何にディレイシステムをかまそうと、客席前列に近いあたりではプロセの音は真上から降ってくる・・
まぁもともと客席最前列ってPA的には結構厳しいところであるのはともかく、オペラってベルカント唱法を使っている限り日本ではなじみにくいという原罪を負っているんだけどねぇ・・なんで、年に数回しか出来ないオペラにこんなに投資するんだか・・と、ちょっと素朴に思ってしまうのは、東北のド田舎のホールに勤めているやっかみかな?

おっと、オペラの日本での功罪は、ボーカルバランスに関する別スレを参照して自分で考えて欲しい。おっと、オペラという芸術がいいとか悪いとか言っているわけではないよ・・
さて、何に文句を言っても、とにかくそういう小屋の常設機材を使わざるを得ない立場の方々も多数おられることと推察する。

で、そういう間口の広い、またタッパの高いプロセニアムアーチを持っている小屋の場合、大概ポータルが設置されていると思う。
小規模なセットの芝居をしたりには欠かせないこのポータル。
通常の設置の仕方では間口10間程度、タッパ4-5間くらいにして使っていることが多いのではないかな?
式典なんかもだだっ広くては使いにくいしね・・ましてや講演会では・・

さて、このポータル・・間口を決めるポータルの上下(かみしも)の高さ4メートル程度、のところになんでスピーカーを設置しないんだろう・・といつも思ってしまう。
ここにスピーカがあると実に使い勝手がよい。
もちろん、タッパを決めるポータルにも有ればなおいいよね・・センターと左右・・
純粋に建築的に固定されている設備スピーカーよりは調整もしやすいし何より調整機構が舞台(美術)との話し合いで決められる。

このポータルへのスピーカー設置は地元の演劇劇場のある作品の演出家の要求から発案した。
スピーカーを見せたくないので地方ブースの奥に置け!
これに悩んだ小屋の音響さんから相談を受けたのね・・
現場を見てポータルがあるのを確認し、美術さんと相談して、ポータルの適当な位置にスピーカー用の穴を開けてもらい、ハウス用スピーカーを設置して全面にはサランに美術さんがセット用の絵を描き、スピーカー背面は暗幕で覆えば?

これが大当たり!制御もしやすいし音圧ムラも少ないしで、結局その作品以来ずっとそのままポータルに仕込まれたままになっている。(もちろんサランは黒く塗られたりしたんだけどね・・)

このポータルへのスピーカー。
建築音響、もとい設備音響の人たちからは盲点になっているのかまず設置例を見たことがない・・

設備音響の人たちには申し訳ないのだが、いわゆる設備音響の仕様書・・何度眺めても、なんのために必要なのか吟味された形跡がないままとにかくプロセニアムスピーカー!サイトかカラムスピーカー!ステージスピーカー!フロントスピーカー!となっているような気がしてしょうがない。

ステージスピーカー・・ってどういうシチュエーションで使うんだろうか?通常のロードのPA屋さんみたいにハウスとして使うには貧弱でしかもとってつけたみたいになるし、サイドフィルに使う・・くらいか?
おっと、民謡とか踊りでディレイ基準のバックスピーカーとしてなら使えるか?でもマルチセルラーホーン・・指向性がブロード過ぎるなぁ・・どこに向けようか・・

講演会のボイスのメインとしてのプロセニアムスピーカーは前述の通りタッパが高すぎて居眠りする客が増えてしまうし・・

今は民謡大会でさえ10本くらいの転がしを平気で使う時代。
素人の役所の人間でも使えますなんて嘘をつかないで、プロのために使いやすくチューニングしています。みたいにしてもいいのではないかなぁ・・
32-56インプットの卓を目の前にしてびびらない素人はいまへんて・・結果司会用のマイクとカセット入力以外はガムテで固定して、プロが行っても「あ!とにかくほかは触らないで!」などという小屋が増えるんだよねぇ・・
そうでなければ、委託などでプロが入るか、役所の人間がプロ(レベル)になるか、しかないじゃん・・なら最初から普通にプロが使いやすいシステムにした方がいいよね・・と思うのだ・・

とは言っても小屋には小屋特有の問題もあり、俗に言うPAとしての完成度だけでは済まないのが小屋の音響。
ここら辺はまた別の機会に述べようかな・・

その他の建築音響

さてさて、今回はその他の話。
ホール音響の話は、結構眉間に青筋を立てて語る方がたくさんいらっしゃる。
良いことである。それなくして日本のホールの音は良くならない。

が、ホールの同じ建物内の他の場所(ロビー、会議室、トイレ)とか、普段仕事をしている環境、立ち寄り先、その他諸々の生きている限り関わる場所・・そう言うところの音環境って・・きもちいいっすか?

管理人個人としてはとにかく事務室とトイレの音環境の悪さに閉口しています。

事務室に関してはとにかく暗騒音が大きい!反射音他きつい、吸音率が悪すぎ!とか・・
換気扇の音だけだったのがコピー機械の動作音にサーバーのけたたましいブロアーノイズ!椅子を引いても気になるフロアー、電話やファックスのけたたましい音・・
なんでこれで誰も机をひっくり返さないんだ・・と思うほどなのね・・
おまけに喧騒を逃れて駆け込んだトイレでは身動きしただけでとどろき渡る反響音。トイレットペーパーのホルダーのけたたましい音・・
こういう音感性が日本人の音感性を表しているようで忸怩たる思いがするのよね・・

コンサート会場で良い音って確かに大事。
でもMCの落ち着いた静かなたたずまいとかBGMの穏やかさとか、駅のホームが静かだとか・・まぁ静かと言えないまでもいらいらしない軟らかな落ち着いた音声とか・・

なんでこれほどまでに暴力的な音が町のあちこちに溢れているのか・・
こうしたことに何ら異議を発することが出来ない・・あるいは気がつかないという摩滅した感性に愕然としたものを感じるこの頃・・ってずいぶん昔からか・・

行ったことはないのだけれど・・ヨーロッパはずいぶん静かだと聞く。
本来、静けさを愛する感性は日本人にこそ備わっていたと思うんだけどねぇ・・

そう、これを見ているあなた・・
豊かな音量も確かに素晴らしい!
でも、真の静寂を知っているか?
無限の空間の静寂を知っていてのオペレートなのか?
いや、これは一人音響マンにのみ問いかけるのもではなく、すべての表現者に問いかけたい・・
真の静寂をあなたは表現できますか?
生きると言うことの中で・・



な~んて格好いいこと言ってますがね・・^^;;;;

マイク考その1

 さて、PAと言うシチュエーションではあまり使う機会のない小径コンデンサーマイク。DPAなどに代表されるこれらマイクは、クラシック音楽の録音の世界では標準と言っていいかと思う。
 うちの小屋では世代的に少々新しいEarthWorksのTC-30Pと言うペアマイクを使っている。
 30kまでフラットで、DPAよりさらにカプセル径が小さいので位相差に強く、よりマイク間距離を離しても逆相感が出にくいらしい。

 さて、これら小径コンデンサーマイク、PAの現場で使うとするとやはりクラシックものが多い。
 簀の子から吊りおろして(まぁ同じDPAのラベリアタイプも多いが・・)全体を集音するやり方が多い。この場合、ステージ向けのモニターからその音をかえそうなどとは思わないこと・・ハウって大変なことになる。(全く無理というわけではないけどね・・)

 この小径マイク、録音で使ってみるとよく分かるが、視覚イメージとの差が少ないことが特徴。
 バランスを取りやすいのね・・
 それと、大径マイクに比べピークを叩きにくい・・結構踏ん張ってくれる。
 これはやり直しのきかないライブレコーディングでは重宝する。

 さて、これらの特徴がどこから来るのか、管理人流の分析をしてみたい。

 先に音には圧力型の音と速度型の音があると記した。

 わかりやすい例では打楽器や管楽器(特に金管)などが典型的な圧力型の音とすると、弦楽器は速度型の性質が強い。
 また、遠達性は圧力型が強く、耳あたりは一般に速度型が柔らかい。
 弦楽器の胴体は速度型の音源の音を圧力型に変換するコンバータと見ることも出来る。

 さて、マイクに戻る。

 圧力型の音に大径マイクを適用し、ぴったり波面がカプセルの振動面に適合すると極めて効率よく振動板が動くことは想像できると思う。
 この状態はカメラで言うと望遠レンズで特定の対象物にフォーカスした状態に近く、他の性質の音源に比べ見かけ感度が上がって聞こえる。

 これはオケの録音などで打楽器や管楽器が大きく、かつ近距離に感じられる原因となる。
 まぁ、何となく不自然な印象を伴った音像構成になりやすく、ここを調教するのに苦労することになりやすい。

 楽器の大きさ、距離などで波面の球の半径の度合いは様々であるが、この波面と振動板の角度がなかなかに難しい問題を提起することがあるのよね・・

 さて、小径マイクである。
 カプセル径が小さいので、波面の角度ずれに対しても比較的融通が利く。
 同一振動板内での逆相の成立もしにくいしね。
 よって、金管が飛び抜けたり・・と言う現象は発生しにくいのだ・・

 結果、広角レンズでオケ全体を眺めているような自然な印象に集音しやすい。
 これがクラシック録音の世界で愛される理由と思う。

 まぁ、無指向性故の特性の癖のなさももちろんあるんですが・・

 さて、この速度型の集音を考えるとき、外せないのがベロシティマイク(リボン型とも)。
 このタイプで、帯域が広く、耐久性があったらもっともっと使いたいマイクなんですがねぇ・・いかんせん華奢も度合いが過ぎるってもんで・・

 それでも、このマイクで歌録りしたり、三味線や琵琶を取ったら絶品ですねぇ・・ピークのきつい音源に対し、ピークの音圧をやり過ごし、マイルドな集音が出来ているのよね・・

 さて、いずれ、音源の発音の性質(打楽器か弦楽器かその形状と大きさとか)をよく勘案して、その出てくる波面をイメージして適用するマイクを選定するのは非常に有効だと思います。
 師匠はよく小型のマイクぷりにヘッドフォンをつけ、その楽器の周りをマイクを持って歩き、最適なイメージで集音できるポイントを探すと言ってましたね。

 個々のマイクの選定はこの後の話なんだと思うが・・

 管理人は基本的には使えないマイクはほとんど無い。使いやすいかどうかはあるにしても・・と考えています。
 仕事の関係で出先の機材だけでやれと言われたらそれはそれで最良の結果に向かって努力するのは当たり前だし、出来ませんと泣き言は言えないしね・・

ついでに

さて、いよいよPAではほとんど使うことのないMSマイクの話をしたい。
MSといっても危ない世界の話ではないので期待しないように・・

でだ・・MSマイクにはノイマンやらAKGやらずいぶん高いマイクが揃っていて、それ故PAカンパニーでは持っていないところも結構あるかと思う。
金のある小屋ではあるところもあるけどね・・
で、ノイマンなんかでも専用のマトリックストランスを使って・・などと推奨事例には載っているが、帯域は狭くなるしノイズは乗りやすいしで、結構難儀な代物。

で、MSマイクの理屈を知らない人に概略を説明。

��=モノラルないしはミッドを意味し、S=ステレオないしはサイドを意味するはず・・ちょっと正確な記述は調べてからね・・
��には単一指向性のマイクカプセルを、Sには双指向性カプセルを使用して同軸上にお互いに90度の角度でセットしたマイクのことを言う。

使用法としてはMのカプセルを正面に向けSのカプセルが真横を向く。

正面を向いたMカプセルの信号をL+Rとして考えると、真横を向いたSカプセルのL側を向いた方をホットにして考えた場合、Sカプセルからの出力はL-Rと考えることが出来る。
で、これをマトリックストランスを通すことでLとRを取り出すことが出来る・・と言う代物。
でもよく考えると、このマトリクス、そんなに複雑なわけではない。

要するに、M=L+R S=L-Rのとき、

 M+S=(L+R)+(L-R)=2L で左信号を取り出せる。
 M-S=(L+R)-(L-R)=2R となり、右信号を取り出せる。

この計算式のとおりの信号合成をトランスで行っているのがマトリックストランス。

でもこれってミキサーでも出来るじゃん!

Sの信号を2パラにしてモジュールに振り分け、Sの正圧側をLに向けたらそちらを正相。もう片方を逆相にすると、Mマイクとのレベル調整で見事にMSマトリックスはできあがる。Sをステレオモジュ-ルにすると言う作戦もありだな・・もちろん逆相コネクタありでね・・おっと、もちろんMはパンはセンター。LRはパン振り切りね。

これによってトランスレスでマトリクスが組める。MとSのバランス調整で広がり感が調整可能だし・・
後はバランス感覚だな・・

さて、MSマイク。
近年のクラシック録音の基準マイクの一つではある。これを中心に、ステレオバーでA-Bマイクをセットし、これらのバランスで定位と臨場感をバランスするという手法が多用される。

��Sマイクは定位に優れているがX-Yほどドライなイメージにはならない。
それ故、A-B特有の位相差の強く出た(リサジューは結構すごいことになる)音に芯を出す効果で使うようだ。

さらに、MSマイクが高価で使ったことがない!と言うあなた!
87もしくはその亜流の安価なコンデンサーマイクでも、近年双指向性を選択できるものが増えた。
なら、これらを2本使い、カプセル突き合わせで上下にひっくり返してセットすると同じ効果を期待できる。
お試しあれ!

��-YともA-Bとも違う独特のワンポイント感が得られると思うよ。

位相の話のおまけ

本来はあってはならないことでも、プロの現場でもしばしば逆相という状態が発生するものだ。
有名な話ではJBLのちょっと前までの機材はコーン紙の動きが他メーカーと逆・・と言うものがある。
これには最初期のマグネットの着磁をミスってしまいそのまま出荷してしまったので、意地でそのまま続けたと言う都市伝説である。
まぁ赤い端子だから正相とは限らない・・と言うあたりが悩ましいところ。

さて、現場である。
例えば2対向で使っているときに、一台だけ逆・・これはケーブルの結線ミス、ケーブルコネクターの結線ミス、などで起こりうる。アンプは測定後の出荷なのでおよそ大丈夫とは思うが・・入力ケーブルでの逆相事件も結構ある。

少々やっかいなのが、ボックス内の逆相と言う奴。これはスピーカーボックス内でコネクターへの接続をミスっている状態。音を聞かなければ分からないと言う点にやっかいな部分が。アッセンブリがいまだ人為的な要素を含んでいるので起こる現象。
さらにやっかいな事例。
ユニット間での逆相。ウーハーだけとか、ツイーターだけが逆相というもの。
これもアッセンブリが人力に頼っているために生じる。
設備音響ではボックスの塗装時(よく結婚式場用に白く塗ったりするよね・・)の再組み付けの段階で起こる・・これが見つけにくい。
また、出荷状態のボックスでもあった・・

これ、気がつきにくいことおびただしい。特に出荷状態のものってみんな結構信用しているしね・・
で、あるライブイベントでのこと、あくまで私はリスナーとしてその場にいたんだけど、どうもじゅるじゅるした印象の音だなと思って、チェックして歩いたら2対向のうちの一発のツイーターが逆・・
「すいません、余計なことかも知れませんが、上手外振りのツイーターが逆相っぽいんですが」と、教えてあげたさ・・
そしたらそのオペレータさん、電池を持って行ってそのボックスに繋ぎ、コーン紙の動きを見て「大丈夫です!」・・後は何も言えませんでした・・はい・・

まぁフェイズチェッカーを常時持ち歩いているなんて奴は少ないのかも知れないけどね・・安くないし・・
でも、耳で気がつけよな!と思いません?

もう一つの事例。

これまたある野外イベント。
球場でのものでその球場を何となくぐるりと回って歩いていたら、円周の6割くらいのところで、音が一気に変化した・・あれ?っとおもってうろついて調べてみたらやはり4対向中片側2発(アンプでパラっていたらしい)が逆・・
で、オペレータさんにそれとなく話したんだけど・・音をチェックして回っても気にならなかったらしい・・駄目か・・とこれまたあきらめ・・しかし気色悪いのよね・・

逆相状態は音のエネルギーが無駄に消費されるし音が前に出てこない原因にもなる。普段のメンテナンスとチェックが大事だよね・・現場じゃなかなか直しにくいから・・
まぁシステム組みのカンパニーが違うときはいろいろ揉めるんだけど・・

位相反転はこのほかにもマイクでも起こるし、セッティングでも起こる。実にやっかいなんだけどね・・

そうそう、番外編としてCDプレーヤーでも逆相が起こるって知ってる?
LRで位相が違うなんて恐ろしい機材はさすがに無いにしても、LRとも逆になっている機種は結構多い。まぁ、メーカーにしてみればLRで揃っていれば何が悪い!と言う気持ちなんでしょうけど、バスドラなどのトップピークが違う・・正圧でこそ押し出す力になるのに、負圧がピークになったら結構これ、低音のしっかり出るシステムだと分かっちゃうのよね・・ちょっとだけ情けないイメージ?
フェイズスイッチのある卓でチェックするとすぐ分かるよ・・

さて、斯様にいろいろな問題が位相絡みであるということなんで、PA用の卓にはフェイズスイッチは必須だと思うのだけど、安価な卓には装備されていないこともしばしば。ギャラもない頼まれ仕事でよく遭遇するよね・・^^;;
逆相コネクターを10本くらい持ち歩いていると、こういう場合にあわてなくて済む。それと安価とは言えないまでもフェイズチェッカーも持っていると助かることしばしば・・

くれぐれも逆相状態を放置したままEQでなんとかしようなどとしないことね。まっしぐらにド壺にはまるよん。

技能検定の要素試験

まもなく、舞台機構調整技能士検定の全国一斉の学科試験と要素試験の時期ですね。
私が受験したのは10年以上前になりますが、1度目の検定で失敗したときは明らかに要素だった気がします。
生来記憶がリフレッシュされやすいタイプで、え?前の音ってどんなんだっけ?と言う体たらく・・
おまけに騒音の大きい軽ワゴンで、しかも大雪のため3時間近く掛かって試験会場に着いたそのときには耳が疲れ切っていたのでした・・

まぁ、泣き言はともかく、時系列で並べられた二つの音素材を聞き比べ、評価するというのは結構コンディションが良くても大変。
ミキサーに両音源とも立上がっていてフェーダーで聞き比べるならすぐ分かっても、ハイ、基準音源です・・・○○・・・次は試験音源です・・○○・・・。
と言う風に時系列で並べられると前の音の印象なんか吹っ飛んでしまう・・と言う人が多いのではないかなぁ・・
そこで、同業の先輩から聞いたコツ。
どちらの音も、自分ならこうする!という評価をすることだそうです。
基準側に対しても、試験側に対しても、自分とここが違う。自分ならこうする・・と言う点を、トーンバランス、楽器バランスなどでチェックするようにすると記憶に頼らなくても判定できるよ・・と。

言われて見れば当たり前・・でも、試験会場でそこに気がつかないとね・・まして試験形式自体が不明だとつらい部分かと思う。
何回か受験した人ならそれなりの対策を取っていると思うんだけど、まぁその一つのアプローチ法と捉えて欲しい。

各楽器の種類の聞き分け・・なんてのは生楽器をいくら聞いたか、の世界だからアドバイスのしようもないけれどね・・サンプラーやMIDIを扱うことが殆どの人だとつらいかな?

まぁ、直接検定自体の内容ではないけれど、参考まで。

ノーギャラ・ノーモニター!

2月初旬から中旬に掛けての時期に福島県喜多方市の喜多方プラザ文化センターでFBSR会なる音響の技術研修会が毎年開催されている。
もともとは東北の音響技術者が、放送、レコーディング、PAとジャンルを超えて勉強会をしようというのが始まり。
毎回生音源で行われると言うのも際だった特徴で、しかもミキサーが大小ホールのみならず、楽屋、練習室など至る所に置かれ、参加者が思い思いの場所で実際にミキシングしたり機材に触れることが出来るという極めて実践的なスタイルの研修会としても有名。
しかも、一般参加者はおろか、主催者も運営委員も、講師までも参加費を払って参加するという・・^^;;・・極めてそう言う意味でも面白い研修会である。

さて、そこで運営委員をするようになって久しい。

ご多分に漏れず研修会の実施費用の中で演奏者謝礼金が結構比重が大きくて、あるとき、どうせ運営委員の中にプレーヤーが何人かいるんだからFBSRバンドでも作ろうか!と言う話になってしまった。
で、そのハードロックバージョンに参加したときのこと、「う~ん・・いつも音響屋としては演奏者に楽器音量は適切に、モニターは控えめに・・とお願いしてるよなぁ・・」と話題になった。
いっそ、モニター無しで演奏できるか見本になってみようか!と盛り上がり、付いた合い言葉が「ノーギャラ・ノーモニター」

演奏曲はジミヘンの中から選び、パープルヘイズとリトルウィングだったかな?をすることになった。

いや、皆さん、これ、結構いけるのよ・・
各楽器、帯域を重なりにくいようにしてアレンジも音が団子にならないように気をつける。
演奏自体も必要なところにエネルギーが集中するようにコントロールすると、実にステージ上がすっきりするのさ。
で、各自、他のメンバーの音が聞こえるように、自分の音をコントロールしながら演奏すると、本当にノーモニターでハードロックが出来ちゃった。

管理人がドラムだったので、ある種自分の音で他のメンバーの音が一番聞きにくい立場。立ち位置(座り位置?)も一番奥だしね・・

演奏に当たってはまずベースが聞こえること、これが大事かな・・ある程度キックも合わせ込むし・・で、ギターは爆音系の音質で、でも押さえてあるのでまず聞こえる。キーボード・・というかピアノなどはソロの時、もしくは特徴的なリフの時に聞こえればよい・・と割り切る。

で、リズム隊が固まっていれば、上物隊は演奏の進行上問題はないのよね・・
で、他のメンバーの音がステージ上で分かるという前提を崩さないと、FOHもすごく楽。
モニターかぶりが無いもんね・・
たまたまそのときのメンバーの演奏能力が極めて高く、音が前に出てくる人たちだったので、かぶりが全体に少なめだったとも講師のオペレータ氏は言ってましたね。

で、まぁライブハウスなんかでは難しいかとは思うんだけど、モニターは無ければ無くても演奏不可能ではない・・ということ。これは覚えておいて欲しいね。実証しました。自分たちで。
それから、最悪のトラブルとして、大規模停電でPAも電気楽器もNGと言うとき、アリーナなんかはともかく、普通規模のホールくらいならドラムソロでつなげるとか、生ギターでつなげるとか、そう言う覚悟・・みたいなものがプロなら欲しい気がする。

まぁ、北国に暮らしているなら、オール電化住宅であっても電気の要らないストーブを一個は持っておかないと死人が出るよ・・と言う感覚と同じかな・・

で、その上で最低限必要なモニターって何の音だろうかと、演奏する上で最低限必要な情報って何だろうか・・と考えることは、音楽そのものを考えることでもあるように思うな。

とまれ、時間に余裕があるときに、ノーモニターでさっと音を出してみる・・
ドラムを挟んでベースの音が遠いぞ・・とか、うわ~ピアノが聞こえねぇ・・とかいってても、結構演奏って進んでいくもので・・
すると、本当に欲しい音って何?本当に欲しいメロディは?と、考えが深くなると思う。
それに、他のメンバーの音を気遣うようになるし・・なぜって?自分勝手な音を出すとすぐ聞こえなくなるから・・^^;;
こういうことを何度かやっていくと、同じ楽曲の中でもどこで押してどこで引くのか・・見えてくるよね。
それはアレンジのみでなく、演奏の仕方、音楽のあり方、ステージのあり方、リスナーへの思いの届け方・・などにもつながっていくと思うんだが・・

それが出来てくると、音響屋の見方もちょっと違ってくるよね、たぶん。
コミュニケーションもすごく取りやすくなると思うんだけど。

まぁ音響側としても出来ない人にこうだ!なんて押しつけられる何者もないんだけど、物理限界は超えられないよ・・と言う点、騒音性難聴に対する配慮から「いや~・・もうちょいモニター下げたいんだけど・・」と言わざるをえないことは多々・・
テレビのライブ映像を見てても、モニターセクションが苦労しているなぁ・・というライブは多いしねぇ・・インイヤーシステムで難聴になるミュージシャンも出ているし・・う~ん・・

舞台機構調整技能士(音響機構調整)って?

え~っと、技能検定の話をしたので、この資格ってなんや?と言う人のために、また、まだ取ってないという人のためにもちょっと解説。

これは厚生労働大臣認定の国家資格です。建築士なんかと一緒ですね。

舞台機構調整という名称が示すとおり舞台、照明、音響の各資格が構想されていますが、現在は音響機構調整のみ実施されています。

演劇であれ音楽であれ、また、邦楽洋楽を問わず、舞台で音響に携わる場合に必要な知識と技能を有することを証明する資格で、資格取得後は技能士のいる店などという表示をしても良いことになっています。

なかなか、認知されなかったり、駆引きに使われた経緯もあり受検者が伸び悩んでましたが、近年、指定管理者制度の導入に伴い、公共ホール等で指定条件に入るなどから受検者数、取得者数ともに伸びつつあります。

公共ホールでは有資格者以外にシステムに触らせないという内規を設けるところも増えてきて、ようやく官公庁での認知度も上がってきましたね。

さて、現在動いている資格は1級、2級、3級があり、専科の卒業までに3級は取得できるようになりました。
また、卒業が確実な場合は2級の受験資格ももらえるようです。
それ以外は経験年数がある程度以上必要で、これも専科を出ていることで、実務年数が短縮されます。

検定自体は学科、実技(要素と実技に分かれる)検定があり、学科試験と要素試験は全国一斉に行われます。例年1月の末から2月の始めのようです。
実技はその実施県によって変動があるようですね。
秋田県は今年は学科と同一日に実施します。

学科は舞台全般に対する常識、知識、そして音響自体の常識のすべてが求められます。
舞台人たるもの浄瑠璃知りません・・じゃあ困るよね・・古典バレエ知らないじゃ困るよね・・と言うことでしょう。
また、他の部署の人と話が出来ないようでは仕事の協力をもらえないじゃん・・と言うことです。
そう言う意味では、専門学校を卒業したばかりの人が学科では有利かな?試験慣れもしているだろうし・・

で、要素検定
これは耳の能力を問う試験です。音質がどう変わったか、どの楽器のバランスが変わったか、使っている楽器は何か・・など各レベルに応じた設問があります。

実技検定は、各試験によって素材(演奏者)の構成が変わります。
試験時間も違いますね。

で、勘違いしている人も多いようですが、試験ではなく、技能士検定ですよね?
単に知識があるとかないとか、技術があるとか無いとかではなく、一緒に仕事を組むときに安心して組めるか?と言うあたりを見るもんなんですよ・・
だから、始末に負えない人は困るわけね・・
ですから、普段の仕事をきっちり、社会人としてまっとうにやっていることが求められています。
そう言う意味で、他の類似試験とは求めるニュアンスがちょっと違います。
そこら辺は理解してチャレンジしてください。

なお、ここの検定の詳細は各県の職業能力開発協会(以下能開)にいけば、入手できます。
なお、実技が音響の場合、一度に一人しかできないという特性上、非常に費用と手間のかかる試験で、その他各種事情からすべての県が実施できていると言うわけではありません。
これについても各能開にお問い合わせください。

でわでわ受検者の方、グッドラック!

マイク選定

ピアノにマイクをアレンジしてPAするなら、大概コンデンサーマイクかな?
オーバーヘッドもコンデンサーが多いかと思う。
まぁ451なのか391なのかとかはおいといて、なぜコンデンサーを使うのか考えてみましょう。

ダイナミックマイクの中でも57系のマイクはオールマイティで、結構弦楽器でも使える音質を持っている。

で、だからといってこれを生ピアノに使うとマイクの特性のおいしいところと音源との距離が離れすぎる。

つまり、いくら57がオールマイティとはいえ、基本的には接話型として設計されたマイク。非常に近接した状態で初めて良好な特性を得られる。
このマイクをあえて離して集音することも可能。仮バウンダリーとして使えることは以前に話した。

が、転がしのある状態で生ギターにセットするような使用法の場合、音源に近接できればよいが、ちょっと離れてしまうと転がしの音と取りたい相手であるギターの音とでは音量差がなさ過ぎるのだ・・
結果、フェーダーをあげられず、ハウりやすい状況が生まれる。

もちろん、適切なマイクセッティングが出来、ミュージシャンがその意図を理解して近接のまま演奏してくれたらこれは強力なツール。

しかし、すぐに離れたり、ミュージシャンがマイクにびびって離れてしまうような状況では結構厳しくなる。

で、コンデンサーマイク。
まず近接効果・・というより距離によって音量の減衰が少ない。
これはモニターとの関係で近接効果が弱いので、近いときはそれほど有利には働かないのだが、どうしても離れてとらざるを得ないときに助けられることが多い。
特に中高音の集音能力などで先のギターの場合など、マイク距離が離れてもモニターに負けずギターの音を聞き取れるようにしてくれる。

クリティカルな現場で、安全策をとって57系でと言うことも多々あるにしても、弦系に関してはやはりコンデンサーマイクが使いやすいと思うことが多い。まぁ451などはその特性上、オケの中での存在感確保に有効なのだが・・

そうそう、国営放送さんで邦楽を収音するのに38Bがよく使われる。
これってやはり邦楽ではカラオケみたいなマイクの使い方・・もっと格好良く言えばボーカリストのようにマイクを使うことはまず無い。
歴史的にマイクを使うと言う状況で発達した芸能ではないからなんだけど・・
こういうものを扱う現場ではマイクと演奏者との距離が離れることが多く、これで自然な集音が出来ることが必須なのよね・・
で、不思議なことに、邦楽は国産のマイクが概して良い音がする。欧米製のマイクでは妙にわざとらしくなるのよね・・
Sony、三研、プリモなどがしっとりと合うのよ・・欲を言えばAベロだとかがまったりと良い感じなんだが、デリケートでねぇ・・
三味や琵琶に関してはベイヤーのベロシティが例外的に良い結果が出る。ぱきぱき耳に痛い感じがでないのよ・・。
なぜこういう結果が出るのか、また欧米の音楽では欧米製のマイクが概して良い結果が出るのか・・ベロシティだとなぜ邦楽器の特に弦もので良い結果が出やすいのか・・音というものそのものに関する考察を深めてみる良い機会を作ってくれると思う。

会場の形を考える

さて、体育館と聞くと音響家もミュージシャンもあのひどい残響とかんかん響き渡る音響を思い浮かべ、憂鬱になるのではないかとおもう。
が、考え方をちょっと変えるとあれはあれで結構ましなのよ・・

難しいのはアーチ型の屋根でステージに対し蒲鉾が横になった奴。
これはどうセッティングしても変なところがつきまとう。結構大変な思いをしました。

で、一般的なプロセニアム開口に対し扇形に開いた客席構造を持つホールに比べても、通常の四角に作った体育館はそんなに悪くない・・

以前にもちょっと書いたような気がするが、通常の内装処理では音響的には鏡のようなもの。
吸音処理があるにしてもまぁちょっとスケルトンっぽい鏡かな・・と言うくらいのもので、と言うことは面の数だけ音像が出来かねない。(写像としてね)
まぁこれはホールの隔壁面が全部鏡だったならと仮定して想像して欲しい。
天井に複雑な乱反射構造を持っているホールの場合、恐ろしいほどの音像イメージができあがることが理解できるだろうか・・

これを如何に回避し、悪影響を少なくするか・・というのは実は結構大変で、生演奏ならまず生音の数倍の反射音でひどいことになるし、スピーカーを使うとこれまた時間的な整合が取れないので更に問題を複雑にする。

翻って体育館。
真四角の作りだと仮定すると正六面体では最大六個。屋根が切り妻だと七面・・これだけしか反射面がない。
だから定指向性スピーカーをリギングアレンジして対抗壁と左右の壁を避けてセッティングすればほとんどいやな残響や反射から解放された拡声が可能だ・・
生楽器の場合、原則的に全方向に音が出るのでこういうアプローチは不可能。
だから大音量の生楽器があっても音楽的明瞭度は改善しない・・よって指向性制御の甘いハイファイスピーカーがいくら強力でもPAシーンでは使い物にならないと言われるゆえんである。

さて、ウィーンの楽友館ホール、つとに音響的に優れていると定評がある。
形式はもろにシューボックス。六面体・・
これをまねて近年小ホール等でパイプオルガンを入れちゃった・・くらいにしてシューボックスタイプのホールが建設されているが、概して音が良くないと言われる。残響は多いは、耳にきついは・・と・・だからあきらめて講演会で使って更に評判を落とす・・ドラム入りのバンドでは鬼のよう・・

ここらへん、建築音響の設計者の頭を悩ます部分なのだが・・敵
が良くない・・オーストリア帝国の強大な財力、武力をバックに世界中から飾り職人を集め、壁や手すり天井すべてにバロックだかロココだかの飾り彫刻を施されているホールと、コスト削減の号令一下!プレーンな壁面材料で作られた近年のシューボックス形式のホールが同じ音になるわけがない・・

言ってみれば敵は音的には光に例えるとベネチアンガラスのホール。こちらはペカペカの鏡のホール・・
拡散の美学が違うんだろうなぁ・・
寸法だけ測ってきて更に壁面材料の物性を調べてそれで事タレリ・・と思ったところに大きな敗因が・・

日本の多くのホールで響きが良くない・・汚いと言われる一番の原因は、プレーンな壁面で面数が多いこと・・これにつきるように思う。

事実、うちの小屋で拍子木を叩いて録音したさ・・

波形を見ていて気がついたのだが、メインのピークの前に小さな波形がある・・これが実は生音だったのだ・・
それ以外は強大な一時反射であったとさ・・

ということは

 近年非常に主流となってきているラインアレイはもちろん、そのアレイの前に基礎となったスピーカーリギング(まぁ日本語でよくフライングとも言うが)によるFOHシステムの真のメリットを考えよう。

 通常リギングによるメリットは、近距離のリスナーと遠距離のリスナーの音圧差が少ない(どちらも適度に距離が取れる)ことが上げられる。
 また、観客の頭に吸われることが少ないため高域減衰が理論値に近づくと言うこともある。
 そして、会場内の音圧の平均化が図られる・・ここらが教科書に載っている話。

 実際、システム設計に当たって一番に検討しなくてはいけない点は客席内の各部でどれくらいの音圧を確保できるか・・が基本的なポイントになる。

 また、SIMなどのFFTアナライザでの分析では、強大な反射面がないか、共振ポイントがないかなどがチェックされる。

 が、管理人の考えるリギングアレンジの最大のメリットとは、相対的にリスナーの位置で直接音比率を上げられる、よって高い明瞭度を確保できる・・と言う点にあると思う。

 単純な6面体構造の会場で考えると、定指向性スピーカーであっても床置きスタックでアレンジするとそのカバー指向角の大部分が、天井や左右の壁、そして背面の壁に向かうことは容易に想像できると思う。
 このことの真の意味するところは、スタックアレンジの場合、床(1)、左右の壁(2)、背面の壁(1)と、合計4つの一次反射源が出来ると言うことだ。
 仮に一反射で10dbずつの減衰をしたとしても(物事を単純化するためわざと距離の因子は省略)、-10が4倍になるので+6dbで、直接音と-4dbしか音圧差が無くなってしまう・・これが明瞭度の著しい悪化を招くのは容易に想像できると思う。
まさか、何の対策もしないで手をこまねいているオペレータあるいはシステムチューナーはいないと思うので、大概そこそこに収めているのだけれど・・

さて、これをリギングアレンジする場合、明確な意図を持って隔壁面を忌避する・・するとどうなるか・・
殆どの直接音がまずリスナーに届く・・若干は床で一次反射をする。
この一次反射した後の音は床なり壁に最低2回は反射しないとリスナーには戻らない・・
仮に2回の反射でどれくらいになるかというと、-10db×2回で-20db(なんていい加減な!)これが左右後方天井で戻ってきて-20。4本分を加算で+6db。で、まだ-14db。
床反射は殆ど直接音との時間差はないので今回はネグレクトする。

どうだろう・・非常にいい加減な理屈ではあるが、かたや-4db、かたや-14db以下(2回以上の反射も多々あるため)と、対直接音で大きな違いがある・・

もちろん、これはかなりいい加減な計算で音響理論の専門家からはおしかりを受けるものではあるが、実際に体育館などのクリティカルな現場で注意深く応用すると非常に明瞭度の高いPAが可能になる。

とにかく、プランニングの段階で、スピーカーの公称指向角などを当てにせず、実際に高域における指向角を現場で確認し、壁面ぎりぎり(最遠部のリスナー基準が良いと思う)で確認をすること。とにかく、余分な壁面を嫌うこと(嫌う:回避する、よける)。

漫然と吊るのではなく、そう言う点に留意することで劇的に音は良くなるものだと思うが・・

管理人の例ではロックバンドからクラシックのヴァイオリンソロまでを体育館で行い、著名な指揮者から「いや~音の良い体育館ですねぇ・・」と言わせるくらいにはなった・・えっへん!^^;;ゞ

まぁ、冗談はともかく、スピーカーの設置にもっと細心の注意を払うことで、例えリギングできない現場でもかなりの音質の改善は可能だと言うことは頭の隅にでも入れておいていただければ・・

さらに踏み込んで

 さて、スピーカーのセッティングを検討しろの、位相をチェックしろの、時間軸をチェックしろのと言われても、どんなときにそう言う点を確認すべきか、調整すべきかを判定するのが分かりがたいと思う。

 そんなときに一つの判断肢を・・

・オペレートしていてフェーダーの反応が悪いとき
・EQを操作してもあまり音質が変化しないように感じるとき

 これは何が起こっているのかというと、オペレータのコントロールが効かない状況だと言うことなのよ・・コントロールを失った状況ね。

 この状況で何をやっても電気的におかしな音を作るだけで何にも良いことはない・・
 つまり、電気的に対策することは無い!ってことさ・・物理現象を電気でごまかそう!なんてことは無謀。
 物理現象は物理現象で解決する必要があると言うことだね。
 これが解決されて初めて電気的な操作が実際の音に反映するようになる・・
 EQもフェーダーもグンと効きが良くなるのよね・・
 スピーカーのセッティングがきっちりして、位相も時間軸も正しくなればようやくチューニングを始められるってわけだな・・

ナチュラルPAへのさらなるアプローチ

クラシックはもちろん、ジャズや邦楽など俗に言うPA臭い音を嫌われる仕事というのは結構多いものだ・・まぁ大手のカンパニーではあまりそうした仕事を取らないことが多いし、その出演団体の直属のオペレータだったり、あるいは小屋のオペレータが頼まれてすることも多いので、マーケットとして確立していない・・と言う問題もある。

とまれ、そうした仕事で生音を大事にと言われたときのアプローチ法の一つがディレイを駆使し、生音を先にリスナーに意識させることだ・・とは紹介した。
これは脳神経額の最新の研究でも明らかになりつつある。
脳は常に記憶にある引き出しで世界を認識する。従って先発情報の印象で後発情報を処理してしまう・・と言うことだな・・
鏡に映る自分は常に若くてちょっとやせている・・というのはそのせい・・分かるかな?

さて、生音を大事にしたアプローチで気をつけるべきことのもう一つ。

まず、フェーダーを下げた状態で演奏をしてもらう。
徐々にフェーダーを上げていく。
あるレベルまで来たとき生音が厚くなり、そしてPAの音に変わる・・
この生音が厚くなってPAの音が意識できるようになったレベル・・これを私の師匠であり友人でもある岡田辰夫氏は「規定点」と呼ぶ。

岡田氏のサイトは

http://okada-design.org/

へどうぞ

このレベル以下ではまったくPAをしていないのと同じであり(いやちょっと語弊があるか・・生音を濁らせているだけ)、この規定点を超えて初めて我々の仕事になる。
で、この厚みが増した状態、規定点で実は生音+3dbには少なくともなっているはず。だって生音と同じレベルにならないとPAの音は殆ど認識できないはず。(意地になってスピーカーに意識を向けるとかではなくね・・)
ということは、すでにこの時点で生音だけで気持ちよく音楽を楽しめる距離がルート2倍まで伸びている・・ということ・・
これにさらに3dbレベルを上げるだけで生音だけの時より2倍の距離まで、楽器の音がちゃんと届くという状況を作れる・・
この感覚、分かりますかね・・

オケや吹奏楽なら1000人クラスのホールなら本来PAは要らない。
が、ポップス的な曲もやりたいしいろいろ演出したい・・となると照明の必要から反射板が使えない・・
ホルンや打楽器が全滅・・弦や木管も飛んでこなくなる・・
こういうときにこそPAがさらりとお手伝いできないといけない。

バトンから絵面に影響しにくいマイクをさらりと降ろし、全体の音をほんのちょっと押してあげるだけでオケがぐっと前に出てくる・・その段階でもうOKなんだよね・・だれもPAしているなんて気がつかないけれど、オケそのものを楽しめる・・

邦楽や演劇もそう・・バウンダリーマイクをさらりと仕込んで役者の声を後から押してやるだけで声の通りがぐっと違ってくる。でもそれ以上にしてはいけない・・ポイントは声の通りが良くなった・・と言うあたりで止めること。音量が上がったというレベルの必要はない・・(まぁ実際には上がっているんだけどね・・普通の人は気がつかないよというレベル)
すると役者や邦楽器の演奏者のプライドも傷つけないし、後の席のリスナーも楽しめる。なにせ台詞がよく聞き取れないと芝居は楽しみにくいからねぇ・・

生理学的に聞き取れるかどうかのぎりぎりにしていると人間の耳は感度が上がる・・だからわざと下げることも仕事のうち・・という論理を仰る大家もいる・・
けれど、それは耳に障害を持っている方への差別につながりかねない気がするなぁ・・
やっぱり出来うる限りすべての人が楽しめるための基礎、は準備しておくべきだと考えるんですがねぇ・・

騒音性難聴を考える

レコーディングミキサーやPAのオペレータの中には騒音性難聴の方が結構おられる・・
かくいう管理人も子供の頃からの中耳炎やなんかの影響もあって左右のバランスが必ずしも良くないし、低レベルの音の聞き取り能力は健康とは言いかねる。まぁなんとか通常レベルでの聞き取りが出来るので仕事にはあまり差し障りはないんだけど・・

でだ・・騒音性難聴は90dbを超える音を長時間にわたって聞くと殆ど発症すると言われている・・まぁ細かい条件などは専門の方に聞いて欲しいのだが・・

なぜ発症するのかに関し、最近感じていることをちょっと・・

人間は使われていない器官は退化させてしまう・・という問題がまず第1にある。
まぁ退化というと進化論的な退化ではなくまぁ衰弱させてしまうと言う意味合いかな・・
例えば、関節は特に病気でない限り一生可動範囲は変わらない。が、体が固くなって・・とよく言われる現象は、実は運動神経の単純化によって引き起こされる。ある程度以上の可動域になると引きと縮みの神経が一緒になり、開こうとしているのに閉じる筋肉も一緒に動いてしまう。これが関節の可動域の狭くなる一番の原因。

これは人間の諸器官すべてに同じ事が言え、耳についても同様。

我々が仕事で大音量を聞くとき、実は大音量の中の小音量の聞き分けをしている事が多い。つまりマスキングを嫌って大音量の中のノイズとか、小音量楽器のバランスを聞こうとしている。これは言ってみれば逆マスキング、乃至は大音量にすることで人為的なカクテルパーティ効果を出そうとしているのだと考えられる・・
このことは大音量部分は聞かない、あるいは聞こうとしない・・という習慣といえる。
これがメタル系のバンドとなると130dbにも届こうとする様な大音圧・・まともに聞いていたんでは後で耳鳴りで苦しいので耳栓でカバーしながら・・聞こうとか、対策を取ることになるが、それでも体を突き抜けてくる大音量・・で、そんな音は出ていないという心理操作で"慣れる"ことになる。
つまりは大音量を聞いてない・・

聴覚神経が一生懸命脳に信号を送っても脳がそれを受け付けない状態が長く続くと、聴覚神経が使用されていないのと同じになり、聴覚神経は「ああ・・いくら稼いでも脳は受け取ってくれないのね・」とさぼり癖が付き、結局鞭毛の脱落を発生させる。こうなるともう元には戻らない・・

つまり、大音量下にさらされることで、聴覚神経の信号を脳が受け取らないという保護機能が働き、結局聴覚神経に回復不能な退化・・を発生させると言うことなんだろう。
これが騒音性難聴の本質でないかとにらんでいる。

ということは上司の小言を聞かない!という態度も難聴を誘発するんではないだろうか・・^^;;
お年寄りによくあるように思うのだけど・・

などと言うことを考え、普段はなるだけ人為的な音を聞かないようにしている。
車がちょっと悩ましいなぁ・・
自然の音に耳を澄ませる癖をつけると、人為的な音を聞くのが苦痛になるというのはあるかも(人に依るか・・)
都市部なら環境音の細かい音に気を使うとかね・・

まぁ、耳の保護の意味でも虫の羽音やら風の音、せせらぎの音などを沢山、注意深く聞く癖をつけるのは良いことだと思うこの頃・・

ポン出し機器を考える

うひゃ~、記事を書く前に投稿してしまって慌てて直すことになっちまったい!って言わなきゃばれないか・・^^;;

さて、お芝居では効果音の送出に、踊りでは音楽の送出にどうしても欠かせないのがポン出し機材。
昔は圧倒的にオープンリールのテレコが多かった。
踊りでも流派を持っているお師匠さんの所はオープンリール。
でも、演歌をバックに踊る新舞踊が流行ってから一気にカセットテープ素材が増えたこともあってカセットテレコも多かった。

CDの出始めの頃は、CDを挿入してからのロードにえらく時間が掛かったこともあって、とてものことに本番最中の入れ替えに間に合わない・・
で、結局CDをオープンやカセットに録音し直して使ってたなぁ・・
先にも書いたけど、この再録の時にレベルや音質を調整しておける・・これはメリットだと思う。再録音のね・・出し物の性質に合わせられるわけ・・

で、CDが主流のメディアに踊り出した頃、MDが出てきた。
これ・・便利なんだが、音がちょっと・・癖がある・・明白に良くないと明言する人も・・わしなんかはCDもどっこいどっこい・・などとひどいことをいってるけど・・^^;;

問題はときどき大ポカをやらかしてくれる・・TOCデータがすっ飛んで何もなくなってしまったり、いざ音を出すぞ!というときに読み込まなかったり・・途中で止まってそれっきりそれっきり・・とか・・
また、業務用の精度の高いものほど他社ので録音されたものを受け付けない・・という問題も・・

で、なんやかやと、民生用の安いデッキが安定していたりする。
ところが、民生用のリモコンってポン出しにおよそ向かない作りなのよね・・

ボタンは小さいはグニグニ感触は悪いは、スタートしたんだか止まったんだかさっぱりわからねぇ事といい・・だから、舞台を見ずにデッキのディスプレイに目線が貼りついちまう・・「お~動いてる!」なんて・・

この点業務用の大型のMDは違うよね・・DENONだとかOTARIだとかのロケーターボタンは確かにしっかりとした感触と動作をしてくれる。
でもどちらも他社MDに対して繊細すぎるのよね・・

さて、MDでなければ・・て、MOもあったし業務用のサンプラーなんてのもあるんだが・・どちらも流通が細くいつまで使えるのかがちょっと不安。高いしね。MOはメディアコストも高い。

CD-Rは最近はずいぶん良くなった。音も安定度もね・・高速焼き込みしても目立った弊害はなくなってきた。
が、CDプレーヤ自体がポン出しをあまり考えていない作りのものが多い。
DENONの奴で業務用があったけれど、これは確かに使い易い。曲頭をメモリーに読み込んでいるので、タイミングもまず思い通り。
が、もう売ってないし、CD-Rってちょっと変更があるたびに焼き直し・・メディアがもったいない・・値段の高い安いではなくね・・

コンピュータ・・こちとらなんやかやと四半世紀つきあっているし便利は認めるが、失敗の許されない現場に持ち込みたいと思ったことはない・・WinにせよMacにせよ・・BSDやLinuxにせよ・・
なんとしても・・といわれたら3台並列運転くらいは考えたいなぁ・・
いろんな事ができすぎる・・というのは余計なことをやらかす・・て言うことだしね・・専用機化するならポン出し専用マシンの方がコストも安いと思う・・
また、専用機化したコンピュータって・・なんかすごく悔しい・・とっても悔しい・・^^;;
それと、画面を見るということ自体LIVE向きといえないと思うんだが・・

で、HDDプレーヤやシリコンプレーヤ。
近頃はお値段も安くなったし、容量も長丁場のイベントにも耐えるほどになってきた。HDDなんか容量がありすぎるんじゃないの?というくらいだし・・
音質も結構良い・・非圧縮ならCDも超えられるかも・・
が、ポン出しで使うには3点ほどの難点が・・
�� 操作系が小さく独特。
�� オードポーズ機能がないものが殆ど・・(垂れ流し用の設計)
�� ディスプレイがないか小さい・・膨大な曲数が入るのに曲名が分からないのでは・・

さらにHDDに関する私の危惧を・・

昔のオープンテレコやカセットの時代の大型モーター機器は、不具合が出るとき、必ず予兆があった・・妙な音が出始めたとかワウが多くなったとか、動作音が大きくなったとか・・
これによって、メンテなり修理に出すタイミングを計ることが出来たのよ・・

が、今のマイクロモーターって奴は予兆も何も無しにいきなり"ガキっ"と死んでしまうことが多い。
つまり本番中にさっきまで快調だったのに・・いきなり死んでも文句が言えない・・という問題があるのね・・しかも誰も分からない・・SMARTなんか当てになるかい・・

だから失敗できない現場にマイクロモーター系の機器を持ち込むのは嫌いなんだ・・CDだって信用ならない・・MDはもちろん。HDDは十数台自宅に転がっていたくらい・・

さて、今後の展望を考えるとき、メディアはシリコン系でどんどん容量はアップして値段はどんどん下がっていくと思う。
で、思うのだが、メディア(ドライブ)に必ず操作部、I/O、コンバータがくっついてないといけないものか?
IEEE1394なりUSB2.0なりのポート経由でドライブ部が外付けできれば好きなメディアを条件から選べばいいじゃん!というのが最近の考え。

今の目標はシリコンメディアのRAID5での運用。
各スロットにエラーランプが付いていて、メディアエラーのあったメディアをホットスワップで交換してしまう・・という考え方ね。

本番中でもトラぶったらそのメディアだけ交換すればノンストップ!って良いと思いません?
それにロケーター部分が、大きさの制約無しに作れたら、操作感や信頼度が格段に向上すると思うしね・・コストも存外安く出来そう・・

基本的な要素はロケーター部(これは各自の好みがあると思う、従前のDENONスタイルが良いとかキーボードにしてくれとか・・USB2.0接続が汎用性があって言いと思う)、コントロールセンター部(ポン出しとしての機能をEP-ROMかなんかでバージョンアップ可能にすると便利?)、メディアドライブ(CD-RでもDVDでもHDDでもSATAとIEEE1394とUSB2.0で繋げるもの・・シリコンメディアなら市販のカードリーダーも使えれば安いよなぁ・・)だけだよね?
コントロール部にはちょっと大きめのLCDディスプレイをつけてさ・・

かわさき音楽祭

知人がこういう事に関わってますので、紹介。
まぁアマチュアで既製の曲をえらく達者に演奏する・・と言うことは有るけど、オリジナルは難しいよね・・
まして発表となると・・

それでも新しい才能が出てくればうれしい。

以下知人の別サイトでの書き込みからの引用

かわさき音楽コンテスト
  募集要項について載せてみます。
 http://www.ongakunomachi.jp/...

■ 募集内容
  インターネットでの音楽コンテスト
■ 応募条件
  オリジナルの楽曲と演奏
  オリジナルであればジャンルを問いません。
  自作の作詞・作曲・編曲による楽曲
  音楽事務所などに所属していない演奏者による演奏
  自費により録音された楽曲
  他者の権利を侵害しない楽曲・演奏
■ 応募資格
  性別・国籍・年令不問(川崎市外からの応募も歓迎)
■ 選考方法
  インターネットでの投票 システムによりランダムに選ばれる
  2曲の対戦形式・月末時点の勝率にてランキング決定
■ ラジオ出演・着うた配信などの特典
■ ランキング上位者
  情報誌「Kawasaki Music Magazine」
  「神奈川新聞」などで紹介(予定)

■募集締め切り:2月20日(3月度分)
※直接下記トーリューモン住所に送付してくだされば、
 2月27日到着までは間に合います!
 
 コンテスト期間:3月1日~月末  結果発表:4月1日
■ 応募方法
  CD (CD-R)と応募フォームに必要事項を記入して郵送
��応募いただいた作品は返却いたしません)

■ 送付先
 〒211-0006 川崎市中原区丸子通1-640-1F
 株式会社トーリューモン
 「かわさき音楽コンテスト」Y係
 
 ご連絡はtoryumon.nagasawa@gmail.com 長澤までお願いします。

デジタル伝送

2007/2/14と15に福島県は喜多方市でFBSR会技術研修会が開催された。
今年のテーマはデジタル伝送で、心と心をつなげるか・・(意訳)というもの。
とかく技術論に偏ってやれデジタルがやれアナログが・と言う話になりがちであるが、それよりもっと大事なものがあるでしょ・・と言うことが原点。

講師の岡田辰夫氏の絶妙の進行とサウンドに酔いながら、考えた。
ノイズの問題、長距離伝送の問題を考えたとき、今後デジタル化は交代すべくも無いことである。

が、たまさかステージに展示されていた実働のMIDAS PR-04シリーズの卓の分厚い音と聞き比べるとアナログの底知れない実力を認識できるのよね・・

舞台は常に生音と拡声音のせめぎ合いの場である。

数年前のデジタル検証の際、演奏中に舞台から客席に降りていったさ・・
舞台上の生楽器の音空間から、舞台端の階段に足を降ろそうかというその瞬間に明白に音が変わる境界線があったことを思い出す。首半分くらいできっちりと分かるその違いに驚いたものだ・・
アナログではそんなことはなかったからねぇ・・

つまり、生音とデジタル音は溶け合わない・・とその時は思ったのね・・

レコーディング業界ではもうあまりこういう議論は聞かれない・・
確かに・・スタジオと調整室は区切られているからねぇ・・
でも、舞台は必ず生の楽器がそこにある・・

ここ2年くらいの製品はさすがにそれほど違和感はなくなった・・

でもやはりどこかに根強く混ざりきらない要素は有るのよねぇ・・

もちろん、デジタルリバーブをさんざん使っておいて何を今更・・と言う議論も十分理解できる。
実際私も使っているし・・
でもね・・やっぱり140とか250とかの音って良かったなぁ・という抜きがたいイメージは残るよね。(管理は大変なんだが・・)

今回、アナログのオーバーレベルでのナチュラルディストーションも参加者は体験できた。
思いっきりつっこまないと体験できない危ない世界。
これはアナログの特権なんだな・・
デジタルだとクリップしたらおしまい・・音が無くなるか盛大に歪むか・・デジタルリミッターでごまかすか・・

じつはこのナチュラルに歪んだときの音が、実に気持ちよかったりする。

悩ましい話だなと・・

皆さんはどう考えますかねぇ・・

ミキサーの仕事って

ビット=6db

これはPCMデジタルでのダイナミックレンジの計算を簡易的に行うときに使う換算式。
だから16ビットは96dbになる。
これはアナログレコードの30db程度から比べると十分に大きいし、問題は起こらない!とSONYとフィリップスの技術者は考えたらしい。まぁ今のCDの企画だな・・

通常人間の耳のダイナミックレンジは130dbといわれる。

これはもう何とも聞き取れない最低音を1dbとしたとき、これ以上は耳が痛くて耐えられない・・というレベルとの差・・とみんな説明している。

が、音響の現場で活躍している諸氏との話から浮かんできたこと・・

おそらく人間の耳の単位時間ダイナミックレンジは40db程度・・ここで言う単位時間とはある程度の実用的な短い時間と解して欲しい。

ヘビメタバンドを聞いた後では通常の会話70-80db程度ですら聞こえなくなるのでニュアンスは理解していただけると思う。

つまり、人間は40db程度のダイナミックレンジを弱音を聞くときにはその領域をスライドさせて聞くし、大音量時もそう・・大音量側にスライドさせて聞いているのだな・・どうも脳の中にそうしたゲイン調整のような機能があるらしい。

これがまず第1の常識の嘘

次に、アナログレコード時代を知っている人はちょっと思い出して欲しい。
仮にノイズのひどいレコードがあったとして、それに埋もれがちでも弱音部はちゃんと音楽として聞き取れた・・

仮にノイズレベル=楽音レベルであっても、音楽として成立しているのよね・・
これがデジタルならどうだろう・・特に再弱音に近いところでは?

次にマキシマム近辺で何が起こっているか考える。

アナログレコード、テープとも当然クリップし出すが、ひずみが暫時増加するにしても音がとぎれたり聞くに堪えないノイズに化けたりはしない・・
音色の変化を伴いながら音楽性を保っている・・
従ってアナログ媒体のダイナミックレンジというのは、実用域として極めて広いといえる。

さて、先般行われたFBSR会技術研修会で、1977-8年頃のMIDAS製のミキサーが実働展示されていた。
モニターとしてセットしたSXが全く暴れもなく、non-EQでボイスにチューニングされたのにも驚いたが、やはりがんがん突っ込んだときのぶ厚くなる音がものすごい。
規定の0VUで+4dbmが出るものとして、ピークががんがん点いている状態にすると+30dbmに達する信号が出ていることになる。

これを歪ませないでデジタルでカバーしようとすると、規定レベルをどこにするか・・という問題がまずつきまとう。
デジタルマックスを0とした場合、このピーク分を逆算すると、平均レベルを-30の所に持ってこなくてはいけない・・
まして、アナログはこのピークを打ってもちゃんと聞こえている・・^^;;
こういうところが悩ましいよね・・

さて、この伝で通常の16ビットオーディオを扱うと-30dbだと66dbの通常利用幅ということになる・・
また、ノイズフロア領域では楽音とノイズの判別が付かなくなる・・と言う点もあるしね・・
個人的には160db位のダイナミックレンジにならないと真にアナログを凌駕できないのではないか・・と思うのね・・
特にサミング部分などではもっとスペックが要求されるかも・・と思いますね。
なんと言っても加算部だから・・

そうそう、もう一つの利点

クラシック音楽の世界(というか特に日本ではと言うべきか)では、PAは蛇蝎のごとく嫌われることが多い。
各楽器の前にマイクを立てたりすると烈火のごとく怒り出す人もいるほど・・

まぁ気持ちとして分からないわけでもない・・

で、その一因となっているのはPAの不自然さ。と言われる。とくにマルチマイク収音でのね・・
なぜ彼らがそう感じるのか、その原因を考えてみる。

一つには再三話している前後定位(奥行き方向)の不自然さの問題。ディレイ無しで拡声するとスピーカーラインに音像が定位するので距離感が不自然になり、かつ楽器が巨大になった印象になること。
まぁこれはディレイを噛ませることである程度以上解消する。

次にマルチマイク収音でのミキサーの持っている致命的な問題。

アンサンブルが違って聞こえる・・ということ。

これはワンポイント収録では起こらない問題だが、マルチマイク収録ではどうしてもミュージシャンの作ったバランス感覚とずれて聞こえてしまう・・ダイナミクスの変な強調とかが起こってしまうということ。

なんでこういう事が起こるのかを考えてみる。

通常のアンサンブルで楽器が1本の場合からユニゾンで2本に増やすと、3dbの増加・・これはかなり整合性の高い場合でね・・普通はもっと落ちる。

当たり前だよね・・一人一人音も個性も表現方法も少しずつ違うんだから・・

10名のアンサンブルなら理想で10dbの増加。こういう音量の変化感をクラシック系のミュージシャンは身につけている。当然アンサンブルをどうコントロールするかが自らの表現の根幹に関わるのでうるさくて当たり前。

さて、これをマルチマイク収録でミキサー上で行ってみる。
楽器一本から2本目を追加したとき、ミキサーという代物は電気回路的には電圧加算回路の化け物なので、2本目のフェーダーをあげたときに6dbの増加となる。
10本フェーダーをあげると20dbの増加。
パワーアンプは電圧信号を受け取って電力に変換しているので、6db上がるとそのままスピーカー出力も6db上がる。20db上がると20db上昇。
これは音圧計を使って実験済み。

仮にソロ楽器ならその演奏表現に伴う音圧変化はそのままマイクの出力に変換され、スピーカーから出てくるといえる。
が、アンサンブルの場合マルチ収音では・・

これがおそらくクラシック系のミュージシャンがマルチ収音、そしてPAを忌避する非常に大きな原因となっているのではないかと思う。

空間での音合成もウーハーの密集配置で同信号だと6db合成にはなるのだが、楽器ではあり得ない。

分かりますかねぇ・・イメージ・・

さて、では解決方法はないのか・・

電圧加算型のサミングアンプを止めればよい。
つまり各モジュールからの信号を合成時に倍で3dbずつという演算をするミックスアンプ(ここではサミングアンプとは言えない)があればこの不自然さはかなり解消される。よね?

もっともパバロッティみたいに積極的にPAを自らの表現に取り込んででも・・多くの人に自分の音楽を聴いてもらいたい、という欲求のあるクラシックミュージシャンがもっと増えないことには、どこも開発してくれそうもないけどね・・^^;;

おっと

仮に70dbの音が出ているスピーカーを音源に実験してみよう。(あ!複数用意する必要有り)
一本のマイクで一本のスピーカーを収音する。
で、後でスピーカーも一台追加することを前提にその後から来る一台も想定し、マイクから等距離で配置できるようなマイクセットをして、まずゲイン調整。
0VUを指すように調整する。

これで準備完了。

さて、この状態で同じ音の出るスピーカーを追加する。
メーター読みは3dbアップする。

この状態は楽器が2倍になったと同様と考えられる。

生の音が2倍になったイコール3dbアップした。覚えてね・・

次に同じ配置のままマイクをオンマイクにセットし直す。
各スピーカーの前にね。
で、スピーカーからの音量は変えないことにして各マイクのゲイン調整を行い各チャンネルごとに0VUを指すように調整。
フェーダーは一本ずつ調整しましょう。

んで、まぁわかりやすいようにどちらもグループの1に出力される様にしましょう。

これでフェーダーを2本ともあげるとグループの1には6db上昇した出力が出て行く。

最終の拡声に使うアンプは3db入力電圧が上がると電力も3db上がる。
スピーカーから出てくる音圧も3dbのアップ。
6dbでも同様。

さて、マルチマイク収音では楽器が増えたときの結果が違っている。

まぁ、物事何でもこんなに単純ではないけれど、それでも基本的な現象・・としては認識してもらえると思う。

と、こういう実験を以前やったのよね・・
これが先の話題につながるんだけど・・

反射板がない!

クラシック系のイベントだから必ず反射板が使えるというわけではない・・ミュージシャンには結構辛いのだけど・・

まずはオペラ・・膨大な天を突く舞台セット、照明などによってステージ上は反射板のはいる余地はない・・そもそもステージ上にオケがいる場所があるか・・結局オケピットでの演奏だとこれまた反射板とは無縁となる。まぁ・・ある程度音響的に意識した作りのピットもないわけではないけれど・・決して満足のいくものとは言いかねることが多い。
そして、同じくバレエ(球技ではない)・・

サントリーホールなどのワインヤード形式のホール・・リスナーのための浮き雲などがある場合もあるが、リスナー用なので、演奏者にとってはメリットはない・・

近年、オケであってもポップス系の曲だけのコンサートも多々・・演出上、照明効果を期待する場合反射板が使えない・・

本来、ホール自体も反射板も人為的にハードとして作られたものなので、自然に・・と言う言葉とは相反する要素が必ずある。
ゆったりとした残響をたっぷり楽しめる曲と、近現代曲のように非常に速いテンポでリズムが重要な曲とが同じハード上で楽しめるというのは幻想だろう・・

そして、反射板や残響を語るとき、常にリスナー側から語られるのだけれど、肝心の演奏者はどう聞いているのか?
楽器本体への影響は?などが語られた文献を殆ど見たことがない・・

おまけにクラシック専用のホールとして作られても、結局はそのイベントの7割がドラムセットの入ったものだ・・と言う統計もあるようだ・・
するってぇと7割は設計目的外使用・・となってしまい、設計者側からも利用者(演奏者・主催者・リスナー)からも不評なものとなってしまう・・

で、反射板だ・・

本来こいつはなんのためにあるのか?その機能は?と考える。

第1義にはステージ上の音を集め、観客席に放射する。
特に打楽器、ホルン、チューバ、弦楽器の一部などは観客席とは違う方向に大きなエネルギーを放射するので反射板がないと、効率が悪く、また、音楽バランスが取りにくい。

第2義には、ボックス構造が出来ていると、低音などで共鳴効果が発生し、音が変化する(良い方向と言えるかどうかは微妙)。

第3義には、演奏者に対するモニター効果が期待できる。
まぁフロントサイドスポットの出っ張りなんかも使える人は使っているようだが・・反射音を聞いて自他の音を聞き分けながら演奏している人は多い。

第4義、これがわたしが再三にわたって述べてきたことだが、反射音が楽器の音と共鳴し、楽器自体の音を厚くする(まれに逆効果の場合もあり)。大概の演奏者はこの状態で自分の楽器を認識しているようだ・・
まさか無響室での音を自分の音だと思っている人はまずいないだろう・・

反射板という存在が必ずしも良いかどうかは評価の分かれるところで、オケだとみんな結構あきらめて反射板の最初からセットした状態で演奏を始めることが多いが、ピアノ録音なんかだと、どうしても最良の位置を探してカットアンドトライを繰り返さなければいけない・・
ということは、反射板の中のステージ内でも多々良い響きの場所、悪い響きの場所があると言うことだ・・
言い換えるとオケなどではかなり諦めていると言うことでもある・・

このことは、反射板とホールの設計からどうしても構造、材質、寸法から来る固有の共振モードがあり、これからは逃れられないことを意味する。

でだ・・なんでこれほど問題が大きいにも関わらず反射板にこだわるミュージシャンが多いのか・・ってことだね。
先に挙げた第3義と第4義が大きいのだと思う。自分も演奏する立場として考えた時ね・・

で、反射板が使えない・・もしくは無い・・と言うときに、第2義はちょっと困った問題を生じることがあるので、それを回避しつつ第1,3,4義をリスナー、演奏者(必要であれば役者や踊り手)に提供できる方法はないかと考える。
ちなみに残響付加装置の類はこの場合は残念ながらくその役にも立たない・・(汚い言葉でごめんね)
演奏者にとって残響とは演奏を止めたときに聞こえるもの・・特に大音量時には・・それ以外はあまり関係ないのよね・・特に超絶技巧を要求されるような楽曲の場合、残響どころではない・・というのが正直なところだろう。

で、こうした問題をどう解決したか・・気が向いたら書いてみます。

ホールの価値判断

日本ではオケや劇団主導のホールというのはほとんど無い・・
特に村単位くらいでおらがオケ・・とかおらが劇団・・とはなかなか・・利賀村の国際演劇祭が話題になったが、あれが利賀村の方達だけで作り得たか・・というと・・かなり難しかったのではないかな・・
やはり芸術はキーマンが必要で、その狂気に皆が引っ張られるのだと思うんだけど・・

さて、表題である。
東京フォーラムの(だけではないが)使用料金が高いと言って某オーケストラが陳情を出したことがあった。
十分に同情する。
が、現実に経営的に物事を考えたときどう評価しようか・・難しいんだよね・・

東京フォーラム・・建築総額は2000億にも上ったと聞く(伝聞なので正確ではない)
まぁあくまで参考計算と考えて欲しいのだが、残存価額を無視して、2000億を通常のコンクリート建造物の耐久年数50年で割ると年間40億。まぁ定額法だな・・

んで、実稼働日数250日で割る。
一日1600万・・

大小ホールと会議室併せて8イベントくらいは開催出来るみたいだが・・
一日1600万かい・・これは一般管理費などの経常経費は入っていない。
これって民間だったら絶対にやらないね・・
だから・・だから設置者の意志・・これが大事なのよ・・これで何をやろうとするのか・・

現実問題。小屋が採算を取ろうとする場合ロングラン興業に限る。劇団四季さんはそれで何とかしのいでいる。

各県の県民会館クラスでも、支出に対する収入は貸し館に限ると10%程度。自主事業を行って初めて例えそれが赤字でも比率としては近接する。黒字でも全体としては大きな赤字には違いない。
ロングラン興行をすると宿泊はともかく足代とギャランティ美術などの費用が割安になってくる。
これに主力を置いてこそ初めてトータルで黒字という状態を作れる。
商業演劇の劇場などはこれ無しには成立し得ない。(単独館として黒字を出そうとした時ね)
通常は親会社があってそこそこの資金補填があって成り立っているところが殆ど・・まして公立施設では赤字垂れ流しでも文化振興という名目を掲げて文化面での社会還元、文化の育成を計る・・と言うことにしている。

でも、利賀村の例でも挙げたが、結局キーマンの存在が欠かせないのよね文化って・・これは合議でどうにかなると言う物ではない気がするのよ・・

だから、建物を建てればそれでその自治体の文化が何とかなると思っているあたり・・なんだかな・・

その後の・・いや本当は建てるもっと前のキーマンの育成と確保・・これこそが大事なんだけどね・・

ディレイを忘れずに

さて、サラウンドに関する話題が盛んではあるが、SRではあまり活用する機会がない・・
どうしてもスピーカーからの距離が均等な方がその効果を楽しめるし、特に広大な野外やアリーナでは収拾が付かなくなるためだ・・

が、ライブ感を残しておきたい・・ということでのノイズマイクなどの収録目的ならライブ会場でもサラウンドでの収録はあり得る・・
とはいってもあまり録音チャンネルに余裕のないSRオペついでの収音などで使えるかなとちょっといたずら的に考えてみた。

MS収音が双指向性のマイクがあればマトリクスを工夫することで実現できることは以前に記した。

なら、双指向性マイクをA-BでSR席の両脇に立てておき、各々正相と逆相を取り出したら、少なくとも前後4系統の音が録れるよね?2chだけで・・

反則かなぁ・・

一般のホールなら側面反射の効果を特に収音することを目的に、前後方向に2本立てて、横向き設置し、同じく正逆を取り出すことで、側面反射を特に意識した収音が可能になる・・これをダイレクトに卓から取り出した音とミックスするだけでも結構な効果を得られるように感じる。

とはいっても、私もまだテストしてないのであれですがね・・
だから・・雑談なんだが・・

今手元にGベロが二本・・ケーブルを変えたりコネクターを変えたりしないと使えないんだけど、これでテストしてみるかな・・
ステューダークラスの70db位までローノイズでゲインの録れるプリアンプかミキサーが必要なんだけど・・これが一番の難関かな・・

生存への音響

え~、今現在私の住んでいる秋田県はものすごく吹雪いています。
で、つらつら思ったことで、まぁ舞台音響とは直接関係ないのかも知れませんが・・

スキー場等で突然の天候急変があった場合、完全なホワイトアウトで方角もなにも分からなくなる場合があります。

こういうときに方向性を強く打ち出した音響システムで、この音が聞こえているうちはコース内!しかも聞こえる方向は脱出方向!・・この音になったらどちらにコースアウト・・
みたいなシステムは組めるのではないかな・・

実際ホワイトアウト状況ではまったく視界はあてにならない・・こういうときに指向性制御技術を駆使し、あるいは超音波スピーカーなどを駆使することでサバイバル情報を与えることが出来るのではないかと思ったんだけど・・

まぁ確かに防寒具のフードをした状態で、しかも強風下での伝達は大変ではあるけれど、光よりはずっと到達能力を持っていることは間違いないはずだよね・・

一人突っ込み

え~・・ケーブルに関してはマニアックな方々が結構おられるので地雷かなと思いつつ・・所感を述べたいと思います。
取り敢えず、カナレクラスの製品を使っている限り、ケーブルにこだわるよりするべき事が沢山無いか?と言うのが基本。
スタジオならもっとマイキングや楽器自体のコンディション調整、演奏技術の向上、表現力の向上など、やるべき事は沢山あると思う。

ハイファイシステムで聞く3千円のギターでの下手な演奏より、軽トラックのラジオから聞こえるクラプトンの歌の方が遙かに感動的だ・・なんてことはざらにあるよね?
こういう事をもっと考える方が建設的だと思う・・

と言う前置きを置いておいて・・

さて、よく音がよいと評判のベルデン・・
特性を計ると誘電率もF特もそれほどずば抜けてはいない・・
が、概して評判がよい・・なんででしょ?

管理人の持っている昔のゼンハイザーのヘッドホン・・
今時の物よりよっぽど音がよいし聞き疲れもしない・・
が、付いているケーブルは「え?」っと思うほど細くて華奢・・

なんででしょ?

通常表面効果で高周波ほど表面しか流れないので、撚線でないと高音がなまる・・とは、昔の教科書にもよく出ていた。
が、絶対抵抗値は太い線がよい。
近年はそこを走る電子の挙動がどうたらで、無酸素銅が・・とか、単結晶がとか、或いはアモルファス?などいろいろ騒いでいるけれど・・そうそう、半田が良くないなどと仰る方々も・・ICの中とか基盤の半田はどうすんじゃろ?と思うんですが・・

さて、ここで愚考。

モーターと発電機は必ず対で発生する物理現象。
導体内を電気が通る・・これ自体でまず磁界が発生する。これにタイムラグ(1/4位相分)が発生するところにまず悩ましい点・・
磁界に比べ電気は常に早く変化していく。
よって、磁界と電流にはずれがあってそこに電磁力による導体の微振動の可能性が発生する。
この現象、より細い撚り線の方が大きな影響が出る物と思われる・・
だよね?単線じゃ磁界もワンループだし・・

でだ・・導体が動いた・・とする。
するってぇと磁界はまだ残っているので、こんだぁ起電力を生じる・・
この起電力はお約束のように電流を止める方向で発生する。(だから逆起電力と言うんだけど)
モーターの突入電流と、その後の安定電流に至る経緯と一緒だな・・それほど強大ではないにしても・・

これが音をなまらせる一番の原因なんだと思う。

ということはだ・・柔らかい線ほど動きやすい・・と言うことは音がなまりやすい・・て事にならない?

だから、単純に固い線で固い絶縁物で固めたケーブルの方が音がよいと感じやすい・・とは想像できないかなぁ・・

ベルデンのケーブル・・これが又固いんだ・・
なんで固いのかというと、ミサイルなどの強大なGの中でケーブルが伸び縮みしちゃえらいこった!という設計思想なんだろうね・・元々が軍用だったんだから・・
だから音がよい・・と。
先に挙げたゼンハのケーブル・・これまた固いのよ・・
んで、体に触るとカサコソちょっとウルサイ・・でも音がよい。

国産のヘッドホン類は皆ケーブルが妙にしなやか・・う~ん・・ここらでもしかして決定的に違ってないか?

ということで、個人的にはあまり実験する気力はないが、スピーカーケーブルなんかもIVの6本より線(鬼のように太くて固い)と細いより線を編んだようなケーブルを作ると一番音が良いんじゃないかなぁ・・
出来れば撚り線は半田かなんかで固めてしまう・・とか・・
どうですかね?

機材能力の引き出し

さて、基本中の基本に属するとは思うのだが、しばし抜け落ちていたりするポイントを・・

まず、余分な音、音楽にも無いような音はエネルギーを無駄に消耗するだけ、あるいは音を濁らせるだけ・・と言うことをチェックしましょう。

ここはオーディオマニアをしてはいけない・・(いやオーディオマニアが良くないなどと言っているわけではない・・経済効率を考えないとビジネスとしての音響が成立しないからね・・)

楽音としての低音成分は、超巨大和太鼓などの再生をしようなどという無謀なことを試みなければ殆ど40hzより下の音はない・・ウッドベースの最低音でさえ40hz近辺。

これより下の音は、仮に出ていても雑音に近い物になる。

低音成分は特にアンプのエネルギーを大幅に奪うので、低音に電力が投入されていると、上の帯域全部にエネルギー不足・・パワー感の抜けを生じさせる。ブレーカーダウンの大きな原因でもある。

出演者の不用意な動作でマイクが倒された場合でも、ハイパスで低音を切っておくとスピーカーを飛ばしたりアンプを飛ばす確率を下げられる。不用意にフル帯域を通しているとそうした打撃音で直流に近い成分が出るとアンプースピーカー系へのダメージは計り知れない。

「スピーカーから聞こえてない音は無駄!」

これはよっく考えて欲しい。
何度でも・・

例えば生ギター
ソロの時は40hz位まで下の帯域をのばしておくと、実にアコースティックな気持ちよい音がする。特にプレーヤーは自分がいつも練習しているときの音がそれなので、そう言う音を要求しがち・・

いいよねぇ・・ソロの時は・・確かに・・

でも、アンサンブルの中にはいるとギターの要求される帯域はもっと中高域にシフトする。

ベースがいたりすると低音はベースが受け持つしね・・

で、低音弦が聞こえるということと低音を出さなければいけない・・と言うことは意味が違う。

アンサンブルの中では、生ギターが入っている・・というアレンジ上の意味をしっかり考え、必要とされる中高域の帯域に絞り込んだ方が、アンサンブルの中で生ギターは浮き上がってくる。

それ以外の帯域は他の楽器とぶつかり、音を濁らせる原因になるだけ・・

もう一回繰り返す。

「スピーカーから聞こえない音(アンサンブルの中で)は、サウンドを汚くしている音」

このことを各楽器に適応して、厳選すると素晴らしく分離の良いミックスが可能になると思う。
十分に意識して欲しい。

さて、こうして努力してもなかなかすっきりと音がまとまらない・・混変調っぽい感じがする・・と言う場合、二つの原因を私は考える。

一つはスピーカーの置き場所が悪い、置き方が悪い・・と言う場合。

FFT解析ソフトであっても読み取り能力が足りないと見落とすのだけれど、コヒーレンスがあまり良くないと言う場合、殆どがスピーカーの設置を変えなければいけない。要らないところにスピーカーが向いていないか、共振ポイントはないか・・

まぁこれを言い出すと止まらないので、もう一つの原因を・・

グランディングのミスマッチが紛れ込んでいる場合・・

これは基本中の基本の一つだが、時間のない現場ではついついセットアップを急いでしまい、結果グランドループに電力を喰われ、普段の力をアンプが出せなくなってしまう・・と言う問題。

結構発生するんだけれど、気がつきにくい・・そりゃそうだよねぇ・・組んじゃっているんだから・・

まぁ比較的大きなサウンドカンパニーでツアーを組むような場合は、そうしたグランディング問題も含め、電源周りはきっちり整理してあると思うんだけど、複数のカンパニーの機材を集めて仕事をする場合、一発物の借り物機材の仕事の場合、現地カンパニー機材での仕事の場合(信頼できるところももちろん多いですがね・・)など、結構伏兵が仕込まれてしまっていることも・・

ジーノイズが若干でも出ている場合などはこれを疑いましょう。
覿面にエネルギー感が失われ、音の透明度が悪化します。
で、これに気がつかなくてEQやその他の方法で対処しようとしても、機材がそもそもその力を発揮できないので、ドツボにはまります・・

特に時間がないときはなかなかグランディングのチェックをしたくはないのよね・・その過程であらたなトラブル要因を作ってしまうということもあるし・・

で音のパワー感の割にアンプが熱い!などと言うときは、何らかの無駄なエネルギーでアンプがパワーを喰われている、と判断して間違いないと思う。原因探索の参考にして欲しい。

チューニングのためのツールと方法案

さて、システムチューニングというと、例の「へぇ~・・」とか、「うわん、つ~」と、ちょっと初心者には恥ずかしい声を出してやる奴か、SIMあるいはSMAARTのようなFFT解析ソフトを使うか・・と言うものが主流。
が、「へぇ~」はかなりの経験がないと「??」となってしまうし、FFT解析ソフトは高いしこれまた訓練がいる。

初心のうちはどちらもつらいよね・・

でだ・・いつもいつもとはお勧めしないんだけど、誰でも取り組めそうな方法を・・

まず用意するもの、コンデンサーマイク(業務用のある程度以上の品位のものね・・)、まぁ451とか391でいいかと思う。

こいつをボーカル位置に押っ立てる。

で、拡声を始める・・

素材はいらない・・

徐々にゲインをあげ「ふ~ん」とか、「き~ん」が来始め(このニュアンスをちゃんとつかんでね・・いきなりガキーン!では仕事を失うよ・・)のところでGEQを調整。
収まったら更にあげていく。

こうやって概ね6-9ポイント位をいじったところでまとめる。

で、何か再生してみて違和感がないかチェックする。

この方法の考え方は、ハウるのは余分な音のあるところである!という考え方。

実際、高品位なマイクと高品位なミキサー、高品位なアンプ、高品位なスピーカーだと、安物と違ってハウりにくいという事実がある。まぁいそう特性などが高い周波数まできれいに揃うためだな・・

こうしてチューニングしておいて、ボーカルマイクを普通の58などに変えても全然問題はない・・事が多い・・

まぁ、調子に乗ってオーバーEQにならないようにね・・