2014年10月8日水曜日

生楽器と空間とのやっぱり悩ましき関係

さて、今回は電気には全く関係のない話。
ギターでもヴァイオリンでもドラムでも、演奏会場によって全く音が変わる・・と言う経験をされていると思う。

さて、ここでこの音が変わったという現象・・誰の立場からなのか今少し考えていただきたい。

一番直ぐに気がつくのはリスナーとしてのもの。
あそこのホールは響きが良いとかよく話題になる。評論家諸氏もよくこの立場でものを仰る。
リバーブマシンの設計などもしばしこの立場で行われ、俗に言うアーリーリフレクションなどももちろんこの立場からのものだろう・・

さて、じゃあほかの立場って言うと、演奏者。
演奏者の場合、強大な自分の楽器の発する音環境の中での他の楽器とのバランス・・を考えざるを得ない。よって自分の楽器音と他の楽器とのバランスを考えるときに、舞台上でのアーリーリフレクションが極めて重要。
フロントサイドの張り出しによる反射音なども演奏を助ける情報となる。
このアーリーリフレクションによって、自分の楽器の音色が完成する。その会場でのセルフイメージでもあるわけね・・これで「あたしの音色・・」と言うものが完成し、演奏に専念できる。また、この音色によって演奏イメージがふくらんだりショボくなったりする。
だから極めて大事。砂漠なんかでヴァイオリンを弾いたらえらいことになるよね・・そんなことする奴はいないと思うんだけど・・
で・・残響はたぶんフレーズのエンドなどで意識されるけれど、普段はあまり考えていない・・
もちろん、スタッカートで弾いたり、あるいは楽音自体がパルス性の強い楽器の場合は1音1音に残響がつきまとうのだけれどね・・原則は一生懸命にフレーズをこなしているときは取り敢えず直接の楽器音、フレーズのエンド部分で残響が強く意識されることが原則だろう・・まして、早いパッセージを弾いているときなんかはね・・
よって、少々の残響の変化より、アーリーリフレクションがいかに自分の楽器を気持ちよく響かせてくれるか・・の方により関心が強かろうと思う。
通常のホールからサントリーホールなどの舞台天井の高いホールに移ると演奏にとまどいが生じる・・と言うあたりもまさにこの舞台上のアーリーリフレクションの変化による。

が、この立場からのアプローチを取れるホール設計者、機材設計者が非常に少ない・・生楽器の音表現にとって極めて重要であるにも拘わらず・・だ。

さらにもう一つの立場を提唱したい。

そう・・楽器そのものからみた音環境・・

生楽器である限り、形状と重量からくる固有の共鳴モードをもつ。
それに加え、演奏自体で共鳴周波数はどんどん変化する。
ここで問題にするのは自分の出した音が自分に返ってきて自分自身をさらに共鳴させる・・というループ的モードのこと。
つまり、会場によって楽器から出る音自体が変化するんですよ・・ということね。
これは無響室でのヴァイオリンの音を聞いたことのある人なら素直に納得されるのではないか?
もちろん、このときの楽器音の変化にもっとも影響が大きいと思われるのが、やはり舞台上でのアーリーリフレクションであることは言うまでもないですよね・・
もちろん、PAがある場合はその返しや回り込み(これは別スレッドで解説済み)も影響する。
また、ホールによってスタジオによっても音は変化する。
この影響は演奏者自身が想像する以上のものがありそうだ。

従って、音の良いホールって、残響だけを問題にしても、また、客席でのアーリーリフレクションだけを問題にしても駄目なのよね・・
ここらへん、まだまだ考察が足りていないように感じる。

つまり、楽器と演奏者のための一次反射設計思想を持たないと、良い演奏、良い音・・は出来ないのよ・・これを客席側だけからの設計アプローチを取っていてはいつまでたっても安楽器を良いホールに持ち込んだ・・みたいな現象が発生しかねない・・

良い楽器環境、良い演奏環境、そして良い聴取環境がそろって初めて演奏者にとってもリスナーにとっても幸せな音楽環境になるのではないだろうか・・

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